本記事の内容
本記事は、シローの定理の応用として、例題を解いてみる記事です。
本記事を読むに当たり、シローの定理について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。
前回までの軽い復習
シローの定理の復習
シローの定理とは以下でした。
定理0.(シローの定理)
GGを有限群、n=|G|n=|G|、ppをnnの素因数とし、pa (a>0)pa (a>0)をnnを割り切るppの最大のベキとする(すなわち、n=pamn=pamでmmとppは互いに素である)。このとき、次の1.から4.が成り立つ。- |H|=pa|H|=paとなるようなGGの部分群HHが存在する。このような部分群HHをシローpp部分群という。
- シローpp部分群を一つ固定する。部分群K⊂GK⊂Gに対して|K||K|がppベキならば、K⊂gHg−1K⊂gHg−1となるg∈Gg∈Gが存在する。特に、KKを含むGGのシローpp部分群が存在する。
- GGの全てのシローpp部分群は共役である。
- シローpp部分群の数ssは s=|G||NG(H)|≡1 (mod p )s=|G||NG(H)|≡1 (mod p ) という条件を満たす。
シローの定理の証明は【代数学の基礎シリーズ】群論編 その27を御覧ください。
記号の復習
同型
同型
群G1G1、G2の間に同型写像が存在するとき、それらは同型(isomorphic)と呼ばれ、このときG1≅G2と書く。正規化(部分)群
正規化(部分)群
Hを群Gの部分群とする。 NG(H)={g∈G|gHg−1=H} と定め、このNG(H)をHの正規化(部分)群という。共役、共役類
共役、共役類
群Gの要素x,yに対して、あるg∈Gが存在して、y=gxg−1となるとき、xとyは共役であるという。xと共役である要素の集合をxの共役類といい、C(x)と書く。指数
指数
Hが群Gの部分群であるとする。このときG/H、H∖Gの要素の個数を(G:H)と書き、HのGにおける指数という。中国式剰余定理
中国(式)剰余定理という有名な定理を紹介します。
中国式剰余定理を一言で。
中国式剰余定理を一言で述べれば、
という定理です。
主張の明示と証明
定理1.(中国式剰余定理)
m,n≠0が互いに素な整数ならば、 Z/mnZ≅Z/mZ×Z/nZ である。中国式剰余定理の証明
Z/mnZからZ/mZ×Z/nZへの写像φを
φ(x+mnZ)=(x+mZ,x+nZ)
と定めます。
まずはφがwell-definedであるかを見てみます。
y∈x+mnZであれば、a∈Zによりy=x+mnaとなります。
故に、y∈x+mZかつy∈x+nZであり、
y+mZ=x+mZ,y+nZ=x+nZ
となります。
故にφはwell-definedです。
また、φは準同型です。
φが全射であることを示します。
m,nは互いに素なので、s,tを変数とする一次不定方程式ms+nt=1は整数解(s,t)=(a,b)を持ちます。
x,y∈Zに対して、z=may+nbxとすると、
z=may+(1−ma)x=x+ma(y−x)=(1−nb)y+nbx=y+nb(x−y)
となるので、z+mZ=x+mZ、z+nZ=y+nZ、つまり
φ(z+mnZ)=(x+mZ,y+nZ)
です。
したがって、φは全射です。
|Z/mnZ|=|Z/mZ×Z/mZ|=mn
なので、φは要素の個数が等しい集合の全射です。
故に、φは全単射ですので、同型写像です。
中国式剰余定理の証明終わり
シローの定理の例題「位数が15の有限群は、Z/15Zと同型」
主張の明示
主張を明示します。
Gが位数15の有限群ならば、G≅Z/15Zである。
証明する前に(直感的に成り立ちそうですか?)
この例題1.を証明する前に「直感的に成り立ちそうか?」ということをちょこっと考えてみます。
Gは位数15の有限群ですので、|G|=15、すなわちGの要素の個数が15個ということです。
一方で、商群Z/15Zは
Z/15Z={ˉ0,ˉ1,…,¯14}
です。
ただし、ˉk (0≤k≤14)は剰余類です(平たく言えば、15で割ったときの余りがkであるような整数の集合)。
故に、|Z/15Z|=15です。
つまり、GとZ/15Zの要素の数が同じで、双方とも群なので、全単射準同型、すなわち同型写像が存在しそうだな、となるわけです。
この発想からすれば、「シローの定理を使わなそうだなあ」と思うかもしれませんが、シローの定理の使い方を見るという意味で良い問題だと思います。
例題の証明
H,KをそれぞれGのシロー3部分群、シロー5部分群とします。
|H|=3、|K|=5は素数なので、H≅Z/3Z、K≅Z/5Zです。
シロー3部分群の数をs、シロー5部分群の数をtとすると、
s≡1 (mod 3),t≡1 (mod 5)
です。
H⊂NG(H)、K⊂NG(K)なので、(G:NG(H))、(G:NG(K))はそれぞれ(G:H)=5、(G:K)=3の約数です。
これらは素数なので、s,tの可能性はそれぞれ1,5および1,3です。
5≢1 (mod 3)、3≢ (mod 5)なので、s=t−1です。
よって、H、Kの共役はH、Kのみです。
これはH◃GかつK◃Gを意味しています。
|H∩K|は|H|=3、|K|=5の約数なので1です。
よって、H∩K={1G}です。
ここで、次の事実を使います。
定理2.(第二同型定理)
H,Nを群Gの部分群でN◃G、すなわちNはGの正規部分群とする。このとき、以下の2つが成り立つ。- HNはGの部分群である。また、HN=NHである。 ただし、 HN={hn|h∈H, n∈N} である。
- H∩N◃H、HN/N≅H/H∩Nである。

定理2.の証明は【代数学の基礎シリーズ】群論編 その7を御覧ください。
H,K◃Gなので、定理2.の1.からHK⊂Gは部分群です。
HK⊃H,Kなので、|HK|は3と5の公倍数です。
|HK|≤15なので、HK=Gとなります。
ここで、次の事実を使います。
命題3.
Gが群、H,K⊂Gが正規部分群でH∩K={1G}、HK=Gとする。このとき、Gは直積H×Kと同型である。命題3.の証明
H×KからGへの写像φをφ(h,k)=hkと定めます。
仮定からこれは全射です。
h∈H、k∈Kとします。
hkh−1k−1=(hkh−1)k−1ですが、K◃Gなので、hkh−1∈Kです。
故に、hkh−1k−1∈Kです。
また、hkh−1k−1=h(kh−1k−1)なので、同様の理由からhkh−1k−1∈Hです。
故に、hkh−1k−1∈H∩K={1G}です。
これにより、hkh−1k−1=1Gとなります。
したがって、hk−khです。
φ(h,k)φ(h′,k′)=hkh′k′=hh′kk′=φ(hh′,kk′)
であるので、φは準同型です。
(h,k)∈Ker(φ)ならば、hk=1Gです。
故に、h=k−1∈H∩K={1G}です。
したがって、h=k=1Gとなります。
これは、Ker(φ)={1G}であることを意味しています。
Ker(φ)={1G}であることとφが単射であることは同値なので(詳しくは【代数学の基礎シリーズ】群論編 その3を御覧ください)、φは単射となり、同型写像です。
命題3.の証明終わり
命題3.から
G≅H×K≅Z/3Z×Z/5Z
です。
また、中国式剰余定理からG≅Z/15Zです。
故に、証明完了です。
皆様のコメントを下さい!
今回と次回で「黄金比」について少々語ろうと思います。
縦がa、横がbの長方形を考えます。
b>aとしましょう。
この長方形から左詰めで辺の長さaの正方形を取り除いたときにできる小長方形(縦がa、横がb−a)が元の長方形と相似だとします。

このとき、a:b=(b−a):aだから、a2=b(b−a)、つまり
1=(ba)2−ba
です。
x=baとすると、x2−x−1=0だから、これを解いて
x(=ba)=1+√52
です。
これを黄金比(golden ratio)といいます。
黄金比の連分数展開は
1+√52=1+11+11+11+1⋯
というように1が無限に出現します。
黄金比は正五角形の中にも隠れています。
図のように正五角形に対角線を引きます。

一辺の長さを1(AB=1)、対角線の長さをx(BE=x)とします。
△BEFと△CDFは相似だから、
BE:CD=EF:CF
です。
故に、x:1=1:(x−1)であり、x2−x−1=0です。
すなわち、BE:CDは黄金比となっているわけです。
正五角形の対角線から成る星型の図形は五芒星(ごぼうせい、英:pentagram)と呼ばれ、ピタゴラス学派のシンボルでしたが、すでに紀元前3000年頃のメソポタミアの書物の中で言及されています。
五芒星と似たものに「ダビデの星」というユダヤ教、あるいはユダヤ民族を象徴する印があります。
これは2つの正三角形を逆に重ねて得られるもので、六芒星(ヘキサグラム)と言われる形をしており、イスラエルの国旗にも描かれています。

次回は「とある数列」に黄金比が隠されていることを紹介します。
黄金比について「これ、知ってる?」ということがあれば是非コメントで教えて下さい!
結
今回は、中国式剰余定理の解説と、それを用いてシローの定理の応用として例題を解いてみました。
中国式剰余定理も実は誠に重要な定理で、ある種商群に素因数分解のようなことができるという定理です。
シローの定理の応用は有限群であれば位数によっては商群と同型になる、つまりより考えやすい群と全単射準同型が存在するということについて述べました。
次回は生成元と関係式という概念について解説します。
乞うご期待!
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代数についてより詳しく知りたい方は以下を参考にすると良いと思います!
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