本記事の内容
本記事は交換子と交換子群について解説する記事です。
本記事を読むに当たり、正規部分群、準同型写像について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。
↓正規化部分群の記事
↓準同型写像の記事
交換子群と可解群は何に使うんですか?
交換子群と可解群を導入する意味を述べておきます。
交換子群と可解群を導入するのは、後に解説する方程式の可解性に関連してくるからです。
今回から数回にわたり、方程式の可解性に対応する可解群の概念、およベキ零群の諸概念について解説します。
交換子群
まずは、交換子について解説します。
「交換子」を一言で。
交換子というものを一言で述べれば、
です。
「どういうこと?」と思われるかも知れませんが、それについては交換子群を数学的に説明した後に述べます。
交換子の数学的な説明
では、交換子とは一体何者なのか、ということについて解説します。
交換子
Gを群とする。a,b∈Gに対して、[a,b]=aba−1b−1と定め、これをa,bの交換子という。交換子によって生成される群
交換子によって生成される群を交換子群といいます。
本当に群になるの?という話ですが、そりゃ生成される群と言っているんだから群でしょ」という感じではあるものの、一旦正直に見てみます。
実際、交換子xyx−1y−1とzwz−1w−1に対して、
(xyx−1y−1)(zwz−1w−1)(xyx−1y−1)−1(zwz−1w−1)−1=xyx−1y−1zwz−1w−1yxy−1x−1wzw−1z−1
であるから、xyx−1y−1=α、zwz−1w−1=βとすると、αβα−1β−1と書けます。
そして、任意の要素xと単位元1Gとの交換子はx1Gx−11−1G=xx−1=1Gとなるため、1Gは交換子群の要素です。
また、xyx−1y−1の逆元はyxy−1x−1ですが、これも確かに交換子群の要素です。
交換子群の数学的な説明
交換子群
Gを群とする。H1,H2⊂Gが部分群ならば、{[a,b]|a∈H1, b∈H2}で生成されるGの部分群を[H1,H2]と書く。D(G)=[G,G] をGの交換子群という。
どうして交換子が「可換性を図る指標」なの?
なぜかというと、以下が成り立つからです。
命題1.
群Gが可換群であることと、D(G)={1G}であることは同値。命題1.の証明
Gが可換群であれば、任意のx,y∈Gに対して、xyx−1y−1=xyy−1x−1=1Gとなります。
故に、D(G)={1G}です。
逆に、D(G)={1G}であれば、任意のx,y∈Gに対してxyx−1y−1=1Gなので、
xyx−1y−1=1G⟺xyx−1y−1y=y⟺xyx−1=y⟺xyx−1x=yx⟺xy=yx
となり、Gは可換群です。
命題1.の証明終わり
交換子群の性質
命題2.
- [G,G]◃Gであり、G/[G,G]は可換群である。
- N◃Gであり、G/Nが可換群ならば、[G,G]⊂Nである。
命題2.の証明
(1.の証明)
a,b,g∈Gならば、
g[a,b]g−1=gag−1gbg−1(gag−1)−1(gbg−1)−1=[gag−1,gbg−1]
であるので、交換子の集合はGの要素による共役で不変です。
g−1でも同様です。
ここで、以下の事実を使います。
定理3.(正規部分群の判定法)
Nは群Gの部分群で、G、Nはそれぞれ部分集合S、Tで生成されているとする。このとき、任意のx∈S、任意のy∈Tに対してxyx−1∈Nかつx−1yx∈Nならば、Nは正規部分群である。もしGが有限群、すなわち群Gの要素の数が有限個の場合は、条件xyx−1∈Nだけで十分である。定理3.の証明は【代数学の基礎シリーズ】群論編 その2を御覧ください。
定理3.から、[G,G]はGの正規部分群です。
次に可換性です。
π:F⟶G/[G,G]を自然な準同型写像とします。
a,b∈Gであれば、aba−1b−1∈[G,G]であるので、π(a)π(b)π(a)−1π(b)−1は単位元です。
したがって、π(a)π(b)=π(b)π(a)です。
πが前者であることから、G/[G,G]は可換群です。
(2.の証明)
φ:G⟶G/Nを自然な準同型写像とします。
a,b∈Gであれば、φ([a,b])=[φ(a),φ(b)]となりますが、G/Nが可換群なので、φ([a,b])=1G/Nです。
故に、[a,b]∈Ker(φ)=Nとなります。
[G,G]は[a,b]という形の要素で生成されるので、[G,G]⊂Nです。
命題2.の証明終わり
皆様のコメントを下さい!
今回は、数学者ではありませんが、グラフ理論編で出現したレオンチェフです。
レオンチェフは1905年8月5日にドイツのミュンヘンで生まれました。
幼少期から青年期にかけてソビエト連邦のレニングラード (現ロシアのサンクト・ペテルブルグ)で暮らし、15歳でレニングラード大学に入学(1921年)、経済学の修士号を19歳で獲得(1924年)。
大学の自治、言論の自由を唱えるPitirim Sorokinの考えに賛同し、その結果、KGBの前身である Chekaによって数度拘束されました。
1925年、彼が不治の病(sarcoma)に掛かっていると信じたChekaは国外に出ることを許可(実際には診断には間違いがあったことが後で判明。
ベルリン大学で研究を続け、1926年に論文“Circular Flows in Economics”により経済学の博士号を得ました。
1927年から1930年にかけて、キール大学の世界経済研究所に勤め、“the derivation of statistical demand and supply curves”の研究を行いました。
1929年には中国に行き、鉄道省アドバイザーとなります。
1931年、米国に渡り、National Bureau of Economic Researchに雇用されました。
第二次世界大戦の間は、Office of Strategic Servicesのコンサルタントになっています。
1932年に、ハーバード大学に職を得て、1946年に経済学の教授になりました。
1949年頃には、米国経済を500の部門に分けたモデルを作り、それから得られる線型連立方程式を解くのに、ハーバードにあったまだ初期段階のコンピュータを使いました。
これは、数理モデルのためにコンピュータを利用した最初の重要な例の1つです。
1948 年にHarvard Economic Research Projectを立ち上げ、1973年までその所長を務めました。1965 年からは、Harvard Society of Fellowsの会長になりました。
1973年、その業績(投入産出分析の発展と、重要な経済問題に対する投入産出分析の応用)によりノーベル経済学賞を受賞しました。
如何でしたか?
今回は数学者ではありませんが、数学の世界でも登場する経済学者の人生を小計してみました。
レオンチェフについてここに書かれれいることの他にご存知のことがあれば、是非コメントで教えて下さい!
結
今回は、交換子と交換子群について解説しました。
交換子は、群が可換性からどれほど離れているかを測る指標になるもので、それから生成される群が交換子群です。
交換子群は次回解説する可解群とともに方程式の可解性に関与しています。
次回は可解群とベキ零群について解説します。
乞うご期待!
質問、コメントなどお待ちしております!
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代数についてより詳しく知りたい方は以下を参考にすると良いと思います!
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交換子の定義に誤植があるように思います。{}の中のa∈H1の所と、「生成」という字です。
また、命題2の2の証明の出力が一部うまく行っておらず、コードのままになっています。
ご確認のほどよろしくお願いします。
みずき様
ご指摘ありがとうございます。
誤植でございました。訂正いたしました。
記事を読んで疑問がいくつか生まれたので、お聞きしたいです。
1. 「交換子群は本当に群になるの?」という箇所の説明についてです。交換子群は交換子の集合から生成されるものだと思うのですが、ある集合から生成される群が群なのは当たり前な気がするので、この部分の説明がよくわかりませんでした…。
2. 「交換子群の性質」の命題2の1.の証明で、G/[G,G]が可換群であることが結局証明されずに終わっているように見えるのが気になります。
名無し様
コメントありがとうございます。
>1. 「交換子群は本当に群になるの?」という箇所の説明についてです。交換子群は交換子の集合から生成されるものだと思うのですが、ある集合から生成される群が群なのは当たり前な気がするので、この部分の説明がよくわかりませんでした…。
>2. 「交換子群の性質」の命題2の1.の証明で、G/[G,G]が可換群であることが結局証明されずに終わっているように見えるのが気になります。
とのお問い合わせについてお答えいたします。
1. おっしゃるとおり、ある種当たり前でございます。「正直に群であることを確かめてみると群であるイメージが湧きやすいかな」と思ったので入れています。ただ、誤解を誘うような表現でございましたので、訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。
2. ご指摘ありがとうございます。確かに抜け落ちておりました。可換性の証明を追記いたしました。