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「多変数ベクトル値関数の連続って数学的に何?」「実際に証明してみよう!」【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その8

多変数関数

本記事の内容

本記事は多変数ベクトル値関数の連続を数学的に明示し、具体例を証明する記事です。

本記事を読むにあたり、多変数ベクトル値関数の極限について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。

多変数ベクトル値関数の連続のイメージのチャラい復習

サラッとですが、イメージを復習しておきます。

  • 実数値関数の場合
    • 曲面の場合、定義域(領域)内のとある点において、穴が無い。もしくは、定義域(領域)内のどの点でも穴が無い。
    • 曲線の場合、定義域(領域)内のとある点において、途切れていない。もしくは、定義域(領域)内のどの点でも途切れていない。
  • ベクトル値関数の場合
    矢印が連続的に変化する。

です。
「難しそうだネ」と思うかもしれませんが、形式的には何ら難しい話ではありません。

多変数ベクトル値関数の連続って数学的に何かネ?

多変数ベクトル値関数の連続は、1変数実数値関数の場合と同様です。
先程述べたイメージを少々数学的に述べれば、次です。

ΩRnf:ΩRmを写像(関数)とする。xaに近づくとき、f(x)f(a)に近づくならば、fx=aで連続だという。 また、これが任意のaΩで成り立つときに、fΩで連続であるという。  

この”近づく”ということは数学的に極限で表現できるのでした。
これをしっかり数学的に表現すると次になります。

多変数ベクトル値関数の連続 ΩRnの領域、f:ΩRmとする。
  • aΩとする。faΩで連続(continuous at a)であるとは、 limxaf(x)=f(a) が成り立つことをいう。
  • すなわち、 (ϵ>0)(δ>0) s.t. (xΩ; 0<|xa|<δ|f(x)f(a)|<ϵ) が成り立つことをいう。
  • fΩで連続である(continuous on Ω)とは、任意のaΩに対して、faで連続であることをいう。
  • すなわち、 (aΩ)(ϵ>0)(δ>0) s.t. (xΩ: 0<|xa|<δ|f(x)f(a)|<ϵ) が成り立つことをいう。

ここで一つ事実を思い出しておきましょう。

多変数ベクトル値関数の連続のちょっとした言い換え

実は、次が成り立っているのでした。

定理(多変数ベクトル値関数の収束と同値な命題) ΩRnRnの領域、f:ΩRmを写像(関数)、aˉΩARmとする。xaのときf(x)Aに収束するとする。 すなわち、 (ϵ>0)(δ>0) s.t. (xˉΩ:0<|xa|<δ|f(x)A|<ϵ) が成り立っているとする。 f(x)=(f1(x)f2(x)fm(x)),A=(A1A2Am) と書いたとき、 limxaf(x)=A (iN:1im) limxafi(x)=Ai が成り立つ。 言い換えれば、 limxaf(x)=limxa(f1(x)f2(x)fm(x))=(limxaf1(x)limxaf2(x)limxafm(x)) が成り立つ。

この定理の証明は【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その2を参照してください。

とどのつまり、
f(x)=(f1(x)f2(x)fm(x)),A=(A1A2Am)
と書いたとき、
limxaf(x)=A (iN:1im) limxafi(x)=Ai
が成り立つと言っているわけです。

ということは、多変数ベクトル値関数の連続においては
limxaf(x)=f(a) (iN:1im) limxafi(x)=fi(a)
が成り立っている、というわけなのです。
従って、次が成り立ちます。

多変数ベクトル値関数の連続と同値な命題 ΩRnの領域、f:ΩRmとする。
  • faΩで連続であることはfi (i=1,2,,m)aΩで連続であることが必要十分条件である。
  • fΩで連続であることはfi (i=1,2,,m)Ωで連続であることが必要十分条件である。

従って、多変数ベクトル値関数の連続というのは、多変数ベクトル値関数の成分の実数値関数が連続である、ということなのです。
「結局は成分ごとに連続性を考えてね。」ということです。

「多変数ベクトル値関数の連続を数学的に説明せよ!」と言われたらばこれでおしまいです。
では、実際に例を証明してみましょう!

実際に証明してみよう!

例1. f:R2R2
f(x)=(xysiny)
で定められているとします。
このときfR2で連続です。

証明

示したいことは、
((a,b)R2)(ϵ>0)(δ>0) s.t.((x,y)R2: 0<|(xy)(ab)|<δ|(xysiny)(absinb)|<ϵ)
です。

要は上記のようなδ>0を見つけたいという話です。
もし仮に、上記のようなδ>0があったとして、(xa)2+(yb)2<δを満たすような(x,y)R2について考えるわけです。
(xa)20かつ(yb)20なのですから、(xa)2<δかつ(yb)2<δです。
これに注意しておきましょう。
では、δを見つけるために式変形してみます。

|(xysiny)(absinb)|=(xyab)2+(sinysinb)2
です。
(sinysinb)2については、【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その12で示したように、
(sinysinb)2(2sinyb2)2(2yb2)2=(yb)2
です。
従って、
(xyab)2+(sinysinb)2(xyab)2+(yb)2
です。

一方、(xyab)2については、
(xyab)2=((xa)(yb)+ay+bx2ab)2=((xa)(yb)+b(xa)+a(yb))2
です。
従って、
(xyab)2+(sinysinb)2(xa)2(yb)2+b2(xa)2+(a2+1)(yb)2+2b(xa)2(yb)+2ab(xa)(yb)2

ここで、|xa|<δかつ|yb|<δだったわけですので、

(xa)2(yb)2+b2(xa)2+(a2+1)(yb)2+2b(xa)2(yb)+2ab(xa)(yb)2δ4+2(a+b)δ3+((a+b)2+1)δ2

従って、δ4+2(a+b)+δ3((a+b)2+1)δ2<ϵとなってほしいので、δの候補はδ4+2(a+b)+δ3((a+b)2+1)δ2=ϵの解です。
しかし、これは4次方程式で、一応解の公式がありますが計算する気が失せるほど長く面倒です。
気になる方は4次方程式の解の公式を参照してください。
正直イヤになります。

さて、4次方程式を真正直に解くわけにはいきません。
問題なのはδの累乗が4という高い値なことです。
なんとかしてδ2くらいまで下げれないかな、と考えるわけです。
もし仮にδ1であれば、δ4δ3δ2δです。
故に、δ1であれば、
δ4+2(a+b)δ3+((a+b)2+1)δ2δ+2(a+b)δ+((a+b)2+1)δ
となるわけですので、
δ(a+b+1)2+1<ϵ
というδ>0を見つけてくればいいことになります。
故にδ(a+b+1)2+1=ϵを解くと、δ=ϵ2(a+b+1)2+1です。
「これでδの候補が見つかったぜ!」となるわけですが、これはあくまでδ1の時の話です。
ということは、δ1となってほしいわけですので、δ1δ=ϵ2(a+b+1)2+1の内小さい方を採用すれば、上記の議論が成り立ちます。
故に
δ=min{1,ϵ2(a+b+1)2+1}
とすればOKです。

ここで一息着きましょう。
コーヒーを飲んでください。筆者は紅茶派だけどね。

では続きを行きます。
δ=min{1,ϵ2(a+b+1)2+1}
とすると、0<|(xy)(ab)|<δを満たす任意の(x,y)R2に対して、

(xyab)2+(sinysinb)2=(xa)2(yb)2+b2(xa)2+(a2+1)(yb)2+2b(xa)2(yb)+2ab(xa)(yb)2δ4+2(a+b)δ3+((a+b)2+1)δ2δ+2(a+b)δ+((a+b)2+1)δϵ2(a+b+1)2+1+2(a+b)ϵ2(a+b+1)2+1+((a+b)2+1)ϵ2(a+b+1)2+1=ϵ1+2a+2b+a2+2ab+b2+1(a+b+1)2+1=ϵ(a+b+1)2+1(a+b+1)2+1=ϵ

以上のことから、
((a,b)R2)(ϵ>0)(δ>0) s.t.((x,y)R2: 0<|(xy)(ab)|<δ|(xysiny)(absinb)|<ϵ)
です。

証明終わり

例2. g:R2R2
g(x)={(xy)(x,y)(1,1)(00)(x,y)=(1,1)
で定められているとします。
このとき、g(x,y)=(1,1)で不連続です。

証明

簡単です。
任意のϵ>0に対して、δ=ϵとすると、
(x1)2+(y1)2<δ=ϵ
となり、
(ϵ>0)(δ>0) s.t.((x,y)R2: 0<|(xy)(11)|<δ|(xy)(11)|<ϵ)
ですから、
lim(x,y)(1,1)(xy)=(11)
です。
しかし、g(1,1)=(0,0)です。
故に
g(x,y)=(1,1)で連続ではありません。

今回は多変数ベクトル値関数の連続を数学的に明示し、例を挙げてその連続性を証明しました。
結局の所、多変数ベクトル値関数の連続性は、成分の関数の連続性に帰着できるということです。
ただ、1変数実数値関数のときよりも次元が上がるため、証明は少々面倒です。

次回は連続な多変数ベクトル値関数の和、差も連続であるということを証明します。

乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!

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