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「初等関数の微分法②(三角関数、逆三角関数)」【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その6

微分法

本記事の内容

本記事は三角関数、逆三角関数の微分について解説する記事です。

本記事を読むにあたり、微分係数について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。

※随分と更新まで時間が空いてしまいましたが、これから毎日更新します!(2022/6/22)

三角関数の微分

では早速、三角関数の微分について解説します。
とはいえ、高校で数Ⅲを学習した方は「\(\sin\)の微分は\(\cos\)で、\(cos\)の微分は\(-\sin\)で、\(\tan\)の微分は\(\cos\)の2乗分の1だよね」と知っているかもしれません。
ですが、ここでは真面目に証明してみます。

\(\left( \sin x\right)^\prime=\cos x\)

\(\sin\)の微分を示すために、次の極限が必要になります。
次の極限はよく出てくるので、しっかり証明します。

定理1. $$ \lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1 $$

この定理の証明には色々議論が生まれています。
「この極限は\(\sin\)の微分を示すために必要なのに、その証明に\(\sin\)の微分を使ってるじゃないか。」という指摘があったりします(循環論法といったりもします)。
それは、面積を使っているからです。
本来、面積は積分で定められる量ですので、積分をする際に\(\sin\)の微分を使っているというわけです。
これを回避した証明を与えます。

少々言及しておくと、この定理を曲線の長さを使って証明することもできます。
たしかにこの方法だと循環論法を回避することができますが、曲線の長さは積分で定められているため、筆者としては気持ち悪いです。

というのも、「\(\sin x\)の微分を知りたいのに、微分の先の積分を使わなきゃいけないの?」と思うからです。
もちろん、証明としては問題ありませんので、曲線の長さ(積分)を使った証明でもOKです。
ただ、筆者は少々気持ち悪いので、積分を使わずに証明します。

定理1.の証明

\(OA=OB=1\)、\(\angle AOB=x\neq 0\)[rad]、弧\(AB\)は中心を\(O\)とし、点\(A\)と点\(B\)を通る円の弧とします。
また、\(A\)から\(OB\)への垂線と\(OB\)の交点を\(H\)、\(OA\)の\(A\)方向への延長と、\(AH\)と平行な線分の交点を\(C\)とします。
また、\(\displaystyle x\in\left(0,\frac{\pi}{2}\right)\)とします。

このとき、\(AH<弦AB<弧AB<CB\)が成り立ちます。
\(AH<弦AB<弧AB\)という不等式は直ちに分かりますが、\(弧AB<CB\)は直ちには分かりません。
従って、一歩踏み込んだ議論が必要です。

そのために、弧\(AB\)の長さを導入します。

弧の長さ 原点\(O=(0,0)\)を中心とする半径\(1\)の円(単位円)に対して、\(A=(\cos x,\sin x)\)(\(x\in (0,\pi)\))、\(B=(1,0)\)とする。 また、点\(A\)から点\(B\)までの円周上の分点を\(\Delta=\{B=P_0,p_1,\dots,P_n=A\}\)とし、各点の座標を\(P_i=(x_1,y_i)\)とする。 このとき、弧\(AB\)の長さ\(L\)を $$ L=\lim_{\displaystyle\max_{0\leq i\leq n-1}|P_{i+1}-P_i|\to0}\sum_{i=0}^{n-1}|P_{i+1}-P_i| $$ で定める。

さて、\(AH<弦AB<弧AB\)であり、\(AH=\sin x\)、弧\(AB=x\)ですので、\(\sin x<x\)です。
ここで、
$$
l=\sum_{i=0}^{n-1}|P_{i+1}-P_i|
$$
とします。
すると、
\begin{eqnarray}
\sum_{i=0}^{n-1}|P_{i+1}-P_i|&=&\sum_{i=0}^{n-1}\sqrt{(x_{i+1}-x_i)^2+(y_{i+1}-y_i)^2}\\
&\leq&\sum_{i=0}^{n-1}(|x_{i+1}-x_i|+|y_{i+1}-y_i|)
\end{eqnarray}
です。
実際、\(a,b\geq 0\)に対して、\((a+b)^2=a^2+2ab+b^2\)ですので、\(a+b=\sqrt{a^2+2ab+b^2}\geq\sqrt{a^2+b^2}\)だからです。
ここで、\(\displaystyle x\in\left(0,\frac{\pi}{2}\right)\)ですので、\(x_{i+1}<x_i\)かつ\(y_{i+1}-y_i\)ですから、絶対値を外すことができます。
故に、
\begin{eqnarray}
\sum_{i=0}^{n-1}(|x_{i+1}-x_i|+|y_{i+1}-y_i|)&=&\sum_{i=0}^{n-1}(x_{i+1}-x_i+y_{i+1}-y_i)\\
&=&(x_1-x_0)+(x_2-x_1)+\cdots+(x_{n-1}-x_{n-2})+(x_{n}-x_{n-1})\\
&&+(y_1-y_0)+(y_2-y_1)+\cdots+(y_{n-1}-y_{n-2})+(y_{n}-y_{n-1})\\
&=&x_0-x_n+y_n-y_0
\end{eqnarray}
です。
\(P_0=B\)、\(P_n=A\)でしたので、\(x_0-x_n\)は線分\(BH\)の長さ、\(y_n-y_0\)は線分\(AH\)の長さとなります。

今、\(OB=1\)、\(OH=\cos x\)、\(BH=OB-OH\)ですので、\(BH=1-\cos x\)であり、\(AH=\sin x\)です。
従って、
$$
x_0-x_n+y_n-y_0=1-\cos x+\sin x
$$
です。
すなわち、
$$
l=\sum_{i=0}^{n-1}|P_{i+1}-P_i|\leq x_0-x_n+y_n-y_0=1-\cos x+\sin x
$$
ですから、
$$
l\leq1-\cos x+\sin x
$$
を得ます。
この不等式を変形します。

\(0<\cos x< 1\)ですので、\(\cos x>\cos^2 x\)であることに注意すれば、
\begin{eqnarray}
l&\leq& 1-\cos x+\sin x\\
&<&1-\cos^2 x+\sin x\\
&=&\sin^2x+\sin x\\
&=&\sin x(1+\sin x)\\
\end{eqnarray}
が成り立ちます。

ここで、\(l\)に対して、\(\displaystyle\max_{0\leq i\leq n-1}|P_{i+1}-P_i|\to0\)とすれば、\(l\)は弧\(AB\)の長さになります。
すなわち、
$$
\lim_{\displaystyle\max_{0\leq i\leq n-1}|P_{i+1}-P_i|\to0}l=x
$$
です。
故に、
$$
x<\sin x(1+\sin x)
$$
です。
ここで、\(\sin x<x\)だったことを思い出すと、
$$
\sin x<x<\sin x(1+\sin x)
$$
です。
さらに、\(\displaystyle x\in\left(0,\frac{\pi}{2}\right)\)ですので、\(x\neq 0\)により\(\sin x\neq 0\)です。
故に、
$$
1<\frac{x}{\sin x}<1+\sin x
$$
です。
従って、\(x\to 0\)とすれば、はさみうちの原理(【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その15)から、
$$
\lim_{x\to0}\frac{x}{\sin x}=1
$$
です。
故に、
\begin{eqnarray}
1=\frac{1}{\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{x}{\sin x}}=\lim_{x\to0}\frac{1}{\displaystyle\frac{x}{\sin x}}=\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}
\end{eqnarray}
が成り立ちます。

定理1.の証明終わり

では、\(\sin x\)の微分の証明を行います。
定理1.さえ証明してしまえば、簡単です。

\(\sin x\)の微分
任意の\(x\in\mathbb{R}\)に対して $$ (\sin x)^\prime =\cos x $$ である。

証明

「微分係数とは何だったか?」ということと、加法定理を思い出せば一瞬です。

では行きましょう!
加法定理と定理1.を使うと、
\begin{eqnarray}
\left( \sin x\right)^\prime&=&\lim_{h\to0}\frac{\sin (x+h)-\sin x}{h}\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{\sin x\cos h+\cos x\sin h-\sin x}{h}\\
&=&\lim_{h\to0}\left(\frac{\cos h-1}{h}\cdot \sin x+\frac{\sin h}{h}\cdot\cos x\right)\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}\cdot\lim_{h\to0} \sin x+\lim_{h\to0}\frac{\sin h}{h}\cdot\lim_{h\to0}\cos x\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}\cdot \sin x+\lim_{h\to0}\frac{\sin h}{h}\cdot\cos x\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}\cdot \sin x+\cos x\\
\end{eqnarray}
です。
ただし、極限の積は積の極限という性質を使いました(【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その3)。

さて、このとき、\(\displaystyle\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}=0\)だと証明が完了です。
これを証明します。
これにも極限の積は積の極限という性質を使います。
\begin{eqnarray}
\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}&=&\lim_{h\to0}\frac{(\cos h-1)(\cos h+1)}{h(\cos h+1)}\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos^2 h-1}{h(\cos h+1)}\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{-\sin^2 x}{h^2}\cdot h\cdot \frac{1}{\cos h+1}\\
&=&-\lim_{h\to0}\left(\frac{\sin x}{h}\right)^2\cdot \left(\lim_{h\to0}h\right)\cdot \left(\lim_{h\to0}\frac{1}{\cos h+1}\right)\\
&=&-\lim_{h\to0}\left\{\left(\frac{\sin x}{h}\right)\cdot\left(\frac{\sin x}{h}\right)\right\}\cdot \left(\lim_{h\to0}h\right)\cdot \left(\lim_{h\to0}\frac{1}{\cos h+1}\right)\\
&=&-\lim_{h\to0}\left(\frac{\sin x}{h}\right)\cdot\lim_{h\to0}\left(\frac{\sin x}{h}\right)\cdot \left(\lim_{h\to0}h\right)\cdot \left(\lim_{h\to0}\frac{1}{\cos h+1}\right)\\
&=&-1\cdot 1\cdot 0\cdot\frac{1}{2}\\
&=&0
\end{eqnarray}

従って、
\begin{eqnarray}
\left( \sin x\right)^\prime&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}\cdot \sin x+\cos x\\
&=&0\cdot \sin x+\cos x\\
&=&\cos x
\end{eqnarray}
です。

証明終わり

\(\left( \cos x\right)^\prime=-\sin x\)

次に\(\cos\)の微分です。
\(\sin\)の微分のときに導いた極限の事実と、加法定理と、極限の性質を使うことで証明できます。
そういう意味では\(\sin\)のときよりも簡単です。

では行きましょう!

\(\cos x\)の微分
任意の\(x\in\mathbb{R}\)に対して $$ (\cos x)^\prime =-\sin x $$ である。

証明

加法定理を使うと、
\begin{eqnarray}
\left( \cos x\right)^\prime&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos (x+h)-\cos x}{h}\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos x\cos h-\sin x\sin h-\cos x}{h}\\
&=&\lim_{h\to0}\frac{\cos x(\cos h-1)-\sin x\sin h}{h}
\end{eqnarray}
です。
ここで、極限の差は差の極限という性質(【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その3)、極限の積は積の極限という性質(【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その3)を使うと、
\begin{eqnarray}
&&\lim_{h\to0}\frac{\cos x(\cos h-1)-\sin x\sin h}{h}\\&=&\left(\lim_{h\to0}\cos x\right)\cdot\left(\frac{\cos h-1}{h}\right)-\lim_{h\to0}\frac{\sin x\sin h}{h}\\
&=&\left(\lim_{h\to0}\cos x\right)\cdot\left(\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}\right)-\left(\lim_{h\to0}\sin x \right)\cdot\left(\lim_{h\to0}\frac{\sin h}{h}\right)\\
&=&\cos x\cdot\left(\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}\right)-\sin x\cdot\left(\lim_{h\to0}\frac{\sin h}{h}\right)\\
\end{eqnarray}
です。
ここで、定理1.により、\(\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1\)であり、また\(\displaystyle\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}=0\)ですので、
\begin{eqnarray}
\left( \cos x\right)^\prime&=&\cos x\cdot\left(\lim_{h\to0}\frac{\cos h-1}{h}\right)-\sin x\cdot\left(\lim_{h\to0}\frac{\sin h}{h}\right)\\
&=&\cos x\cdot 0-\sin x\cdot1\\
&=&-\sin x
\end{eqnarray}
です。

証明終わり

三角関数の最後は\(\tan\)です。

\(\displaystyle\left( \tan x\right)^\prime=\frac{1}{\cos^2 x}\)

\(tan\)はもっと簡単です。
というもの、\(\displaystyle\tan x=\frac{\sin x}{\cos x}\)ですので、商の微分法(【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その2)を使えば一発です。

では行きましょう!

\(\tan x\)の微分
\(\displaystyle x\neq \frac{n}{2}\pi\)に対して、 $$ (\tan x)^\prime =\frac{1}{\cos^2 x} $$ である。

証明

商の微分法を使います。
商の微分法は何だったか、というと、
$$
\left(\frac{f(x)}{g(x)}\right)^\prime=\frac{f^\prime(x)g(x)-f(x)g^\prime(x)}{\left(g(x)\right)^2}
$$
でした。
商の微分法の証明については、【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その2を御覧ください。

この商の微分法において、\(f(x)=\sin x\)、\(g(x)=\cos x\)とすればOKです。

\begin{eqnarray}
(\tan x)^\prime&=&\left( \frac{\sin x}{\cos x}\right)^\prime\\
&=&\frac{\left(\sin x \right)^\prime\cdot\cos x-\sin x\cdot \left( \cos x\right)^\prime}{\cos^2 x}\\
&=&\frac{\cos x\cdot \cos x-\sin x\cdot (-\sin x)}{\cos^2 x}\\
&=&\frac{\cos^2 x+\sin^2 x}{\cos^2 x}\\
&=&\frac{1}{\cos^2 x}
\end{eqnarray}

証明終わり

逆三角関数の微分

今までは、厳密に証明する、という意味では大学数学の範疇ですが、内容としては高校数学の範囲でした。
ここからは完全に大学数学の範囲になります。
というのも、逆三角関数は大学数学で初めて出現するからです。

「なりやら難しいそうだネ?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
というのも、逆三角関数は三角関数の逆関数で、さらに逆関数の微分法(【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その4)はすでに学習しているからです。

要は、逆関数の微分法でもって\(\arcsin x\)も\(\arccos x\)も\(\arctan x\)も微分係数が求まる、ということです。

チャラくではありますが、逆関数の微分について復習しましょう。
逆関数の微分は以下でした。

逆関数の微分法 \(I,\ J\in\mathbb{R}\)を\(\mathbb{R}\)の開区間、\(\varphi:I\to J\)は全単射、\(\varphi^{-1}:J\to I\)は\(\varphi\)の逆写像(逆関数)とする。このとき、\(\varphi,\ \varphi^{-1}\)がそれぞれ\(I\)、\(J\)で微分可能であれば、次が成り立つ。 $$ (\varphi^{-1})^\prime(y)=\left( \varphi^\prime(x)\right)^{-1}\left(=\frac{1}{\varphi^\prime(x)} \right)\quad (ただし、y=\varphi(x)) $$

証明は【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その4を御覧ください。

この逆関数の微分法を別の記法(高校数学でも出てくる記法)を使えば、
$$
\frac{dx}{dy}=\frac{1}{\displaystyle\frac{dy}{dx}}
$$
ということです。
今回はこちらの記法のほうがわかりやすいと思われますので、こちらを採用します。

では行きましょう!

\(\arcsin x\)の微分

まずは主張を明示します。

\(\arcsin x\)の微分
\(-1\leq x\leq 1\)に対して、 $$ \left(\arcsin x \right)^\prime=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}} $$ が成り立つ。

ちなみに、くどいようですが、\(-1\leq x\leq 1\)なのは、\(x=\sin y\)が全単射であるような範囲でなければ\(\arcsin\)は考えられないからです。
要は、\(y=\arcsin x\)と言われたらば、基本的に定義域は\(-1\leq x\leq 1\)で、終域は\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\leq y\leq \frac{\pi}{2}\)です。
“基本的に”というのは、全単射だったら良いのだから、必ずしも定義域と終域は\(-1\leq x\leq 1\)、\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\leq y\leq \frac{\pi}{2}\)とは限らないからです。

では証明に入ります。

証明

\(y=\arcsin x\)とします。
このとき、\(x=\sin y\)です。
従って、\(\displaystyle\frac{dx}{dy}=\cos y\)です。
今、何を求めたいか、というと\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\)です。
$$
\frac{dx}{dy}=\frac{1}{\displaystyle\frac{dy}{dx}}
$$
ですので、
$$
\frac{1}{\displaystyle\frac{dy}{dx}}=\cos y
$$
です。
故に、
$$
\frac{dy}{dx}=\frac{1}{\cos y}
$$
です。

ここで、\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\leq y\leq \frac{\pi}{2}\)ですので、\(\cos y>0\)です。
従って、
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\cos y}=\frac{1}{\sqrt{1-\sin^2y}}
\end{eqnarray}
です。
さらに、\(y=\arcsin x\)により、\(x=\sin y\)ですので、
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\sqrt{1-\sin^2y}}=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
\end{eqnarray}
となります。
以上のことから、
$$
\left(\arcsin x \right)^\prime=\frac{dy}{dx}=\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
$$
です。

証明終わり

次に\(\arccos\)ですが、\(\arcsin \)とほぼ同じです。

\(\arccos x\)の微分

まずは主張を明示します。

\(\arccos x\)の微分
\(-1\leq x\leq 1\)に対して、 $$ \left(\arccos x \right)^\prime=-\frac{1}{\sqrt{1-x^2}} $$ が成り立つ。

では証明に入ります。

証明

\(y=\arccos x\)とします。
このとき、\(x=\cos y\)です。
従って、\(\displaystyle\frac{dx}{dy}=-\sin y\)です。
今、何を求めたいか、というと\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\)です。
$$
\frac{dx}{dy}=\frac{1}{\displaystyle\frac{dy}{dx}}
$$
ですので、
$$
\frac{1}{\displaystyle\frac{dy}{dx}}=-\sin y
$$
です。
故に、
$$
\frac{dy}{dx}=-\frac{1}{\sin y}
$$
です。

ここで、\(0<y<\pi\)ですので、\(\sin y>0\)です。
従って、
\begin{eqnarray}
-\frac{1}{\sin y}=-\frac{1}{\sqrt{1-\cos^2y}}
\end{eqnarray}
です。
さらに、\(y=\arccos x\)により、\(x=\cos y\)ですので、
\begin{eqnarray}
-\frac{1}{\sqrt{1-\cos^2y}}=-\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
\end{eqnarray}
となります。
以上のことから、
$$
\left(\arccos x \right)^\prime=\frac{dy}{dx}=-\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}
$$
です。

証明終わり

最後に\(\arctan\)ですが、流れは\(\arcsin \)及び\(\arccos\)と同じです。

\(\arctan x\)の微分

まずは主張を明示します。

\(\arctan x\)の微分
任意の\(x\in \mathbb{R}\)に対して、 $$ \left(\arctan x \right)^\prime=\frac{1}{1+x^2} $$ が成り立つ。

では証明に入ります。

証明

\(y=\arctan x\)とします。
このとき、\(x=\tan y\)です。
従って、\(\displaystyle\frac{dx}{dy}=\frac{1}{\cos^2 y}\)です。
今、何を求めたいか、というと\(\displaystyle\frac{dy}{dx}\)です。
$$
\frac{dx}{dy}=\frac{1}{\displaystyle\frac{dy}{dx}}
$$
ですので、
$$
\frac{1}{\displaystyle\frac{dy}{dx}}=\cos^2y
$$
です。
故に、
$$
\frac{dy}{dx}=-\frac{1}{\cos^2 y}
$$
です。

ここで、\(\displaystyle\cos^2A=\frac{1}{1+\tan^2A}\)ですので、
\begin{eqnarray}
\cos^2y=\frac{1}{1+\tan^2y}
\end{eqnarray}
です。
さらに、\(y=\arctan x\)により、\(x=\tan y\)ですので、
\begin{eqnarray}
\frac{1}{1+\tan^2y}=\frac{1}{1+x^2}
\end{eqnarray}
となります。
以上のことから、
$$
\left(\arctan x \right)^\prime=\frac{dy}{dx}=\frac{1}{1+x^2}
$$
です。

証明終わり

今回は、三角関数、逆三角関数の微分について解説しました。
三角関数の微分についてはすでに高校数学で学習している内容ですが、しっかり証明しようとすると、\(\displaystyle\frac{\sin x}{x}\)の極限やらと骨が折れます。

逆三角関数の微分については逆関数の微分法により直ちに求まります。
特に逆三角関数の微分は比較的シンプルな導出ですので、覚えずに導出できるようにしておくと良いかもしれません。

次回はロルの定理のイメージとその証明を行います。

乞うご期待!
質問、コメントなどお待ちしております!

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