Processing math: 100%
スポンサーリンク

ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理の例題

実数の連続性

本記事の内容

本記事はボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理が本当に成り立つのか?ということを説明するために一例を挙げます。
また、余談として数学を考える上での勘所も少々述べます。

この記事では部分列について知っている必要があるため、以下の記事を参照してください。

ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理って本当に成り立つの?

ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理は

有界な数列の一部分には、必ず収束する数列がある。

という主張だということを前回述べました。
「本当かネ?証拠でもあるのかネ?」と技術開発局長から言われるかもしれないので、1つ例を挙げます。
つまり、「{an}nNは収束しないけど、その部分列{bn}nNは収束しまっせ。」という例です。

例3.
an=(1)n+1nとする。このとき数列{an}nNは収束しません(ギザギザと振動する)。
実際、
limnan=limn((1)n+1n)=limn(1)n+limn1n=limn(1)n+0=limn(1)n
だからです。
ちなみに、{an}nNおよび{bn}nNが収束するならば、
limn(an+bn)=limnan+limnbn
という事実を使っていますが、【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その11で証明した、
limn(anbn)=limnanlimnbn
と同じように証明できるため、是非挑戦してみてほしいです。(練習問題として簡単にではありますが、一番最後に証明しています。)。
また、limn1n=0【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その8で証明を与えているのでそちらを参考にしてください。

さて、limnan=limn(1)nですが、
a1=1, a2=1, a3=1,
というように11を交互に行き来するようにギザギザと振動するため、収束しません。
しかしながら、{an}nNの偶数番目だけを選んで作った部分列{bn}nN={a2k}kN(すなわち、n=2k)は
bn=a2k=1+12k
であり、n=2kなのだからnが大きくなるとき、kも大きくならねばならないので、
limnbn=limka2k=limk(1+12k)=limk1+limk12k=1
となり、収束します。

この定理は「数列が有界であれば、常に収束するような部分列を見つけることができる。」という主張とも言えます。
与えられた数列の複雑さによっては具体的に見つけられないかもしれないが、絶対にある、と言っているわけです。
さらに言えば、「有界でさえあれば、収束していなくてもその数列の一部分を”うまく”取ってくることで収束列が作れる」と言っているわけです。

余談(読み飛ばしてOK)

今回挙げた例3.は誠に簡単な例(筆者がパッと思いついた例)だから、簡単に収束するような部分列を抜き出すことができました。
しかし、毎回このようにパッと分かるようなものでもありません。
以前少々述べたように、「〇〇が存在する」という主張の証明が個人的に最も難しいと考えています。

実は「〇〇が存在する」という主張の証明には2種類あると筆者は思っています。
それは

  • “〇〇が存在する”という事実が分かれば良い場合。
  • 具体的にどのようにすれば〇〇を見つけることができるかを述べなければならない場合。

前者も前者で難しいのだが、大抵の場合は〇〇以外にすでに存在する(見つけることでできている)△△を使って〇〇を導きます。
例えば、以前証明したlimn1nを思い出してみます。
この主張は数列の収束なのだから、とある自然数N(番号)を見つけてきなさい、という証明の流れでした。
これはアルキメデスの原理によりすでに存在が確定している自然数をNとして採用することで証明しました。
しかし、アルキメデスの原理から”存在する”という事実は分かっていても、その正体は謎です。
言わば「じゃあそのNって何すか?」と言われたときに「アルキメデスの原理を満たす自然数です。」としか答えられないのです。
(“存在する”という事実が分かればよいのでそれで十分です。)

一方で、後者は具体的に見つけてこなければならない場合もあります。
これがクセモノです。
「〇〇とはこれです!」というように具体的に見つけてこなければならないのです。
すなわち、この場合は”〇〇を見つけ出すためのアルゴリズム”を提示する必要があるのです。
例えば、以前証明した区間縮小法において、段々と小さくなる区間を作り出して、その共通部分がどうなっているかを考えることで証明しました。
この場合、”具体的に”区間を提示する必要がありました。
つまり、任意の実数の切断(A,B)と、とある実数の閉区間[a,b]に対して、a+b2Aの要素かBの要素かで場合分けをして、どんどん区間を小さくするという流れで縮小区間を作りました。
これは具体的に「こうやって縮小する区間を作ります!」という作り方、アルゴリズムを提示しています。
ゆえに「その縮小区間って何すか?」と言われたらば「こうやって作った区間です。」と答えられます。
これが難しいのです。
やはりこの難しさを乗り越えるには多くの事実を正確に知っていなければならないため、勉強している最中は頭を悩まします。

今回は、ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理が成り立つ一例を挙げました。
この場合は簡単に部分列を取ることができたのですが、いつもそうだとは限りません。

また、余談として、筆者の頭の中も書きました。
参考になれば嬉しいです。

次回はボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理の明示と証明を書きます。

乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!

練習問題の答え
limnan=aかつlimnbn=bとする。
このとき、limn(anbn)=abを示す。
(ϵ>0)(N1N s.t. nN nN1|ana|<ϵ2)
かつ
(ϵ>0)(N2N s.t. nN nN2|cnA|<ϵ2)
が成り立っている。
このとき、N=max{N1,N2}とする。
nNなる全ての自然数n対して、
|(an+bn)(a+b)|=|(ana)+(bnb)||ana|+|bnb|<ϵ2+ϵ2=ϵ
となるから、成り立つ。
(Q.E.D.)

コメントをする

タイトルとURLをコピーしました