本記事の内容
本記事はコーシー列の例を挙げ、それを証明する記事です。
また、「コーシー列とは何か」ということを数学的に説明します。
本記事を読むにあたり、コーシー列のイメージを知っているとより分かりやすいと思われますので、以下の記事も合わせて御覧ください。
コーシー列ってどんなの?
前回の記事で、コーシー列は
という発想から来ていると述べました。
つまり、
という条件を満たす数列がコーシー列なのです。
ネタバラシしておくと、実数の範囲では収束列であれば、必ずコーシー列です。
例1.
an=1+122+132+⋯+1n2とします。
この数列はコーシー列です。
つまり、ある番号以降のanの値同士は十分近です。
ちなみに、この数列の項をいくつか具体的に書いてみると、次です。
- a1=1,
- a2=1+14=1.25,
- a2=1+14+19=1.361111111…,
- a5=1+14+19+116+125=1.463611111…,
- a10=1+14+⋯+1100=1.54976773116654…,
- a100=1+14+⋯+110000=1.643498390018489….
およそ収束するとは思えないのですが(筆者の主観だけどね)、これは上に有界な単調増加数列なので収束します(「有界な単調列は収束する。」という命題の証明は【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その9を御覧ください)。
さて、これがコーシー列であることを示しましょう。
アルキメデスの原理から、任意の正の実数ϵに対して、ある自然数Nが存在して、1<Nϵを満たします。
従って、1N<ϵを満たします。
自然数m,nがm≥Nを満たしていたとします。
さらに、先程見つけた自然数Nについて、m,n≥Nを満たしていたとします。
すなわち、m≥n≥Nであるとします。
このとき、数列{an}n∈Nは単調増加数列であることを用いれば、
0≤am−an=1+122+⋯+1m2−1−122−⋯−1n2=1(n+1)2+1(n+2)2+⋯+1m2
となります。
また、分数において、分母が小さい数の方が大きいので、
1(n+1)2+1(n+2)2+⋯+1m2≤1n(n+1)+1(n+1)(n+2)+⋯+1(m−1)m
となります。
ここで、部分分数分解(口に出して言うと毎回噛む。ぶぶんぶんぶんぶんとか言っちゃう。)を使うと、
1n(n+1)+1(n+1)(n+2)+⋯+1(m−1)m=(1n−1n+1)+(1n+1−1n+2)+⋯+(1m−1−1m)=1n−1m≤1n≤1N<ϵ
となります。
ϵは任意の正の実数だったので、am−an<ϵが成り立ったのだから、amとanは十分近いです。
従って、数列{an}n∈Nはコーシー列です。
ちなみに、この数列はπ26=1.64493406684⋯に収束することはLeonhard Euler(レオンハルト・オイラー)が証明しました。
気になった方は「バーゼル問題」を見てみると良いと思います。
で、コーシー列って?
コーシー列は
という条件を満たす数列のことだと述べました。
これを論理式で表すと次です。
{an}n∈Nを数列とする。このとき、{an}n∈Nがコーシー列であるとは、 (∀ϵ>0)(∃N∈N s.t. ∀m,n∈N m,n≥N⇒|am−an|<ϵ) が成り立つことをいう。

結
今回は、「コーシー列とは何か」ということを明示しつつ、その例を挙げて証明を与えました。
実は、実数の範囲では「ある数列が収束列である。⇒ある数列がコーシー列である。」なのです。
これをコーシーの収束条件と呼ぶこともあります。
少々ネタバラシしておくと、コーシー列は収束する、ということを証明するためにボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理を使います。
次回は「収束列ならばコーシー列である。」ことの証明を与えます。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
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