本記事の内容
本記事は「関数の連続って数学的にどういうこと?」を明示し、実際に証明してみる記事である。
本記事を読むにあたり、関数の連続のイメージがついているとより理解が進むと思われるので、その際は以下の記事を参照してください。
また、関数の極限について知っているとより理解が進むと思われるので、その際は以下の記事を参照してください。
で?関数の連続って数学的にどういうこと?
前回の記事(【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その4)で述べたイメージをまとめると、
また、このaが任意のa∈Iであるときに、fはIで連続であるという。
であった。
これを数学的に表現すると、次になる。
- a∈Iとする。fがaで連続(continuous at a)であるとは、 limx→af(x)=f(a) が成り立つことをいう。 すなわち、 (∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I; 0<|x−a|<δ⇒|f(x)−f(a)|<ϵ) が成り立つことをいう。
- fがIで連続である(continuous on I)とは、任意のa∈Iに対して、fがaで連続であることをいう。 すなわち、 (∀a∈I)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x−a|<δ⇒|f(x)−f(a)|<ϵ) が成り立つことをいう。

実は、関数の連続には別の言い方もある。
それについては後述する。
関数が連続であることと連続でないことを証明してみよう!
先に挙げた例1.,2.,3.,4.が連続であるかどうかを証明してみよう!
とはいえ、関数の極限、特に関数の収束がわかっていればなんてことはない。
むしろほとんど同じである。
なぜならば、形式的には関数の収束におけるAがf(a)に変わっただけだからである。
「ちょっとやってみようかな。」という方は是非挑戦してみてほしい!
例1.について
例1.
f:R→Rがf(x)=2xとする。
このとき、fはRで連続であり、特にx=0で連続である。

証明
- fがx=0で連続であることの証明
示したいことは
(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x−0|<δ⇒|2x−0|<ϵ)
である。 つまり、任意のϵ>0に対して上記を満たすようなδ>0を見つけてきなさい、ということである。
δ=ϵ2とすると、δ>0である。
0<|x−0|=|x|<δを満たすx∈Rに対して、
|2x−0|=|2x|=2|x|<2δ=2⋅ϵ2=ϵ
が成り立つ。
従って、
(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0|x|<δ⇒|2x|<ϵ)
が成り立ったので、fはx=0で連続である。 - fがRで連続であることの証明
示したいことは
(∀a∈R)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x−a|<δ⇒|2x−2a|<ϵ)
である。
つまり、任意のϵ>0に対して上記を満たすようなδ>0を見つけてきなさい、ということである。
δ=ϵ2とすると、δ>0である。
0<|x−a|<δを満たすx∈Rに対して、
|2x−2a|=2|x−a|<2δ=2⋅ϵ2=ϵ
が成り立つ。
従って、
(∀a∈R)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x−a|<δ⇒|2x−2a|<ϵ)
が成り立ったので、fはRで連続である。(Q.E.D.)
例2.について(例1.の証明をマネしてやってみよう!)
例2.
g:R→Rがg(x)=x2で定められているとする。
このとき、gはRで連続であり、特にx=0で連続である。

証明
- gがx=0で連続であることの証明
示したいことは
(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x−0|<δ⇒|x2−0|<ϵ)
である。
つまり、任意のϵ>0に対して上記を満たすようなδ>0を見つけてきなさい、ということである。
δ=√ϵとすると、δ>0である。
0<|x−0|=|x|<δを満たすx∈Rに対して、
|x2−0|=|x2|=x2<δ2<ϵが成り立つ。
従って、
(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x|<δ⇒|x2|<ϵ)
が成り立ったので、fはx=0で連続である。 - fがRで連続であることの証明
示したいことは
(∀a∈R)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x−a|<δ⇒|2x−2a|<ϵ)
である。
つまり、任意のϵ>0に対して上記を満たすようなδ>0を見つけてきなさい、ということである。
δ=−|a|+√|a|2+ϵとすると、δ>0である。
0<|x−a|<δを満たすx∈Rに対して、
|x2−a2|=|(x+a)(x−a)|=|x−a+2a|⋅|x−a|≤|x−a|2+2|a|⋅|x−a|=|a|2−2|a|√|a|2+ϵ+|a2|+ϵ+2|a|(−|a|+√|a|2+ϵ)=2|a|2−2|a|2+2|a|√|a|2+ϵ−2|a|√|a|2+ϵ+ϵ=ϵ
が成り立つ。
従って、
(∀a∈R)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I: 0<|x−a|<δ⇒|x2−a2|<ϵ)
が成り立ったので、fはRで連続である。
(Q.E.D.)
例3.について
例3.
h:R→Rがh(x)=[x]([]はGauss記号)とする。
このときhはx∈Zで連続でない。
ここで、[x]はxを超えない最大の整数である。

(証明)
示したいことは、
(∀n∈Z)(∃ϵ>0) s.t. [(∀δ>0)(∃x∈R) s.t.0<|x−n|<δ∧|h(x)−h(n)|≥ϵ]
である(hがx=n∈Zで連続であることの否定!)。
つまり、上記を満たすようなϵ>0とx∈Rを見つけてきなさい、ということである。
n∈Zとし、ϵ=1とする。
また、δを任意の正の実数とする。
このとき、x=n−δ2とすると、0<|x−n|=|−δ2|=δ2<δである。 さらに、Gauss記号[]の性質x−1<[x]≤xを用いれば、
|h(x)−h(n)|=|[n−δ2]−n|>|n−δ2−1−n|=|−δ2−1|=δ2+1>1
であるので、
(∀n∈Z)(∃ϵ>0) s.t. (∀δ>0)(∃x∈R) s.t.0<|x−n|<δ∧|h(x)−h(n)|≥ϵ
が成り立つ。
従って、hはx=n (n∈Z)で不連続である。
(Q.E.D.)
例4.について
例4.
u:R→Rが
u(x)={x+2(x∈R∖{1})1(x=1)
で定められていたとする。
このとき、limx→1u(x)=3だが、u(1)=1である。
すなわち、uはx=1で不連続である。

(証明)
示したいことは
(∃ϵ>0) s.t. [(∀δ>0)(∃x∈R) s.t.0<|x−1|<δ∧|u(x)−u(1)|≥ϵ]
である(uがx=1で連続であることの否定!)。 つまり、上記を満たすようなϵ>0とx∈Rを見つけてきなさい、ということである。
ϵ=1とし、δを任意の正の実数とする。
このとき、x=δ2+1とすると、0<|x−1|=|δ2+1−1|=δ2<δである。
また、δ2+1>1だからδ2+1≠1である。
従って、
|u(x)−u(1)|=|u(δ2+1)−u(1)|=δ2+3−1=δ2+2>1=ϵ
であるので、
(∃ϵ>0) s.t. [(∀δ>0)(∃x∈R) s.t.0<|x−1|<δ∧|u(x)−u(1)|≥ϵ]
が成り立つ。
従って、uはx=1で不連続である。
(Q.E.D.)
結
今回は、関数の連続はどういうことかを数学的に明示し、実際に証明を与えた。
関数の連続は「つながっている」ということで、これは数学では極限で表現される。
一言で言ってしまえば、関数が収束して、その収束先が関数の値と一致しているときに連続だ、ということなのである。
次回は「関数の連続の言い換え」ということで、関数の連続を別の言い方をしてみる。
しかし全然難しくはない。
むしろ、次回説明する関数の連続のほうがイメージが湧きやすいかもしれない。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
この記事の内容をより詳しく知りたい方は以下のリンクの本を参照してください!
ちなみに「解析概論」は日本の歴史的名著らしいので、辞書的にもぜひ1冊持っておくと良いと思います!
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