本記事の内容
本記事は『数学セミナー』(日本評論社)に掲載されている”エレガントな解答をもとむ”に出題されいている問題に、1時間で解けるか、という挑戦をする記事です。
本記事を読むにあたり、前提知識は基本的に必要ありませんが、以前紹介した記事の内容を使う場合はその旨を記述することにします。
今回は「エレガントな解答をもとむ selections」に掲載されいている問題です。
前回の問題については以下の記事を御覧ください。
では、問題
△ABCの∠B、∠Cの2等分線が、それぞれ大変AC、ABと交わる点をD、Eとするとき
∠ADE−∠AED=60∘
ならば、∠ACBはどんな角でしょうか。数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p14.
いざ、チャレンジ
チャレンジの結果…解けませんでした…
いやあ、今回は難しかったです。
言い訳になってしまいますが、補助線を引きまくれば出来るのでしょうが、そうなるとあまり良い解答とは思えず、頭を捏ねくり回しましたがだめでした。
解けなかったら元も子もないので、あまり良い発想ではないのでしょうけれど…
筆者の回答
解けなかったとはいえ、筆者がどのように考えたのか、ということを記します。
まず、角の二等分線を引いているので、「内心を使うのだな?」と思いました。
しかし、BDとCDとの交点が内心だ、ということが分かったとて、そこから進みませんでした。
そこで、仮定
∠ADE−∠AED=60∘
のように、具体的な角度の数値は考えず、連立方程式的に解くことで求めたい角が得られるかな?とも思い、各角の関係式を考えてみることにしました。
※以下、結果的に意味のないことを書きます。
△AEDの内角の和は180∘なので、
∠A+∠AED+∠ADE=180∘
が成り立ちます。
これと仮定(1)から
∠A+2∠ADE=240∘
が得られます。
また、△ABCの内角の和も180∘であることと、∠B=2∠ABD、∠C=2∠ACEであることから
∠A+2∠ABD+2∠ACE=180∘
が得られます。
(3)と(4)から
2∠ADE−2∠ABD−2∠ACE=60∘=∠ADE−∠AED
が得られます。
…得られましたが、だからどうした、という話です。
この方針は一旦やめました。
次に、∠Aから線分BDと線分CEとの交点Fを結ぶ線分を作図すると、Fは△ABCの内心なので、線分AFは∠Aを二等分します。

更に、Fは内心だから、
∠BFC=2△+∘+×=∘+△+×+△=90∘+△=∠EFD
です。
最後の等式は対頂角により等しいことを指しています。
AFとEDの交点をGとします。

すると、
∠AGD=∠EAG+∠AEG=△+∠AED∠AGE=∠DAG+∠ADG=△+∠ADE
です。
この方程式の辺々の差を取ることで
{∠AGE−∠AGD=∠ADE−∠AED=60∘∠AGE+∠AGD=180∘
という連立方程式が得られます。
これを解けば、∠AGE=120∘、∠AGD=60∘が得られます。
…得られましたが、だからどうした、でした。
他にも数個方程式を立てましたが、どれも「だからどうした」でした。
ここでタイムアップでした…
投稿されたエレガントな回答
解1(中略)
BD、CEの交点をIとすれば、Iは内心であるからAIは∠BACを2等分する。
∠BAI=∠IAC=αとおけば、内心の性質として∠BIC=90∘+α。よって
∠DIE=∠BIC=90∘+α
AIとDEの交点をFとすれば
∠AFE−∠AFD=(α+∠ADE)−(α+∠AED)=∠ADE−∠AED=60∘.
∠AFE+∠AFD=180∘であるから
∠AFE=120∘,∠AFD=60∘
である。
したがって、∠EFI=∠AFD=60∘である。DEの垂直二等分線とAFとの交点をOとすると、OD=OEである。またEからAFへの垂線の足をMとし、EMとADとの交点をE′とすると∠EAM=∠E′AMからEM=ME′である。これより、OE=OE′でOは△DEE′の外心である。
∠EFM=60∘であるから∠DEE′=∠FEM=30∘。したがって
∠DOE′=2∠DEE′=60∘.
これとOD=OE′から△ODE′は正三角形である。
OのMに関する対象点をPとすると、MはOP、EE′の共通な中点でOP⊥EE′だから四辺形OEPE′はひし形である。よって
∠EPO=∠POE′=∠PE′A+∠OAE′=∠OE′D+α=60∘+α.
またE′P=E′O=E′DからE′は△OPDの外心である。よって
∠DPO=12∠DE′O=30∘.
ゆえに
∠DPE=∠DPO+∠EPO=30∘+60∘+α=90∘+α
よって(1)から∠DPE=∠DIE。
P、Iは∠Aの2等分線上の点で、どちらもDEに関してAと反対側にあるから、P、Iは一致する。すなわちPは△ABCの内心である。よってEPはCを通る。OE′//EPだからOE′//EC。したがって∠ACE=∠DE′O=60∘。よって
∠ACB=2∠ACE=120∘
である。解2(中略)
BC=a、CA=b、AB=cとおく。BDは∠Bの2等分線であるから
AD:DC=AB=c:a.
よって
AD:AC=c:(c+a),∴ AD=bcc+a
同様にAE=bcb+aであるから
AD:AE=1c+a:1b+a=(b+a):(c+a).
AB、ACの延長上にそれぞれ点F、GをBF=a、CG=aとなるようにとれば
AG:AF=(b+a):(c+a)
であるからAD:AE=AG:AF、よって△ADE∽△AGFである。
したがって
∠ADE=∠AGF,∠AED=∠AFG.
よって
∠AGF−∠AFG=∠ADE−∠AED=60∘.
正三角形BFHを△AFGの外側に作り、FGの中点をMとすると、
FH=FB=a=GC,FM=GM,∠MFH=∠AFG+60∘=∠AGF=∠MGC
より△MFH≡△MGCである。
よって
∠MHF=∠MCG,MH=MC.
またBH=BF=BCでBMは共通であるから
△MBH≡△MBC,よって∠MHB=∠MCB.
したがって
∠BCG=∠MCB+∠MCG=∠MHB+∠MHF=∠BHF=60∘,
ゆえに∠ACB=180∘−∠BCG=120∘である。
(∠BCG=∠BHFは、四辺形CHGFが等脚台形であることを用いて証明することもできる。また∠BCG=60∘は背理法を用いても証明できる。)解3(中略)
∠AED=θとおけば∠ADE=θ+60∘である。また∠ADE>∠AEDだからAE>ADである。DからAB、BCへの垂線の足をF、
HとすればBDは∠Bを2等分するからDF=DHである。同様にEからAC、BCへの垂線の足をG、IとすればEG=EIである。
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p91-p95.
△ADF∽△AEDであるから
DFEG=ADAE<1,よってDF<EG.
したがって、DH<EIである。DからEIへの垂線の足をKとすればKI=DH<EIより、Kは線分EI上の点である。
DEcos(∠DEC)=EK=EI−DH=EG−DF=DEsin(∠EDG)−DEsin(∠DEF)=DEsin(∠EDA)−sin(∠DEA)=DEsin(θ+60∘)−DEsinθ=DE{sin(θ+60∘)sinθ}=DE⋅2sin30∘cos(θ+30∘)=DEcos(θ+30∘)
よって
cos(∠DEK)=cos(θ+30∘)
ゆえに∠DEK=θ+30∘。
また∠DEG=(θ+60∘)−90∘=θ−30∘。よって
∠GEK=∠DEK−∠DEG=(θ+30∘)−(θ−30∘)=60∘.
すなわち∠GEI=60∘。
四辺形EICGにおいて∠I=∠G=90∘だから∠IEG+∠ICG=180∘、よって∠ICG=180∘−60∘=120∘。
ゆえに∠ACB=120∘である。
いやあ、すごいですね。
発想が豊かです。
しかし、エレガントか、というとどうなんでしょう。
結構力技の解答な気がしました。
解けてないくせに何を言ってるんだ、という話ですがね。
読者の皆様への挑戦状!
今から紹介する問題の解答は今週の土曜日に解説します!
3辺が整数a,b,cの3角形の3つの角A,B,Cが特別の1次の関係式をもつ場合があります。
もちろん
A+B+C=180∘
は当然成立しますが、それと無関係の(線型独立な)関係式で係数が整数のものを見つけて下さい。たとえば図1、図2についてはそのような1次式があります。まずこれみつけてください。
それから、このような1次式をもつ整数の辺の3角形が(相似形をのぞき)他にもあるか、無限にあるか、どのような1次式のものであるか、などについても研究してみてください。
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p14-p15.
結
いかがでしたか?
今回は数セミの「エレガントな解答をもとむ」に挑戦してみる、という記事でした。
読者の皆様も是非一度挑戦してみて下さい!
そして、「読者の皆様への挑戦状」にも是非挑戦していただき、解答をコメントで教えて下さい!
質問、コメントなどお待ちしております!
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