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「シローの定理の証明」(有名な定理です!)【代数学の基礎シリーズ】群論編 その27

代数学

本記事の内容

本記事は、シローの定理を証明する記事です。

本記事を読むに当たり、以前の記事でした準備の内容を知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。

↓準備①

↓準備②

シローの定理の明示

定理1.(シローの定理)

\(G\)を有限群、\(n=\left|G\right|\)、\(p\)を\(n\)の素因数とし、\(p^a\ (a>0)\)を\(n\)を割り切る\(p\)の最大のベキとする(すなわち、\(n=p^am\)で\(m\)と\(p\)は互いに素である)。このとき、次の1.から4.が成り立つ。
  1. \(\left|H\right|=p^a\)となるような\(G\)の部分群\(H\)が存在する。このような部分群\(H\)をシロー\(p\)部分群という。
  2. シロー\(p\)部分群を一つ固定する。部分群\(K\subset G\)に対して\(\left|K\right|\)が\(p\)ベキならば、\(K\subset gHg^{-1}\)となる\(g\in G\)が存在する。特に、\(K\)を含む\(G\)のシロー\(p\)部分群が存在する。
  3. \(G\)の全てのシロー\(p\)部分群は共役である。
  4. シロー\(p\)部分群の数\(s\)は $$ s=\frac{\left|G\right|}{\left|{\rm N}_G(H)\right|}\equiv 1\ ({\rm mod}\ p\ ) $$ という条件を満たす。

以前の記事でも少々述べましたが、シローの定理は正規部分群の存在などを示すのに使う基本的な道具です。
実際に使ってみるのは次回にします。

シローの定理の証明

1.の証明

\(X\)を要素の個数が\(p^a\)であるような\(G\)の部分集合全体の集合とします。
\(\left|X\right|\)が\(p\)で割り切れないことをまず認めると(認めるとどうなるか、ということを見た後にこれを証明します)、\(X\)は\(G\)による軌道の直和になるので、軌道\(O(S)\)の要素の個数が\(p\)で割り切れないような\(S\in X\)が存在します。

\(H={\rm Stab}(S)\)とします。
ここで、次の事実を使います。

命題2.

有限群\(G\)の、\(G\)の部分集合の集合への左からの積による作用を考える。このとき、\(S\)に対して、\(\left| {\rm Stab}(S)\right|\)は\(\left| S\right|\)の約数である。

命題2.の証明は【代数学の基礎シリーズ】群論編 その26を御覧ください。

命題2.により、\(\left|H\right|\)は\(\left|S\right|=p^a\)の約数です。
$$
\left|O(S)\right|=\frac{\left|G\right|}{\left|H\right|}=\frac{p^am}{\left|H\right|}
$$
は\(p\)で割り切れないので、\(\left|H\right|=p^a\)でなければなりません。
故に、\(\left|X\right|\)が\(p\)で割り切れないことを示せば、1.の証明が完了です。

\(X\)の要素の個数は\(n\)個の要素の集合から\(p^a\)個の要素を選ぶ組み合わせの数なので、
$$
\left|X\right|=
\left(
\begin{array}{c}
n\\
p^a
\end{array}
\right)
=\frac{n(n-1)\cdot (n-p^a+1)}{p^a(p^a-1)\cdots1}
=\prod_{k=0}^{p^a-1}\frac{n-k}{p^a-k}
$$
となります。
\(o\leq k<p^a\)ならば、\(k=p^il\)で\(l\)と\(p\)が互いに素とすると(つまり\(p^i\)が\(k\)を割る\(p\)の最大のベキ)、
$$
n-k=p^i\left(p^{a-i}m-l \right)
$$
となり、\(k<p^a\)なので、\(a-i>0\)です。
故に、\(n-k\)を割る\(p\)の最大のベキも\(p^i\)です。
また、
$$
p^a-k=p^i\left( p^{a-i}-l\right)
$$
なので、\(p^a-k\)を割る\(p\)の最大のベキも\(p^i\)です。
したがって、\(\displaystyle\frac{n-k}{p^a-k}\)を既約分数で表したとき、分母と分子に\(p\)は現れません。
故に、\(\left|X\right|\)は\(p\)で割り切れません。

2.と3.の証明

\(G\)をシロー\(p\)部分群\(H\)を一つ固定して、\(Y=G/{H}\)とします。
\(\displaystyle\left|Y\right|=\frac{\left|G\right|}{\left|H\right|}=m\)は\(p\)で割り切れません。
\(K\)は左からの席により\(Y\)に作用します。
\(Y\)は\(K\)による軌道の直鎖なので、\(K\)による軌道の要素の個数\(q\)が\(p\)で割り切れないような剰余類\(gH\)が存在します。
しかしながら、\(q\)は\(\left|K\right|\)の約数なので、\(q=1\)出ない限りは\(p\)で割り切れます。
故に、\(q=1\)です。
これは全ての\(k\in K\)に対して\(kgH=gH\)であることを意味しています。
\(kg\in gH\)なので、\(k\in gHg^{-1}\)です。
これが全ての\(k\in K\)に対して成り立つので、\(K\subset gHg^{-1}\)です。
\(gHg^{-1}\)はシロー\(p\)部分群ですので、2.が証明されました。

もし\(K\)もシロー\(p\)部分群なら、\(\left|K\right|=\left|gHg^{-1}\right|\)なので、\(K=gHg^{-1}\)です。
したがって3.が証明されました。

4.の証明

\(Z=\left\{H_1=H,\cdots,H_s\right\}\)をシロー\(p\)部分群全体の集合とします。
\(H\)は\(Z\)に共役により作用します。
\(h\in H\)なら、\(hHh^{-1}=H\)です。
\(i\neq1\)であれば、\(H\)のこの作用による\(H_i\)の軌道は2つ以上の要素から成ることを示します。
もし\(H_i\)の軌道が\(H_i\)だけだったとしたら、任意の\(h\in H\)に対して\(hH_iH^{-1}=H_i\)となります。
これは\(h\in {\rm N}_G(H_i)\)そのものなので、\(H\subset {\rm N}_G(H_i)\)です。
\({\rm N}_G(H_i)\)とは何か、ということから\(H_i\triangleleft {\rm N}_G(H_i)\)であり、\(\left|{\rm N}_G(H_i)\right|\)は\(\left|G\right|\)の約数なので、\(H,H_i\)は\({\rm N}_G(H_i)\)のシロー\(p\)部分群です。
3.を\({\rm N}_G(H_i)\)に適用すると、\(H=gH_ig^{-1}\)となるような\(g\in {\rm N}_G(H_i)\)が存在しますが、\(H_i\triangleleft {\rm N}_G(H_i)\)なので、\(H=H_i\)となります。
これは矛盾なので、\(H_i\)の軌道は2つ以上の要素を持ちます。

\(Z\)を\(H\)の作用による軌道の直和で表すと、\(i\neq 1\)ならば、\(H_i\)の軌道の要素の個数は\(\left|H\right|=p^a\)の約数であり\(1\)より大きいです。
故に、\(p\)で割り切れます。
\(H\)の軌道は1つの要素からなるので、\(s\equiv 1\ ({\rm mod}\ p)\)です。
ここで、次の事実を使います。

命題3.

\(H\)を有限群\(G\)の部分群とするとき、\(H\)と共役な部分群の数は\(\left|G\right|/{{\rm N}_G(H)}\)である。

命題3.の証明は【代数学の基礎シリーズ】群論編 その26を御覧ください。

命題3.から\(\displaystyle s=\frac{\left|G\right|}{\left|{\rm N}_G(H)\right|}\)です。
以上のことから4.が成り立ちます。

皆様のコメントを下さい!

前回の続きです。
※前回については【代数学の基礎シリーズ】群論編 その26を御覧ください。

前回述べた通り、ローマ数字を見れば分かるとおり、大きい数を表すには次々に新しい記号を付け加えなければなりませんし、ローマ数字のような記法では足し算さえ容易ではありません。

この欠点は、インドで発明された記数法により克服されました(紀元後 600-800 頃)。
\(0\)(零)を含めた10個の記号(0、1、2、 3、4、5、6、7、8、9)ですべての数を表す方法(10進法、the decimal system)です。
もちろん、このような記号が大事なのではありません。
重要なことは有限個の記号ですべての数を表すことです。

一言で言えば、インドの記数法は今日言うところの10進法です。
これは、与えられた数\(a\)に対して
\begin{eqnarray}
a&=&q_1+b+r_1\quad (0\leq r_1<b),\\
q_1&=&q_2+b+r_2\quad (0\leq r_2<b),\\
q_2&=&q_3+b+r_3\quad (0\leq r_3<b),\\
&&\vdots\\
q_n&=&q_n+b+r_n\quad (0\leq r_n<b),\\
\end{eqnarray}
のように\(b=10\)による割り算を続けて、商が\(0\)になるまで続け、\(a\)を\(r_nr_{n-1}\cdots r_2r_1\)と表す方法です。
今では当たり前のことですが「何もない」ということも「数」と考え、記号(\(0\))を割り当てたことは大変重大な事柄でした。
「零」の役割の重要性に気付いたのもインド人であると言われています。
上の式で下から順番に\(q_i\)を消去していけば、
$$
a=r_nb^{n-1}+r_{n-1}b^{n-2}+\cdots+r_2b+r_1
$$
となることに注意しましょう。
\(b\)を\(2\)以上の自然数とするとき、\(r_n\cdots r_1r_0\)を\(a\)の\(b\)進法による表現といいます。

ここで歴史の話に戻ります。

インドの記数法はアラビアにもたらされ、この記数法の下での数の計算方法が整理され発展しました。
この記数法の普及に大きな役割を果たしたのがアル・クワリズミ(al-Khwarizmi, Muhammad ibin Musa;800年頃)です。
彼はバグダッドの天文学者で数学者であり、算術と代数に関する2つの著作で有名です。
「アルゴリズム」という言葉は彼の名前に由来しています。
また、“Algebra”(代数)も彼の著作の題名“Al-jabr wa’l muqabalah”から派生しました。

ヨーロッパにもインドの記数法が伝わりましたが(10 世紀)、それが定着するまでには時間が掛かりました。
しかしその利便性から結局はヨーロッパを越えて世界中で使われることになったのです。

もし利便性や歴史的事情から離れるのなら、\(b\)は\(2\)以上の数であれば何であっても構いません。
このことに注意を向けたのはライプニッツ(1646-1716)です。
彼は\(b=2\)として、すべての数を\(0, 1\)を使って表すこと、すなわち\(2\)進法を提案しました。
当然桁数は10進法に較べて大きくなりますが、記号の数は2つだけであるという便利さがあります。
コンピュータでは2進法が使われていることは皆さんもよくご存知のことでしょう。
ライプニッツが計算機を考案したという事実を思い起こすと、そのつながりに興味を覚えます。

古代バビロニアの粘土板に、六十進法による小数(decimal (fraction))の記述を見出すことができます。
また、十進法における小数については、263年に劉徽が著した『九章算術』の注釈の中に小数の表記が見られます。
例えば、現代表記による\(8.660254\)は「八寸六分六釐二秒五忽、五分忽之二」と表現されています(小数第6位を表す単位が無いため、分数との併記になっています)。

ヨーロッパにおける小数の導入は16世紀になってからです。
オランダのステヴィン(Stevin, Simon;約1548-1620)が1585年に出版した「小数論(La disme)」のなかで、はじめて小数のアイ ディアを発表しました。
彼は、分数の分母を10の累乗に固定した場合に、計算が非常にやりやすくなる事を発見し、それが小数の発明となったのです。
なお、ステヴィンの提唱した小数の表記法は、現代表記の「3.142」であれば,これを「3ヰ1ヤ4ユ2ヨ」と記します。
現代のような小数点による表記となったのは、20年ほど後にジョン・ネイピア(ネイピア数のネイピアです)の提唱によります。
小数の考え方は、その表現を通して数の実体を把握し始めたという意味で大きな意義があるでしょう。

如何でしたか?
「数」特に「記数法」について語ってみました。
是非コメントで感想を教えて下さい!

今回はシローの定理を証明しました。
シローの定理の証明には、部分集合への作用、部分群の共役の数と正規化群との関係を使います。
また、シローの定理は、正規部分群の存在を示すのに使う基本的な道具です。

次回はシローの定理を実際に使って例題を解いてみます。

乞うご期待!
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代数についてより詳しく知りたい方は以下を参考にすると良いと思います!

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