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「初等関数って?」〜初等関数の連続性の準備〜【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その10

解析学

本記事の内容

本記事は初等関数の連続性を理解するため、初等関数とはどういうものか、ということを説明する記事である。
この記事は初等関数の連続性を説明するための準備の記事なので、関数の連続性についてを意識しながら読むとよいと思われる。
その際は以下の記事を参照してください。

初等関数って?

一言で言ってしまえば、「よく出てくる関数」のことである。
更に言い換えれば、「高校までに習う関数、またはそれを組み合わせた関数」のことである。

初等関数には大きく分けて10個のカテゴリーがある。

  1. 多項式関数
  2. 有理関数
  3. 定数関数
  4. 無理関数
  5. 指数関数
  6. 対数関数
  7. 三角関数
  8. 逆三角関数
  9. 上記を有限回合成して得られる関数(無限回でもこれに含まれる場合がある)
  10. 上記の和差積商を取った関数

ただし、これら全てが1変数である。
この中で、逆三角関数以外は高校までで出現している。

少々過言かもしれないのだが、数学で出現する関数は基本的に初等関数という印象がある。

では、個々についてどういうものだったか、ということを復習しよう。
※ただし、多項式関数と有理関数と定数関数は既に説明しているので、多項式関数と有理関数については【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その8を参照してください。

実のところ、「これが初等関数だ!」という厳密なカテゴリー分けがある印象はない。
加えて、「これは初等関数のこのカテゴリーだ!」という厳密な分け方の印象もない。
例えば、「無理関数でもあり、指数関数でもある」という関数もあるわけで、各カテゴリーがそれぞれ独立しているわけではない。
個人的には数学ではある関数が初等関数であるかどうか、ということにはさほど興味はなく、「その関数がどういう特徴を持った関数なのか?」ということの方に興味がある印象がある。
初等関数でない関数を特殊関数と言ったりするのだが、このブログでは基本的には特殊関数は扱わないし、仮に扱うときは「特殊関数ですよ」と明記する。

無理関数

一言で述べれば、無理関数は「ルートが絡む関数」である。
更に言い換えれば、無理数で表された関数を無理関数という。\(\sqrt{4}=2\)のように値として有理数が出現する場合もある。

例1. \(f:\mathbb{R}_{>0}\to\mathbb{R}\)、\(f(x)=\sqrt{x}\)

例2. \(g:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\)、\(g(x)=\sqrt[3]{x}\)

このように変数にルートが絡む関数のことを無理関数という。

無理関数 \(\sqrt[n]{f(x) }\)(\(f(x)\)は多項式関数、有理関数、指数関数、対数関数、三角関数、逆三角関数、またそれらの合成関数と和差積商)が含まれる関数を無理関数という。

すなわち、

  • \(\displaystyle\sqrt{\frac{x^2+1}{x^2}}\)、
  • \(\displaystyle \sqrt[n]{\log x-\sqrt{3}x^2}\)

も無理関数である。
前者は\(f_1(x)=\sqrt{x}\)と\(\displaystyle g_1(x)=\frac{x^2+1}{x^2}\)の合成関数、後者は\(f_2(x)=\sqrt[n]{x}\)と\(g_2(x)=\log(x)-\sqrt{3}x^2\)の合成関数だから初等関数である。

指数関数

一言で言ってしまえば、指数関数は「累乗が絡む関数」のことである。

例3. \(f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\)、\(f(x)=e^x\)。
ただし、\(e\)はネイピア数。

例4. \(g:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\)、\(g(x)=2^{\frac{x}{3}}\)

このように指数に変数が絡む関数のことを指数関数という。

指数関数 \(a\in\mathbb{R}\)に対して、\(a^x\)が絡む関数を指数関数という。

「じゃあさ、指数が変数であるような関数は全部指数関数なのね。」となるかもしれない。
おおよそ正解である。
しかし、指数関数と言ったらば、\(y=a^x\)をまっさきに思い浮かべるし、基本的にはこの意味で使われる。
「初等関数って?」で述べたとおり、厳密なカテゴリー分けが無いからである。

余談1

ふと「\(y=x^x\)は指数関数かな?」と言われたらどうしようと思った。
指数に変数が絡む関数を指数関数というのであれば指数関数ではあるなといったところ。
「”高校までに習う関数が初等関数ですよ”という立場になれば、この関数は高校で扱っているので初等関数だろうな。」と。

対数関数

一言で言ってしまえば、対数関数は\(\log\)が絡む関数のことである。

例5. \(f:\mathbb{R}_{>0}\to\mathbb{R}\)、\(f(x)=\log x\)

例6. \(g:\mathbb{R}_{>0}\to\mathbb{R}\)、\(\displaystyle g(x)=\frac{\log x}{x^2}\)

このように\(\log_ax\)が絡む関数のことを対数関数という。

対数関数 \(a\in\mathbb{R}\)に対して、\(\log_ax\)が絡む関数を対数関数という。

今までと同じで、「\(\displaystyle \sqrt[n]{\log x-\sqrt{3}x^2}\)は対数関数ですか?」と言われると少々回答に困る。
仮に筆者が答えるならば、「対数関数といえば対数関数だが、無理関数でもある。対数関数と言われたときにはこの関数は思い浮かべない。」と言うだろう。
これも関数には厳密なカテゴリー分けが無いがゆえである。
※もしかしたら本当は厳密なカテゴリー分けがあるのかもしれないが、筆者は知らない。

ちなみに、無理関数の節で述べたとおり、\(\displaystyle \sqrt[n]{\log x-\sqrt{3}x^2}\)は初等関数であることは確かである。

三角関数

これは\(\sin x\)、\(\cos x\)、\(\tan x\)、 が絡む関数である。

例7. \(\displaystyle f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\)、\(f(x)=\sin x\)

例8. \(\displaystyle g:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\)、\(\displaystyle g(x)=\frac{\cos x}{x^2}\)

このように\(\sin x\)、\(\cos x\)、\(\tan x\)、 が絡む関数のことを三角関数という。

三角関数 \(\sin x\)、\(\cos x\)、\(\tan x\)、 が絡む関数を三角関数という。

三角関数についても同じで、「\(\displaystyle \frac{\cos x-x^2}{3x}\)は三角関数ですか?」と言われると、「まあ、三角関数ではあると思う。」という抽象的な回答になってしまう。
正直なところ、筆者は三角関数といわれて真っ先にこの関数は思い浮かべない。

ちなみに、\(\displaystyle \frac{\cos x-x^2}{3x}\)は10.から\(\cos x-x^2\)が初等関数であり、\(3x\)も初等関数であるから、再度10.により、\(\displaystyle \frac{\cos x-x^2}{3x}\)も初等関数である。

逆三角関数

同様に\(\arcsin x\)、\(\arccos x\)、\(\arctan x\)、が絡む関数のことを逆三角関数という。
ただし、【論理と集合シリーズ】写像編 その9で述べたとおり、三角関数の逆関数を考えるときは三角関数の定義域に注意しなければならない。

例9. \(\displaystyle f:[-1,1]\to\mathbb{R}\)、\(f(x)=\arcsin x\)

例10. \(\displaystyle g:[-1,0)\cup(0,1]\to\mathbb{R}\)、\(\displaystyle g(x)=\frac{\arccos x}{x^2}\)

このように\(\arcsin x\)、\(\arccos x\)、\(\arctan x\)、 が絡む関数のことを逆三角関数という。

三角関数 \(\arcsin x\)、\(\arccos x\)、\(\arctan x\)、 が絡む関数を逆三角関数という。

「逆三角関数はどこで出てくるの?」と思うかもしれないが、積分の範囲で出現することが多い印象がある。
※今後微分積分についても記事を書くので、そこまで少々我慢してください。

上記を有限回合成して得られる関数および上記の和差積商を取った関数

上記で挙げた10個の例のうちの4つが上記を有限回合成して得られる関数および上記の和差積商を取った関数に対応する。

例4. \(g_2:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\)、\(g_2(x)=2^{\frac{x}{3}}\)

これは、\(f(x)=x^{\frac{1}{3}}\)と\(g(x)=2^x\)の合成関数。

例6. \(g_3:\mathbb{R}_{>0}\to\mathbb{R}\)、\(\displaystyle g_3(x)=\frac{\log x}{x^2}\)

これは、\(f(x)=\log x\)と\(g(x)=x^2\)の商を取った関数。

例8. \(\displaystyle g_4:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\)、\(\displaystyle g_4(x)=\frac{\cos x}{x^2}\)

これは、\(f(x)=\cos x\)と\(g(x)=x^2\)の商を取った関数。

例10. \(\displaystyle g:[-1,0)\cup(0,1]\to\mathbb{R}\)、\(\displaystyle g(x)=\frac{\arccos x}{x^2}\)

これは、\(f(x)=\arccos x\)と\(g(x)=x^2\)の商を取った関数。

余談2

もし「初等関数は10個のカテゴリー分けがある。」という立場ならば、\(a\in\mathbb{R}\)に対して「無理関数は\(\sqrt{ax}\)の形の関数、指数関数は\(a^x\)の形の関数、三角関数は\(\sin x\)、\(\cos x\)、\(\tan x\)のこと、逆三角関数は\(\arcsin x\)、\(\arccos x\)、\(\arctan x\)のこと」と言い切ってもいいかもしれない。
とすれば、あとはこれらを有限回合成してえられるか和差積商を取って得られる関数だとしても問題ない。

しかしこの立場に立ってしまうと、「\(\displaystyle\sqrt{\frac{x^2+1}{x^2}}\)は無理関数ではありません。」ということになってしまう。
筆者は「\(\displaystyle\sqrt{\frac{x^2+1}{x^2}}\)を無理関数でない、とは言い切れないな」と思ってしまう。

今回は初等関数について説明した。
説明したと言っても、殆ど既に知っていることであったため若干退屈だったかもしれない。

初等関数には大きく分けて10個のカテゴリがあるのだが、それらが独立しているわけではない(と思う)。
本質的にはそれぞれ10個のカテゴリの内どのカテゴリに属すか、というよりも、初等関数であるという事実の方が重要である。

数学で出現する関数はおおよそ初等関数であり、初等関数はおおよそ連続である。
これを次回示したいがために、初等関数とはどういうものかを今回説明した。

次回は、「高校数学で出てきた関数ってほとんど連続でしょ?」ということをしっかり数学的に証明してみる。

乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!

この記事の内容をより詳しく知りたい方は以下のリンクの本を参照してください!
ちなみに「解析概論」は日本の歴史的名著らしいので、辞書的にもぜひ1冊持っておくと良いと思います!

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