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「3次方程式の解の公式(長過ぎて覚える気も起きない公式)」【代数学の基礎シリーズ】群論編 その9

代数学

本記事の内容

本記事は三次方程式の解の公式について解説する記事です。
本記事を読むにあたり、逆行列の計算方法について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。

なぜいきなり三次方程式の公式?(読み飛ばしてOKです)

なぜいきなり三次方程式の解の公式を解説するか、ということだけでなく、そもそもなぜ群を学ぶか、ということを少しお話したいと思います。

群を学ぶ理由は少なくとも2つあるのではないか、と筆者は思います。
その一つはなんといっても群の概念が生まれたきっかけが方程式論だからです。
3次、4次方程式の解の公式は存在しますが、5次以上の方程式には解の公式が存在しません。
勿論、「5次以上の方程式にも解の公式があるのではないか?」と研究されていました。

「5次以上の方程式をベキ根で解く公式がない。」ということを最初に証明したのはアーベル(Abel)だと言われています。
人によっては、ルフィニ(Ruffini)も証明を発見していたと言いますが、高木貞治はそれが妥当な評価ではないということを著書『近代数学史談』の中で述べています。
アーベルの証明がすぐには受け入れられなかった理由の1つが、証明の中で群や体の概念を用いていて、ソレが当時の数学者たちにはよほどわかりにくかったからだと思われます。

少し後には、ガロア(Galois)が方程式がベキ根で解けるための必要十分条件を、現在「ガロア理論」と呼ばれるものを使って発見し、それによって5次方程式がベキ根で解けないことの別証明を与えました。
アーベルの証明はそれ自身興味深いものですが、現在では、5次方程式をベキ根で解くことが出来ないことは、ガロア理論を用いて証明するのが一般的です。

群論を学ぶに当たり、最終的に群論がどのようにガロア理論の中でで使われているのかを知ることは重要だと思われます。

2次方程式の解の公式

これは中学校で学んだと思います(厳密には高校かも知れません)。

命題1.

2次方程式ax2+bx+c=0の解xx=b±b24ac2a である。

これは、平方完成を用いて証明しましたね。

余談(ちょっとした落とし穴) 「2次方程式ax2+bx+c=0の解を求めよ。」という問題文に対しては、 x=b±b24ac2a と書くだけでOKですが、「方程式ax2+bx+c=0の解を求めよ。」と言われたら、a=0の場合とa0の場合に分けなければ不正解です。
なぜなら、前者の場合は仮定として「2次方程式」が与えられているため、a0が保証されていますが、後者は単に「方程式」なので、a=0の場合も含むからです。

一方で、3次方程式の解の公式は尋常ではないくらい長く、覚えるものではありませんし、実用的では有りません。

3次方程式の解の公式を導出する前に…

まずは、「解とは何か?」という話をします。

「解」とは何か?

厳密に定めておきます。

方程式の解

f(x)が1変数多項式のとき、f(α)=0となるαをこの方程式のという。また、αのことを多項式f(x)という。すなわち、単独の1変数多項式の場合、「f(x)=0の解」、「f(x)の根」という。

どういう状況を考えるか?

α1α2α3を変数として、
f(x)=(xα1)(xα2)(xα3)=x3+a1x2+a2x+a3
とします。

我々が普段目にしている形の3次方程式は
ax3+bx2+cx+d=0
ですが、仮定として「3次方程式」ですので、a0だから
ax3+bx2+cx+d=0x3+bax2+cax+da=0
と変形できます。
この方程式において、
a1=ba,a2=ca,a3=da
とすることで、()となるため、最初から()の形の方程式を考えます。

では、解きます。

目標の確認

さて、
f(x)=(xα1)(xα2)(xα3)=x3+a1x2+a2x+a3
としたとき、簡単な計算で、
a1=(α1+α2+α3),a2=α1α2+α1α3+α2α3,a3=α1α2α3
が導けます。

目標は

α1,α2,α3a1,a2,a3とベキ根で表すこと。

です。

計算しやすいように変数を用意して、目標を明瞭に。

ω=1+32
とおくと、
ω2=132,ω3=1
です。
ω1ですので、ω2+ω+1=0です。

U=α1+ωα2+ω2α3,V=α1+ω2α2+ωα3,a1=α1+α2+α3
とします。
これを行列を使って書けば、
(UVa1)=(1ωω21ω2ω111)(α1α2α3)
となります。

故に、U,Vを求めることで目標達成です。

U,Vをどう求めるか。

先の行列の行列式はファンデルモンドの行列式と呼ばれるもので、0ではないことが知られています。
途中計算は省略しますが(地道に余因子展開をすれば計算できます)、実際に先の行列式を計算すると、
det(1ωω21ω2ω111)=33i
となり、0ではありません。
従って、逆行列が存在します。

なぜ行列式が0でないと逆行列が存在するかというと、以下が成り立っているからです。

定理2.

正方行列Aが正則であるための必要十分条件は、det(A)0である。このとき、Aの逆行列A1A1=1det(A)˜A であたえられる。ただし、˜AAの余因子行列である。

定理2.の証明は【線型代数学の基礎シリーズ】行列式編 その6を御覧ください。

さて、先程の行列
(1ωω21ω2ω111)
の逆行列を計算すると、
13(111ω2ω1ωω21)
となるため、
(UVa1)=(1ωω21ω2ω111)(α1α2α3)(α1α2α3)=(111ω2ω1ωω21)(UVa1)
となります。

U3+V3U3V3a1,a2,a3の多項式になることを示す。

補題.3

A=9a1a22a3127a3B=a213a2とおくと、 U3+V3=A,U3V3=B3 である。

補題3.の証明

ω2+ω+1=0を使えば、
U3+V3=(U+V)(U+ωV)(U+ω2V)=(2α1+(ω+ω2)α2+(ω+ω2)α3)×((1+ω)α1+(1+ω)α2+2ω2α3)×((1+ω2)α1+2ωα2+(1+ω2)α3)=ω2ω(2α1α2α3)(2α2α1α3)(2α3α1α2)=(3α1+a1)(3α2+a1)(3α3+a1)=27f(a13)=9a1a22a3127a3=A
です。
また、
UV=α21+α22+α23+(ω+ω2)α1α2+(ω+ω2)α1α3+(ω+ω2)α2α3=α21+α22+α23α1α2α1α3α2α3=(α1+α2+α3)23(α1α2+α1α3+α2α3)=a213a2
です。
従って、U3V3=B3です。

補題3.の証明終わり

補題3.から、、U3,V3は2次方程式
t2At+B3=0
の解です。
従って、
U3, V3=A±A24B32
となります。

方程式(1)を3次方程式f(x)=0分解方程式と呼びます。

実際に、UVを求めてみます。

Rでは正の数という概念があるため、正の平方根(例えば2)というものが一意的に定まりますが、A24B3は一般に複素数なので、A24B3は2乗がA24B3となる元と解釈します。
故に、A24B3には2通りの選択肢が存在します。
従って、
U3=A+A24B32,V3=AA24B32
としてOKです。

ちなみに、
A24B3=(U3+V3)24U3V3=(U3V3)2=(UV)2(UωV)2(Uω2V)2
ですが、
UV=(ωω2)(α2α3),UωV=(1ω)(α1α2),UωV=(1ω2V)=(1ω2)(α1α3)
であり、
ωω2=3,1ω=332,1ω2=3+32
です。

故に、
A24B3=27(α1α2)2(α1α3)2(α2α3)
です。

解はどうなりますか?

(1)と(2)からf(x)の根がベキ根により求まりましたが、α1だけを明示します(後で本気のヤバイ公式を書きます)。
α1=13(3A+A24B32+3AA24B32a1)

尚、UV=Bですので、上の2つの3乗根は積がBと等しくなるように選びます。

絶対に覚えられない(というより覚えたくないし、覚える必要がない)3次方程式の解の公式

では、行きます。

方程式ax3+bx2+cx+d=0の解x1,x2,x3
x1=b3a+32b3+9abc27a2d54a3+3(27a2d218abcd+4b3d+4ac3b2c2)18a2b3a+32b3+9abc27a2d54a33(27a2d218abcd+4b3d+4ac3b2c2)18a2,x2=b3a+1+3i232b3+9abc27a2d54a3+3(27a2d218abcd+4b3d+4ac3b2c2)18a2b3a+13i232b3+9abc27a2d54a33(27a2d218abcd+4b3d+4ac3b2c2)18a2,x3=b3a+13i232b3+9abc27a2d54a3+3(27a2d218abcd+4b3d+4ac3b2c2)18a2b3a+1+3i232b3+9abc27a2d54a33(27a2d218abcd+4b3d+4ac3b2c2)18a2,
です。
えらいことです。

覚えなくていいですし、実用的ではありませんが、どんな3次方程式でも一応解くことができます。

皆様のコメントを下さい!

今回はラグランジュです。

ラグランジュ(Joseph-Louis Lagrange;1736–1813)は、イタリア出身のフランスで活躍した数学者、天文学者。
オイラーと並んで18 世紀最大の数学者といわれています。
彼の初期の業績は、微分積分学の物理学、特に力学への応用です。
その後さらに力学を一般化して、最小作用の原理に基づく、解析力学(ラグランジュ力学)をつくり出しました。
数論の研究では、すべての自然数が高々四つの平方数の和によって表されることを証明しました(ラグランジュの四平方定理;1770 年)。
ラグランジュの『解析力学』はラプラスの『天体力学』と共に18世紀末の古典的著作となりました。
力学系の現代的理論、量子力学において、「ラグラジ アン」という用語が用いられています。
フランス革命に翻弄されましたが、ナポレオンが創設したエコール・ポリテクニークの初代校長を務めました。

如何でしたか?
ラグランジュは数学者のイメージがありましたが(勿論そうですが)、 物理学への貢献も大きいのですね。
ここに書かれている事のほかにでラグランジュについてご存知のことがあれば是非コメントで教えて下さい!

今回は、3次方程式の解の公式を解説しました。
絶対に覚えたくないですが、3次方程式には一応解の公式があります。
また、群論は方程式論がきっかけで出来た概念だということも述べました。

次回は三次方程式の解法について解説します。

乞うご期待!
質問、コメントなどお待ちしております!
どんな些細なことでも構いませんし、「定理〇〇の△△が分からない!」などいただければ全てお答えします!
お問い合わせの内容にもよりますが、ご質問はおおよそ3日以内にお答えします。
もし直ちに回答が欲しければその旨もコメントでお知らせください。直ちに対応いたします。

代数についてより詳しく知りたい方は以下を参考にすると良いと思います!

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  1. 「計算しやすいように変数を用意して、目標を明瞭に。」の箇所について質問します。
    (1)ωおよびω**3の記述は間違いでないでしょうか。
     (本文)ω=(1-+root(-3))/2 および ω**3=1
     (正)ω=(-1+root(-3))/2 および ω**3=-1
    (2)以下の記述の意味と目的が不明です。
     『ω≠1ですので、ω**2+ω+1=0』

    • スーさん様

      ご指摘ありがとうございます。
      答えさせていただきます。

      >(1)ωおよびω**3の記述は間違いでないでしょうか。
       (本文)ω=(1-+root(-3))/2 および ω**3=1
       (正)ω=(-1+root(-3))/2 および ω**3=-1

      おっしゃるとおりです。誤植でした。
      訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。

      >(2)以下の記述の意味と目的が不明です。
       『ω≠1ですので、ω**2+ω+1=0』

      とのお問い合わせですが、まずは意味からご説明致します。
      ω3=1ω31=0(ω1)(ω2+ω+1)=0
      です。
      ここで、
      ω=1+32
      ですから、ω1、すなわちω10です。
      故に、ω2+ω+1=0となります。
      このω2+ω+1=0は、補題3.の証明で使っています。

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