本記事の内容
本記事は『数学セミナー』(日本評論社)に掲載されている”エレガントな解答をもとむ”に出題されいている問題を1時間で解けるか、という挑戦をする記事です。
本記事を読むにあたり、前提知識は基本的に必要ありませんが、以前紹介した記事の内容を使う場合はその旨を記述することにします。
今回も「エレガントな解答をもとむ selections」に掲載されいている問題です。
前回の問題については以下の記事を御覧ください!
問題を明示します。
カタラン予想という未解決問題があります。m,n,p,qが1より大きな整数のとき、
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p24.
(C) mp−nq=1は32−23=1以外の解をもたない
という予想です。このままではむづかしすぎるので、問題をm=n+1のときに限定します:
(L) (n+1)p−nq=1 (n,p,qは1より大きな整数)
このとき、次の問に答えてください。
(初級問題) 3p−2q=1 (p,qは1より大きな整数)
の解はp=2、q=3だけであることを証明してください。
(中級問題) n, p, qが(L)をみたすとき、nとpは偶数、qは奇数であることを示して下さい。
(上級問題) (L)の解は、n=2、p=2、q=3に限られることを証明して下さい。
チャレンジの結果は…?
チャレンジの結果…全答はできませんでした…
もうちょっと時間があれば、という言い訳をしておきます(負け惜しみ)。
初級問題に案外時間を取られてしまいました。
初級なのに(いや、難しい)。
筆者の回答を紹介します。
最初に述べておくと、筆者が回答できたのは初級問題と中級問題の触りだけです。
初級問題の回答
「(p,q)=(2,3)しか解が存在しないことを示せ」と言われたので、真っ先に「背理法かな?」と思い、背理法で攻めてみることにしました。
p,qは1より大きい整数ですので、p=2はpの中で最小の値です。
一方qはq=3のときに解が存在することがわかっているのですが、q=2の場合はありえないのか?と思い計算してみました。
q=2とすると、3p−2q=1に代入して3p=5となり、これを満たす整数は存在しないため、q=2とはなりえない事がわかりました。
さらに、p=3の場合も考えてみると、33−2q=1となるから、26=2qとなってこの場合もありえないことがわかります。
背理法で攻めるということですので、もし仮に(p,q=(2,3))以外の解があったとします。
先程の議論から、(p,q)=(2,3)の解(p,q)が存在したとすると、p,q>3を満たしているということになります。
ここで悩みました。
「背理法を使うとなったは良いものの、さてどこに矛盾を生じされるのか?」と。
少し悩んだ末、修士のときを思い出しました。
修士のとき、少々数論に関わる研究をしていた経験から
- 素数は強い。
- 偶奇性は非常に使い勝手が良い。
ということを学びました(学んだというより感想を持ったという表現のほうが近いかもしれませんが)。
今、出現する整数は2と3で、双方とも素数です。
したがって、偶奇性に着目してみることにしました。
しかも、2は偶数、3は奇数なので、出現する整数の偶奇性が異なっているから方針として良さそうだなと感じました。
となれば、3p−2q=1をどう変形するかというと
3p−1=2q
と変形するのが良さそうです。
両辺の偶奇性が一致していなければならないというところを攻めてみようと思います。
とはいえ、どうしようかと悩みました。
少々悩んだ挙げ句、「あ!因数分解できるくね?」と閃きました。
つまり、
3p−1=(3−1)(1+3+32+33+⋯+3p−1)
と因数分解できるわけです。
故に、
(3−1)(1+3+32+33+⋯+3p−1)=2q
が成り立つわけで、3−1=2だから
1+3+32+33+⋯+3p−1=2q−1
となるわけです。
「偶奇性に着目する」という方針を思い出せば、2q−1はもちろん偶数ですから1+3+32+33+⋯+3p−1も偶数でなければなりません。
しかし、1,3,32,33,⋯,3p−1はすべて奇数です。
奇数の和が偶数たりえるのは、奇数を偶数個足したときです。
したがって、
ということになります。
では、1+3+32+33+⋯+3p−1の項数は?という話ですが、それはp個です。
したがって、pは偶数でなければなりません。
「よし、じゃあp=2m(m∈{n∈N|n≥2})と書いてみよう。」と思いましたが、特にめぼしい成果は得られませんでした。
また悩みます。
「項数が偶数であることを使えないかな」と考えました。
また、「更に因数分解できたりしないかねえ」と考えました。
すると、「項数が偶数ってことは2個で1つのペアが作れんな?」と思いました。
そこでグッと睨んで(眼力で)みると、「ニコイチのペアにすると(1+3)で括り出せね?」と気が付きました。
つまり、
1+3+32+33+⋯+3p−1=(1+3)+(32+33)+(34+35)+(36+37)+⋯+(3p−2+3p−1)=(1+3)+(1+3)⋅32+(1+3)⋅34+(1+3)⋅36+⋯+(1+3)⋅3p−2=(1+3)(1+32+34+36+⋯+3p−2)
となります。
故に、
1+32+34+36+⋯+3p−2=2q−3
となります。
隣り合う項を2つずつペアにしたので、上式の左辺の項数もまた偶数個です。
ここで、この方針でできることを確信しました。
もう一度今の操作をすれば、
1+32+34+36+⋯+3p−2=(1+32)(1+34+36+⋯+3p−2)
となりますが、1+32=10であり、10=2×5だから、2q−3は素因数として5を持つことになってしまいます。
しかしながら、これはありえないので矛盾です。
故に、(p,q=(2,3)以外の解は存在しないことがわかりました。
中級問題の回答(の触り)
初級問題と同様にやってみることにしました。
まず、(n+1)p−nq=1を(n+1)p−1=nqと変形して
(n+1)p−1={(n+1)−1}(1+(n+1)+⋯+(n+1)p−2+(n+1)p−1)=n(1+(n+1)+⋯+(n+1)p−2+(n+1)p−1)
と因数分解します。
故に、
(1+(n+1)+⋯+(n+1)p−2+(n+1)p−1)=nq−1
となります。
さて、初級問題と同様に項数に着目しようとしましたが、nの偶奇性により、全体の偶奇性が変わるため、nの偶奇性を考える必要があります。
希望としては、nが偶数であれば、初級問題と同様にできそうですので、nが奇数の場合を背理法で考えてみます。
ここでも少々悩みました。
やはり因数分解に頼ってみることにしました。
というのも、an+bnはnが奇数のときに因数分解できるからです。
故に、(n+1)pを因数分解してみると、
(n+1)p=(n−1)(nq−1−nq−2+⋯−n+1)
となるため、
(n+1)p−1=nq−1−nq−2+⋯−n+1
です。
nが奇数であるとき、右辺は奇数個の奇数の和か差ですので、奇数となります。
一方で、左辺は偶数になるから矛盾です。
故に、nは偶数でなければなりません。
ここでタイムアップでした(実はちょっとだけ時間オーバーでした)。
投稿されたエレガントな解答
(前略)
定理 (L)を満たす解はn=2、p=2、q=3だけである。
(中略)
(中級・上級問題の解)
まず、(L)を法n+1で考えると、−(−1)q≡1 (mod n+1)となり、n+1>2なのでqは奇数でなければならないことがわかります。そこで(L)を移項して
(n+1)p=nq+1=(n+1)(nq−1−nq−2±⋯−n+1)
と因数分解すると、
(n+1)p−1=nq−1−nq−2±⋯−n+1
となります。ここでもしもnが奇数だとすると、右辺は奇数個の奇数の和または差となり奇数、左辺は偶数になりますから矛盾です。したがってnは偶数でなければいけないことがわかりました。さらに(L)を移項して
(n+1)p−1=nq
とし、両辺を(n+1)−1=nでわると、
(n+1)p−1+(n+1)p−2+⋯+(n+1)+1=nq−1
となります。左辺は奇数のp個の和、右辺は偶数ですから、pは偶数でなければいけません。
そこでn=2k、p=2r(k,rは自然数)と書くと、(L’)より
{(2k+1)r−1}{(2k+1)r+1}=2qkq
となります。左辺の2つの{}はとなりあう偶数なのでGCD((2k+1)r−1,(2k+1)r+1)=2であり、また2k|(2k+1)r−1となっていることは明らかです。そこで(3)より
{(2k+1)r−1=2kq(2k+1)r+1=2q−1
となることがわかります。(4)より2q−1>2kqとなりますから\(k=1)、すなわちn=2がわかり、(4)よりこのとき3r−1=2なのでr=1、すなわちp=2、したがって(L)よりq=3としたものが唯一の解であることがわかります。(中略)
(初級問題の解)
q>1なので、1=3p−21≡(−1)p (mod 4)となり、pは偶数であることが必要である。そこでp=2r(rは自然数)とおくと、
2q=(3r−1)(3r+1)
これより3r−1、3r+1はともに2の累乗であり、その差が2だから、3r−1=21、3r+1=22以外にはあり得ない。よってr=1すなわちp=2。また2q=3p−1=8よりq=3となる。(中略)
つぎに(中級問題)では(中略)氏のアイディアが光っていました。
(L)を mod n2で考えてnp+1≡1 (mod n2)∴p≡0 (mod n)、よってpはnの倍数である。また、(n+1)2を法として考えて、
−(−1){−q(n+1)+1}≡1 (mod (n+1)2)
よってqは奇数であり、かつn+1の倍数である。(中略)
最後に(上級問題)では先ほどの(中略)君の解の出だしが気に入りました。
(L)をn+2を法として考えて(−1)p−(−2)q≡1 すなわち 2q≡0 (mod n+2)したがってn+2=2t (t≤q)すなわちn=2t−2。
(後略)
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p207-p210.
読者の皆様への挑戦状!
今から紹介する問題の解答は来週の日曜日に挑戦します!
自然数Nに対して、集合SNを
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p24-p25.
SN={2n|1≤n≤N}
で定義します。mを自然数とし、SNから任意に1つの数を選ぶという試行をm回繰り返し行い、その結果選ばれた数x1,⋯,xmを掛けてできる数x1⋯xmを十進数で表したとき、その最高位の数字が1である確率をpm,Nとします。たとえば、m=2、N=3のとき、この試行によって得られるペアは9通りあり、それらは
(2,2), (2,22), (2,23), (22,2), (22,22),(22,23), (23,2), (23,22), (23,23)
なので、掛けてできる数は
4,8,16,8,16,32,16,32,64
となります。これらのうち最高位の数字が1のものは3つ、したがって、
p2,3=39=13
となります。では、問題です。mを固定したとき、
limN→∞pm,N
を求めてください。
前回の問題は【1時間チャレンジシリーズ】挑戦㉛を御覧ください!
結
いかがでしたか?
今回は数セミの「エレガントな解答をもとむ」に挑戦してみる、という記事でした。
読者の皆様も是非一度挑戦してみて下さい!
そして、「読者の皆様への挑戦状」にも是非挑戦していただき、解答をコメントで教えて下さい!
質問、コメントなどお待ちしております!
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(難しかったらもう少しかかるかもしれませんが…)
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他の「エレガントな解答をもとむ」の問題に挑戦してみたい方はぜひ以下の書籍をお買い求め下さい!
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