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(数セミ)”エレガントな解答をもとむ”に1時間で挑戦!読者の皆様への挑戦もあります!【挑戦⑮】

1時間チャレンジ

本記事の内容

本記事は『数学セミナー』(日本評論社)に掲載されている”エレガントな解答をもとむ”に出題されいている問題に、1時間で解けるか、という挑戦をする記事です。

本記事を読むにあたり、前提知識は基本的に必要ありませんが、以前紹介した記事の内容を使う場合はその旨を記述することにします。

今回も「エレガントな解答をもとむ selections」に掲載されいている問題です。

前回の問題については以下の記事を御覧ください!

では、問題

直角二等辺三角形をある方向に拡大すると再び直角二等辺三角形になったとします。何倍したのでしょうか。
もう少し正確にいうと次のようになります。\(xy\)平面上の直角二等辺三角形について、\(y\)座標はかえずに\(x\)座標を\(a\)倍(\(a\)は\(1\)より大きい実数)したとき、この三角形が再び直角二等辺三角形になったとします。このときの\(a\)の値を求めて下さい。もちろん\(x\)軸と\(y\)軸は直交しているとします。

数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p16.

いざ、チャレンジ

チャレンジの結果…解けました。
問題の難易度としては比較的易しいと思います。
真正直に解けました。
ただ、「その解答はエレガントか?」と言われると…少々自信に欠けます。

筆者の回答

まず、\(xy\)平面上にどのような形で直角二等辺三角形があるか、ということを考えてみました。
というのも、各頂点の\(x\)座標を定数倍するわけですので、より考えやすいよう座標を設定したほうが計算が楽だからです。

結論としては、「直角二等辺三角形のどの辺も軸上には存在しない。」ということです。

というわけで、直角を原点におき、少しだけ傾いた状態で直角二等辺三角形を\(xy\)平面上に配置すると、定数倍しても直角二等辺三角形になりうる、ということですので、うまく直角二等辺三角形の拡張点の座標を設定します。

以下に記すのは、筆者が「こうすれば簡単なんじゃない?」と思う設定に過ぎず、他にもやり方は色々あると思います。

直角二等辺三角形を\(\triangle OAB\)とし、\(\angle O=90^\circ\)とします。
このとき、\(t\in \mathbb{R}\)を用いて、頂点\(A\)および\(B\)の座標を\(A(1,t)\)、\(B(t,-1)\)と設定することで\(\triangle OAB\)は直角二等辺三角形になります。

実際、\(OA=\sqrt{1+t^2}\)、\(OB=\sqrt{1+t^2}\)であり、
\begin{eqnarray}
AB&=&\sqrt{(t-1)^2+(-1-t)^2}\\
&=&\sqrt{t^2-2t+1+t^2+2t+1}\\
&=&\sqrt{2+2t^2}\\
&=&\sqrt{2}\cdot \sqrt{1+t^2}\\
&=&OA=OB
\end{eqnarray}
となるため、\(OA:OB:AB=1:1:\sqrt{2}\)だから、\(\triangle OAB\)は直角二等辺三角形です。

\(\triangle OAB\)の\(x\)座標を\(a(>1)\in\mathbb{R}\)倍して\(\triangle OA^\prime B^\prime\)になり、\(\triangle OA^\prime B^\prime\)が直角二等辺三角形だったとします。

このとき、\(\angle A^\prime=90^\circ\)となったとします。
というのも、\(A^\prime (a,t)\)、\(B^\prime(at,-1)\)ですので、\(B^\prime\)のほうがより早く遠くに行くからです。
以下の触って動かせる図でも確かめてみて下さい。

これで確かめてみると、「本当に\(OA^\prime B^\prime\)は直角二等辺三角形になるの?」と思われるかも知れませんが、\(OA^\prime B^\prime\)が直角二等辺三角形になるような\(t\)の値も一緒に求まるので大丈夫です。

さて、\(\angle A^\prime=90^\circ\)としたわけですので、\(OA^\prime\perp A^\prime B^\prime\)、\(OA^\prime=A^\prime B^\prime\)をそれぞれ四季に表して整理すると、
\begin{eqnarray}
\begin{cases}
a^2(t-1)-t(t+1)=0\\
a^2(t^2-2t)+2t+1=0
\end{cases}
\end{eqnarray}
です。
\(a^2\)を消去して更に整理すれば、
$$
(t^2+1)(t^2-t-1)=0
$$
となります。
故に、\(\displaystyle t=\frac{1\pm \sqrt{5}}{2}\)で、\(\displaystyle a^2=\frac{7\pm3\sqrt{5}}{2}\)となり、求める\(a\)の値は
$$
a=\frac{3+\sqrt{5}}{2}
$$
です。

投稿されたエレガントな解答

筆者の回答と似ている解答1.は省きます。

解答1 \(\triangle OAB\)の\(x\)座標を\(a\)倍すると\(\triangle OA^\prime B^\prime\)になるとする。
(中略)
 \(\triangle OA^\prime B^\prime\)が直角二等辺三角形であることを条件に表す方法はさまざまで、ベクトルを回転したもの(辺をベクトルで表してそれを\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\)回転したベクトルと比較するものなど)、辺の長さを用いたもの(2辺が等しくもう1辺が\(\sqrt{2}\)倍であることなど)、\(OA^\prime\perp A^\prime B^\prime\)の条件を用いたもの(ベクトルの内積を用いる)などの方法があります。

解答2 一般に\(\mathbb{R}^2\)の点\(0\)(原点)、\(v\)を与えたとき、\(0\)と\(v\)を頂点にもつ直角二等辺三角形は6通り考えられ、3つめの頂点は\(M_iv\ (i=1,2,\cdots,6)\)で表される。 ただし \begin{eqnarray} &&M_1= \begin{pmatrix} 0&-1\\ 1&0 \end{pmatrix},\quad M_2= {}^t\!M_1,\quad M_3= \begin{pmatrix} 1&-1\\ 1&1 \end{pmatrix},\\ &&M_4={}^t\!M_3,\quad M_5=\frac{1}{2}M_3,\quad M_6=\frac{1}{2}M_4. \end{eqnarray}  さて、うつる前の直角二等辺三角形の頂点は、一般性を失うことなく、\(0,\ u,\ M_1u\)とおいてよい。 この\(x\)座標を\(a\)倍すると\(0,\ Au,\ AM_1u\)となる。 ただし\(\displaystyle A=\begin{pmatrix} a&0\\ 0&1 \end{pmatrix}\)。 これが直角二等辺三角形になる必要十分条件は、ある\(i=1,2,\cdots,6\)について\(AM_1u=M_iAu\)が成り立つことである。 問題の条件はこの式を満たす\(u\in\mathbb{R}^2\)が存在することだから、これはある\(i\)について\(\det(AM_1-M_iA)=0)\)が成り立つことと同値。 \(M_i\)と\(A\)を代入して整理すると \begin{eqnarray} &&i=1のとき\quad &&(a-1)^2=0.\\ &&i=2のとき\quad &&(a+1)^2=0.\\ &&i=3,5のとき\quad &&a^2-3a+1=0.\\ &&i=4,6のとき\quad &&a^2+3a+1=0. \end{eqnarray} \(a>1\)より求める値は\(\displaystyle a=\frac{3+\sqrt{5}}{2}\)。
(中略)

解答3 直角二等辺三角形\(OAB\)を\(x\)軸方向に\(a\)倍して直角二等辺三角形\(OA^\prime B^\prime\)になったとする。 (与えられた\(a\)について、このようなことが起こるかどうかはわからないがもし起こったとすれば、\(\triangle OAB\)を配置するときの座標軸に対する角度は1つしかないことに注意する。)  さて\(\triangle OA^\prime B^\prime\)を今度は\(y\)軸方向に\(a\)倍したものを\(OA^{\prime\prime} B^{\prime\prime}\)とすると、これは\(OA^\prime B^\prime\)を相似拡大したものだから直角二等辺三角形である。 すると上の”注意”より\(\{\)座標軸\(XY\),\(\triangle OAB\),\(\triangle OA^\prime B^\prime\}\)の合併と\(\{\)座標軸\(YX\),\(\triangle OB^\prime A^\prime\),\(\triangle OB^{\prime\prime}A^{\prime\prime}\)の合併は相似であることがわかる。  さて\(\theta=\angle AOX\)とおいて\(OA\)の傾きを\(t=\tan\theta\)、\(OB\)の傾きを $$ T=\tan\left( \theta+\frac{\pi}{2}\right)=\frac{1+t}{1-t} $$ とおく。 \(OA\perp AB\)より\(AB\)の傾きは\(\displaystyle-\frac{1}{t}\)である。
 これらを\(x\)軸方向に\(a\)倍すると、\(OA^\prime\)、\(OB^\prime\)、\(A^\prime B^\prime\)の傾きはそれぞれ\(\displaystyle\frac{t}{a},\frac{T}{a},-\frac{1}{at}\)となる。
 \(OB\perp A^\prime B^\prime\)より\(\displaystyle\frac{T}{a}\times\left( -\frac{1}{at}\right)=-1\)、すなわち $$ a^2=\frac{T}{t}.\tag{1} $$  上記の相似性より座標軸をいれかえると\(OB\)は\(OA^\prime\)にうつるので、これらの傾きは互いに逆数である。 よって\(\displaystyle T\times\frac{t}{a}=1\)、すなわち $$ a=tT\tag{2} $$ (1)、(2)より\(\displaystyle a=\frac{1}{t^2}\)なのでこれと\(\displaystyle T=\frac{1+t}{1-t}\)を(2)に代入して整理すると $$ (t^2+1)(t^2+t+1)=0. $$  \(t>0\)より\(\displaystyle t=\frac{\sqrt{5}-1}{2}\)となり、求める値は\(\displaystyle a=\frac{1}{t^2}=\frac{3+\sqrt{5}}{2}\)。
(中略)

解答4 直角二等辺三角形の性質より、図2のそれぞれの長方形の中で、影のついた2つの三角形は合同であることがわかる。 左の図においてその直角三角形の2辺を図のように\(t,1\)とおく。 \(y\)軸方向には拡大されないから、右図において影のついた直角三角形の2辺は\(t,t+1\)とわかる。 $$ a=\frac{A^\prime B^\prime}{AB}=t+1=\frac{A^\prime C^\prime}{AC}=\frac{2t+1}{t} $$  これを解いて\(t>0\)より\(\displaystyle t=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)。 求める値は\(\displaystyle a=\frac{3+\sqrt{5}}{2}\)。
(中略)
 解答3で用いた相似性より、図2の左右の図の影のついた三角形は相似であることがわかります。 すなわち
\(1:t=t:t+1\) (よって\(t\)は黄金比)
影のついて三角形の拡大率は\(t\)倍なので面積は\(t^2\)倍(\(=a^2\)倍)となり、これより求める値は黄金比の2乗であることがわかります。
(中略)

解答5 辺の長さが\(1,1,\sqrt{2}\)の直角二等辺三角形を底面にもつ三角柱をななめにきった断面は、底面をある方向に拡大した図形になるが、その3辺を\(\sqrt{2}l,l,l\)とする。 面積は\(l^2\)倍になっているので求める値は\(a=l^2\)である。 \(h_1=\sqrt{l^2-2}\)、\(h_2=\sqrt{l^2-1}\)、\(h_1+h_2=\sqrt{2l^2-1}\)より $$ \sqrt{a-2}+\sqrt{a-1}=\sqrt{2a-1}. $$  両辺を2乗して整理すると $$ \sqrt{(a-1)(a-2)}=1. $$  さらに両辺を2乗して整理すると $$ a^2-3a+1=0. $$  \(a>1\)より求める値は\(\displaystyle a=\frac{3+\sqrt{5}}{2}\)。 (後略)

数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p114-p118.

座標軸を使わない解答、すごいなと、エレガントだなと感じました。
問題文に座標を使うことが示唆されていたとはいえ、最初の2行で実は事足りていたのですね。
脱帽です。

読者の皆様への挑戦状!

今から紹介する問題の解答は今週の日曜日に解説します!

1. 格子点とは、平面上で座標がいずれも有理整数である点を意味することにします。このとき、\(n\)個(\(n\geq5\))の格子点を頂点とする凸\(n\)角形の辺および対角線全部を書くと、頂点以外の格子点で、それらの辺または対角線の上にあるものが存在することを証明して下さい。

2. 上の問題で、格子点の意味を、次のように変えた場合は、どうなるかを考え、それを証明して下さい。
 平面を、下の図のように1辺の長さ1の正三角形に分割したときの頂点全体を格子点とする。

数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p17.

前回の問題は【1時間チャレンジシリーズ】挑戦⑭を御覧ください。

いかがでしたか?
今回は数セミの「エレガントな解答をもとむ」に挑戦してみる、という記事でした。

読者の皆様も是非一度挑戦してみて下さい!
そして、「読者の皆様への挑戦状」にも是非挑戦していただき、解答をコメントで教えて下さい!

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