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1の原始n乗根を係数とする多項式

代数学

本記事の内容

本記事は\(1\)の\(n\)乗根を係数とする多項式について解説する記事です。

本記事を読むに当たり、オイラーの\(\varphi\)関数及びメビウスの反転公式について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。

↓オイラーの\(\varphi\)関数の記事

↓メビウスの反転公式の記事

原始\(n\)乗根

\(1\)の\(n\)乗根は\(x^n=1\)を満たす\(x\)を指します。
これは幾何的(というより図形的)には、単位円を\(n\)等分する点です。

なぜちょうど\(n\)個なのか?

\(x^n=1\)を満たす\(x\)は単位円を\(n\)等分する点だと述べました。
「ちょうど\(n\)個なの?」と思うかもしれませんが、それは大数学者ガウスが証明した代数学の基本定理が成り立っているからです。

代数学の基本定理(※証明はしません)

複素係数の\(n\)次方程式 $$ x^n+a_{n-1}x^n+a_{n-2}x^{n-2}+\cdots+a_1x+a_0=0\quad a_0,a_1,\cdots,a_{n-1}\in\mathbb{C} $$ は必ず複素数に根を持つ。

\(x^n=1\)は\(x^n-1=0\)と書き換える事ができます。
代数学の基本定理において、\(a_1=-1\)、\(a_2=a_3=\cdots=a_{n-1}=0\)とした場合が\(x^n-1=0\)です。
故に、たしかに\(n\)個の解、すなわち\(n\)個の点が存在しているわけです。

原始\(n\)乗根

方程式\(x^n-1=0\)の根(解)は\(n\)個ある、という話をしましたが、それらは具体的に
$$
x=cos\theta+i\sin\theta\quad \left( \theta=\frac{2k\pi}{n},\ k=0,1,2,\cdots,n-1\right)\tag{1}
$$
という形をしています(確かに\(n\)個)。

しかしながら、\(\sin\)と\(\cos\)は周期関数ですので、
$$
\theta=\frac{2k\pi}{n},\quad \theta^\prime=\frac{2k^\prime\pi}{n}
$$
に対応する\(n\)乗根は\(\theta-\theta^\prime\)が\(2\pi\)の倍数、すなわち\(k-k^\prime\)が\(n\)の倍数であるときに限って等しくなります。

つまり、\(k-k^\prime\equiv 0\ ({\rm mod}\ n)\)のときに限って等しい、ということになります。

故に\(1\)の\(n\)乗根をすべて得るためには、(1)において\(k\)に代入すべき値としては\(n\)を法としての一つの剰余系ということになるのです。

(1)において、\(\gcd(k,n)=1\)のときには、\(\displaystyle\frac{2k\pi}{n}\)は\(n\)倍して初めて\(2\pi\)の倍数になるわけですから
$$
\cos\frac{2k\pi}{n}+i\sin\frac{2k\pi}{n}
$$
は\(n\)乗して初めて\(1\)になります。
これらを\(1\)の原始\(n\)乗根と呼びます。

もし、仮に\(\gcd(k,n)=d(>1)\)出会った場合、\(n=dn^\prime\)、\(k=dk^\prime\)とすれば、
$$
\frac{2k\pi}{n}=\frac{2k^\prime\pi}{n}
$$
であるから、
$$
\cos\frac{2k\pi}{n}+i\sin\frac{2k\pi}{n}
$$
は\(n^\prime\)乗で\(1\)となります。
すなわち、\(1\)の\(n^\prime\)乗根です。

\(1\)の原始\(n\)乗根のみを根とする多項式

“うまく”やると、\(1\)の原始\(n\)乗根のみを根とするような多項式を作ることができます。

主張の明示とその証明

定理1.

\(n\)の素因数分解を\(n=p_1^{a_1}p_2^{a_2}\cdots p_k^{a_k}\)とし、 \begin{eqnarray} F_n(x)&=&\frac{(x^n-1)\left( x^{\frac{n}{p_1p_2}}-1\right)\left( x^{\frac{n}{p_1p_3}}-1\right)\cdots\left( x^{\frac{n}{p_2p_3}}-1\right)\cdots}{ \left( x^{\frac{n}{p_1}}-1\right)\left(x^{\frac{n}{p_2}}-1\right)\left(x^{\frac{n}{p_3}}-1\right)\cdots \left(x^{\frac{n}{p_1p_2p_3}-1} \right)\cdots}\tag{2}\\ &=&\prod_{d\mid n}\left( x^\frac{n}{d}-1\right)^{\mu(d)} \end{eqnarray} とすれば、\(F_n(x)\)は\(1\)の原始\(n\)乗根のみを根とする多項式である。ただし、\(\mu\)はメビウス関数であるとする。

定理1.の証明

\(1\)の原始\(n\)乗根のみを根とする方程式を\(F_n(x)=0\)として、その最高次数の項の係数を\(1\)とします。
その他の\(n\)乗根は\(n\)乗根は、\(n\)のとある約数\(d(\neq n)\)を次数とする原始\(d\)乗根です。
また\(d\)乗根は元々、\(n\)乗根の中に含まれているわけですから、
$$
\prod_{d\mid n}F_d(x)=x^n-1
$$
です。

ここで、メビウスの反転公式(に少々手を入れたもの)を使います。

定理2.(メビウスの反転公式)

\(f(n)\)を乗法的関数(※後述)とする。\(\displaystyle F(n)=\sum_{d\mid n}f(d)\)で定めれば、 $$ f(n)=\sum_{d\mid n}\mu(d)F\left( \frac{n}{d}\right)=\sum_{d\mid n}\mu\left( \frac{n}{d}\right)F(d) $$ である。

定理2.(メビウスの反転公式)の証明は【代数学の基礎シリーズ】初等整数論編 その20を御覧ください。

メビウスの反転公式における\(f\)を\(F_n(x)\)、\(F\)を\(x^n-1\)として、また、和のかわりに積を取ります(この意味で”少々手を入れたもの”です)。
故に、\(\displaystyle\mu\left( \frac{n}{d}\right)\)を係数するかわりに指数とすれば、
$$
F_n(x)=\prod_{d\mid n}\left( x^\frac{n}{d}-1\right)^{\mu(d)}
$$
が成り立ちます。
これを書き直せば(2)が成り立ちます。

この他に、\(\log\)を使うやり方もあります。
\(\log\)を用いれば、
$$
\sum_{d\mid n}\log F_d(x)=\log\left( x^n-1\right)
$$
から、メビウスの反転公式から
$$
\log F_n(x)=\sum_{d\mid n}\mu(d)\log\left( x^\frac{n}{d}-1\right)
$$
となり、したがって
$$
F_n(x)=\prod_{d\mid n}\left( x^\frac{n}{d}-1\right)^{\mu(d)}
$$
となります。

さて、\(F_n(x)\)の次数は\(\varphi(n)\)で、その係数は(2)を見ると整数だということが分かります。
というのも、(2)の分子と分母における積を展開して、割り算を行えば、最高項の係数が\(1\)だから、割り算に関して商の係数に分数が出てくることはありません。

定理1.の証明終わり

例えば、
$$
F_{12}(x)=\frac{\left( x^{12}-1\right)\left( x^2-1\right)}{
\left( x^6-1\right)\left(x^4-1 \right)}=\frac{x^6+1}{x^2+1}=x^4-x^3+1
$$
です。

もし仮に、\(n\)が素数\(p\)であるならば、
\begin{eqnarray}
F_p(x)&=&x^{p-1}+x^{p-2}+\cdots+x+1,\\
F_{p^e}(x)&=&x^{p^{e-1}(p-1)}+x^{p^{e-1}(p-2)}+\cdots+x^{p^e-1}+1
\end{eqnarray}
です。

皆様のコメントをください!

最近、朝活なるものをやっている人に出会いました。
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皆さんは、何か「朝早めに起きてやること」はありますか?
また、朝早くスッキリ起きれる方法をぜひ教えてください!(切実)

今回は、メビウス関数の応用例として\(1\)の\(n\)乗根のうち、原始\(n\)乗根のみを根に持つ多項式の存在について解説しました。

メビウス関数は誠にシンプルなコンセプトでありながら、幅が広い概念でもあります。
その一例が今回の内容です。

次回はフェルマーの小定理について解説します。

乞うご期待!
質問、コメントなどお待ちしております!
どんな些細なことでも構いませんし、「定理〇〇の△△が分からない!」などいただければお答えします!

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  1. 例のF12の途中の計算式の分母はx^2+1ではないでしょうか?

    • 名無し様

      コメントありがとうございます。
      >例のF12の途中の計算式の分母はx^2+1ではないでしょうか?
      とのご指摘でございますが、おっしゃる通りでございます。

      誤植でございましたので、訂正いたしました。
      ご指摘ありがとうございました。

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