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「関数が極限を持つならば、制限した関数も同じ極限を持つ」「連続関数の制限も連続関数である」【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その19

写像

本記事の内容

本記事は「関数が極限を持つならば、制限した関数も同じ極限を持つ」、「連続関数の制限もまた連続関数である」ということを証明する記事です。

本記事を読むにあたり、多変数ベクトル値関数の極限について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。

まずは、写像、特に関数の制限について説明します。

写像の”制限”って?

写像の”制限”を一言で言えば、「定義域を狭めた写像」のことです。
「どういうことかネ?」となると思うので、例を挙げます。

例1.(料理を食べるときに使う食器との対応規則)
X={, , , }Y={, , , }として、f:XY

  • f()=
  • f()=
  • f()=
  • f()=

で定められているとしましょう。
このとき、Xの部分集合としてX={, , }を考えます。
すなわち、XXの中でご飯物を集めた集合です。
XXですので、当然ながらXの任意の要素に対して、Yの要素がただ1つ対応しています。
しかも、その対応規則はfと同じです。
つまり、

  • f()=
  • f()=
  • f()=

で定められるf:XYを考えることができます。

このffXへの制限と言います。

例2. g:RRg(x)=sinxで定められているとします。
【論理と集合シリーズ】写像編 その9で説明したとおり、このgは、というよりsinは全単射ではありません。
従って、逆写像は存在しません。
しかしながら、「定義域と終域を”絞る”ことで全単射が作れる」のでした。
つまり、定義域をRから[π2,π2]に、終域をRから[1,1]に”絞る”ことで全単射になるため、この場合には逆写像が存在するのでした。
新たにこの写像にg:[π2,π2][1,1]と名前を付けましょう。

実はこれはg[π2,π2]への制限だったのです。
この例は終域も絞っていますが、一般に、写像の制限は定義域を絞ることです。

以上のことを数学的に表すと次です。

写像の制限 写像f:XYに対して、AXとする。このとき、 f:AY,(xC) f(x)=f(x) で定められる写像f:AYfAへの制限といい、f|Aで表す。
すなわち、f|A:AY(xA)f|A(x)=f(x) で定められる写像である。

では、定義域を制限した関数の極限について考えてみます。

関数が極限を持つならば、制限した関数も同じ極限を持つ

まずは主張を明示します。

命題3. 関数が極限を持つならば、制限した関数も同じ極限を持つ。
すなわち、 ΩΩRnとし、Ωとする。 f:ΩRmとするとき、fΩへの制限f|Ω:ΩRmf|Ω(x)=f(x)で定められる。 このとき、a¯ΩARmlimxaf(x)=Aであれば、 limxaf|Ω(x)=A が成り立つ。

※ちょっとした注意※limxaf|Ω(x)limxΩxaf(x)で表す場合もあります。

証明

誠に簡単です。
というより明らかと言いたいところです。
言いませんけどね(笑)

仮定からlimxaf(x)=Aですので、
(ϵ>0) (δ>0) s.t. (xΩ:0<|xa|<δ|f(x)A|<ϵ)

今、ΩΩです。
部分集合とはどういうものだったかを思い出すと、
xΩxΩ
です。
従って、0<|xa|<δを満たす任意のxΩは、|f(x)A|<ϵを満たしています。

これはまさに
(ϵ>0) (δ>0) s.t. (xΩ:0<|xa|<δ|f(x)A|<ϵ)
を表しているため、limxaf|Ω(x)=Aです。

証明終わり

この命題3.の系として次が成り立ちます。

系4. 関数が定義域で連続ならば、制限した関数も制限した定義域で連続である。
すなわち、 ΩΩRnとし、Ωとする。 f:ΩRmとするとき、fΩへの制限f|Ω:ΩRmf|Ω(x)=f(x)で定められる。 このとき、a¯Ωであり、fΩで連続、すなわち、任意のaΩに対してlimxaf(x)=f(a)であれば、 limxaf|Ω(x)=f(a) が成り立つ。

この系4.の証明は命題3.の証明をAf(a)に書き換えれば良いので省略します。

なんでこの事実が必要なのかネ?

命題3.を実際に証明してみると「簡単だし当然じゃね?」となりますし、「だから何?」という感じですが、なぜこの事実を記事化したかを話します。

正直、オチとしては「詳しくは次回以降話します」ということです。
多変数関数の場合、一見極限が存在しそうでも存在しない場合があります。
それは、極限への近づき方がありとあらゆる方向からと沢山あるからです。

より端的に言えば、

  lim(x,y)(a,b)f(x,y)=Aと、limxalimybf(x,y)=Alimyblimxaf(x,y)=Aは別物!

ということです。
これらを混同してしまいがちですが、違います。
このことを具体例と共に説明するためにこの事実を使うため、今回は制限の極限について話しました。

今回は関数が極限を持つならば、制限した関数も同じ極限を持つ」「連続関数の制限も連続関数である」ということを説明、証明しました。

要は、

  関数の一部を取ってきたとしても、極限も変わらなければ、連続性も変わらない。 まさに一部をまるっと取ってきただけ。

ということです。

次回は関数の発散の一部について解説します。
※5/18追記 次回に多変数実数値関数の注意を書くことにします。

乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!

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