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「位数が12の群の群の分類②」【代数学の基礎シリーズ】群論編 その33

代数学

本記事の内容

本記事は、位数が12の群の分類について、その一部を解説する記事です。

本記事を読むに当たり商群、二面体群、生成された部分群、シローの定理について知っている必要があるため、以下の記事も合わせて御覧ください。

↓商群の記事

↓二面体群の記事

↓生成された部分群の記事

↓シローの定理の記事

前回から数回に渡ってやること

前回(【代数学の基礎シリーズ】群論編 その32)から数回に渡って何を解説するか、というと、結論としては次の定理の証明です。

定理0.

\(G\)が群で、\(\left|G\right|=12\)であれば、\(G\)は次の1.から5.のどれかと同型である。また、1.から5.の中で自分以外と同型になるものは存在しない。
  1. \(\mathbb{Z}/{3\mathbb{Z}}\times\mathbb{Z}/{4\mathbb{Z}}\left(\cong \mathbb{Z}/{12\mathbb{Z}} \right)\)
  2. \(\mathbb{Z}/{3\mathbb{Z}}\times\mathbb{Z}/{2\mathbb{Z}}\times\mathbb{Z}/{2\mathbb{Z}}\)
  3. 交代群\(A_4\)
  4. 二面体群\(D_6\)
  5. \(\left\langle x,y\middle|x^4=y^3=1,\ xy=y^2x\right\rangle\)

「なぜ12なの?」と思うかも知れませんが、12という数を選んだのは、位数が小さい群の中では位数12の群が一番興味深いと言われているからです。
また、分類の過程で群論に関して今までに学んだことのほとんどを使うことになるからです。
要するに、位数12の群は群論の基礎知識をフル稼働させるため、群論の全体像をつかみやすくするだけでなく「群のイロハが詰まっている」という理想的な状況なのです。

定理0.の証明の流れ

割とシンプルです。

  • ① 出現する全ての群が同型でないことの証明(【代数学の基礎シリーズ】群論編 その33で証明済み)
  • ② \(G\)が位数12の群なら、1.から5.のうちのどれかと同型になることの証明
    • 1.と同型になる場合→今回
    • 2.と同型になる場合→今回
    • 3.と同型になる場合→今回
    • 4.と同型になる場合
    • 5.と同型になる場合

今回は、②の1.と2.と3.を証明します。

※注意※ (証明に入る前に)

先程、「位数12の群は群論の基礎知識をフル稼働させる」と述べました。
しかし、出現するものを具体的に列挙して復習すると寧ろくどく、証明の全体像が見えにくく成ってしまうと思うので、都度都度参考リンクを貼ることにします。

いざ、証明(Part.2)

前回(【代数学の基礎シリーズ】群論編 その33)は出現する全ての群が同型でないことを証明し、

\(H\):\(G\)のシロー\(2\)部分群、\(\quad\)\(K\):\(G\)のシロー\(3\)部分群

としたとき、\(H\cong \mathbb{Z}/{2\mathbb{Z}}\times \mathbb{Z}/{2\mathbb{Z}}\)であることと、\(H\)が正規部分群であることを証明しました。

前回の考察から、\(H\)と\(K\)のうちどちらかは正規部分群なので、\(HK\subset G\)は部分群です。
\(H,K\subset HK\)なので、\(\left|HK\right|\)は\(3\)と\(4\)で割り切れます。
\(\left|HK\right|\leq12\)なので、\(\left|HK\right|=12\)です。
故に、\(HK=G\)となります。

場合1.(\(H\)と\(K\)の双方が正規部分群のとき)

この場合は、以下の事実を使います。

命題1.

\(G\)が群、\(H,K\subset G\)が正規部分群で\(H\cap K=\left\{ 1_G\right\}\)、\(HK=G\)とする。このとき、\(G\)は直積\(H\times K\)と同型である。

命題1.の証明は【代数学の基礎シリーズ】群論編 その28を御覧ください。

命題1. から、\(G\cong H\times K\)となるので、1.と2.のいずれかになります。

場合2.(\(H\)のみが正規部分群のとき)

\(K_1,\dots,K_4\)を\(K\)の共役とします。
\(G\)は共益により集合\(\left\{K_1,K_2,K_3,K_4\right\}\)に作用します。
ここで、シローの定理を使います。

定理2.(シローの定理)

\(G\)を有限群、\(n=\left|G\right|\)、\(p\)を\(n\)の素因数とし、\(p^a\ (a>0)\)を\(n\)を割り切る\(p\)の最大のベキとする(すなわち、\(n=p^am\)で\(m\)と\(p\)は互いに素である)。このとき、次の1.から4.が成り立つ。
  1. \(\left|H\right|=p^a\)となるような\(G\)の部分群\(H\)が存在する。このような部分群\(H\)をシロー\(p\)部分群という。
  2. シロー\(p\)部分群を一つ固定する。部分群\(K\subset G\)に対して\(\left|K\right|\)が\(p\)ベキならば、\(K\subset gHg^{-1}\)となる\(g\in G\)が存在する。特に、\(K\)を含む\(G\)のシロー\(p\)部分群が存在する。
  3. \(G\)の全てのシロー\(p\)部分群は共役である。
  4. シロー\(p\)部分群の数\(s\)は $$ s=\frac{\left|G\right|}{\left|{\rm N}_G(H)\right|}\equiv 1\ ({\rm mod}\ p\ ) $$ という条件を満たす。

シローの定理の証明は【代数学の基礎シリーズ】群論編 その27を御覧ください。

シローの定理から、この作用は推移的な作用(【代数学の基礎シリーズ】群論編 その14)です。
\(\varphi:G\longrightarrow \mathcal{G}_4\)をこの作用による置換表現(【代数学の基礎シリーズ】群論編 その13)とします。
つまり、\(gK_ig^{-1}=K_{\varphi(g)i}\ (i=1,2,3,4)\)です。

\(K\)の共益の数\(=4=\left(G:{\rm N}_G(K_i) \right)\leq\left( G:K_i\right)=4\)

なので、\({\rm N}_G(K_i)=K_i\ (i=1,2,3,4)\)です。
\(g\in{\rm Ker}(\varphi)\)ならば、\(gK_ig^{-1}=K_i\ (i=1,2,3,4)\)なので、
$$
g\in\bigcap_{i=1}^4{\rm N}_G(K_i)=\bigcap_{i=1}^4K_i=\left\{1\right\}
$$
となります。
したがって、\(\varphi\)は単射です(【代数学の基礎シリーズ】群論編 その3を参照)。

$$
\left|\bigcup_{i=1}^4\left( K_i\setminus\left\{1\right\}\right)\right|=8
$$
なので、\(\displaystyle S=\bigcup_{i=1}^4\left( K_i\setminus\left\{1\right\}\right)\)で生成される\(G\)の部分群\(F\)の位数は\(8\)以上です。
\(\left|F\right|\)は\(\left|G\right|=12\)の約数なので、\(\left|F\right|=12\)、つまりは\(F=G\)です。
故に、\(G\)は位数\(3\)の要素で生成されます。
\(\varphi\)が単射であることから、\(g\in G\)が位数\(3\)の要素ならば、\(\varphi(g)\)も位数\(3\)の要素です。
\(\mathcal{G}_4\)の位数\(3\)の要素は\((1\ 2\ 3)\)など巡回置換のみであり、これらは全て交代群\(A_4\)の要素です。

ここで、交代群をちょっと復習します。
\(\sigma\)を置換とし、\({\rm sgn}(\sigma)\)を\(\sigma\)の符号とすると、\({\rm sgn}\)は\(\mathcal{G}_n\)から\(\left\{\pm1\right\}\)への準同型写像となります。
\(A_n={\rm Ker}(\sigma)\)(準同型写像\(\varphi\)の核\({\rm Ker}(\varphi)\)は正規部分群でしたね)と書き、\(A_n\)のことを\(n\)次交代群といったのでした。

さて、\(\mathcal{G}_4\)の位数\(3\)の要素は全て交代群\(A_4\)の要素ということがわかりました。
故に\(\varphi(G)\subset A_4\)となるわけですが、\(\left|A_4\right|=12\)なので、\(\varphi(G)=A_4\)となります。
したがって、\(G\cong A_4\)です。

皆様のコメントを下さい!

続きです。

前回はユードクソスの無限論理についてお話しました。
今回はそのユードクソスの論法を用いて三角錐の体積が底面積\(\times\)高さ\(\div 3\)であることを示します。

ユードクソスの論法とは何だったか、というと以下でした。

ユードクソスの無限論理(取り尽くし法、積尽法)
ある線分の半分以上を取り去り、残りからさらにその半分を取り去る。これを繰り返すとその残りの部分は予め指定された線分よりちいさくなる

図のように、与えられた三角錐\((1231^\prime)\)に対して、2つの三角錐\((1^\prime2^\prime3^\prime3)\)と\((1^\prime2^\prime32)\)を合わせて斜角柱を作ります。
\((1231^\prime)\)と\((1^\prime2^\prime3^\prime3)\)は合同な底面\((123)\)、\((1^\prime2^\prime3^\prime)\)と等しい高さを持つので、体積は等しいです。
また、\((1231^\prime)\)と\((1^\prime2^\prime32)\)は合同な底面\((121^\prime)\)と\((1^\prime2^\prime2)\)と同じ頂点\(3\)からの高さが等しいから、体積は等しいです。
故に斜角柱が同じ体積の3つの三角錐からなることがわかり、斜角柱の体積が底面積(\(=\)三角錐の底面積)と高さ(\(=\)三角錐の高さ)の積であることから、三角錐の体積は底面積\(\times\)高さ\(\div 3\)であることが示されました。

この議論では案に堆積は数値で表しましたが、もともとの証明では体積は数値ではありません。
実は、ここに体積についての重大な問題が生じ、この問題が明確に意識されたのはなんと19世紀になってからなのです。

今回は位数が12の群の分類の一部として、剰余群と交代群と同型となる場合について解説しました。
位数12の群は位数自体が比較的小さく、そして群論の知識をフル稼働で使うため群論そのものの良い復習となるだけでなく、群論の見通しを良くします。

次回も今回の続きとして、各群と同型になる場合を証明していきます。

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