本記事の内容
本記事は、積分の区間に関する加法性について解説する記事です。
本記事を読むにあたり、ダルブーの定理について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。
積分の区間に関する加法性って?
内容自体は大したことはありません。
1次元の場合は高校数学で出てきています。
要するに、今回は
$$
\int_a^b f(x)\ dx=\int_a^c f(x)\ dx+\int_c^b f(x)\ dx
$$
が1次元だけでなく\(n\)次元でも成り立つ、ということを解説します。
主張の明示とその証明
定理1.(区間に関する加法性)
\(\Delta\)を\(\mathbb{R}^n\)の有界閉集合\(I\)の任意の分割とし、\(f\)を\(I\)上の有界な関数とする。\(f\)が\(I\)上で可積分ならば、全ての\(k\in K(\Delta)\)に対し、\(f\)は\(I_k\)上で可積分で $$ \int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\sum_{k\in K(\Delta)}\int_{I_k}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\cdots① $$ が成り立つ。逆に、\(f\)が全ての\(I_k\ (k\in K(\Delta))\)上で可積分ならば、\(f\)は\(I\)上で可積分で①が成り立つ。\(I\)が\(\mathbb{R}\)の区間であって、\(I=I_1\cup I_2\)、\(I_1\cap I_2=\{c\}\)であったときにはまさに先程の
$$
\int_a^b f(x)\ dx=\int_a^c f(x)\ dx+\int_c^b f(x)\ dx
$$
を指しています。
定理1.の証明
今、\(\Delta\)の細分である分割\(D\)によって、\(\Delta\)の小区間\(I_k\ (k\in K(\Delta))\)の分割\(D_k\)が得られたとすると、\(D\)に関する\(f\)の\(I\)上の不足和\(s_D=s_D(f,I)\)に対して、
$$
s_D(f,I)=\sum_{k\in K(\Delta)}s_{D_k}(f,I_k)
$$
が成り立ちます。
ここで、\(d(D)\to0\)とすると、全ての\(k\in K(\Delta)\)に対して、\(d(D_k)\to0\)でもあります。
ここで、ダルブーの定理を使います。
定理2.(ダルブーの定理)
\(I\)を\(\mathbb{R}^n\)の閉区間とする。このとき、任意の有界な実数値関数\(f:I\to\mathbb{R}\)に対して常に $$ \lim_{d(\Delta)\to0}s_\Delta=s,\quad \lim_{d(\Delta)\to0}S_\Delta=S $$ が成り立つ。定理2.(ダルブーの定理)の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その3を御覧ください。
定理2.(ダルブーの定理)から、下積分について
$$
\underline{\int_I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\sum_{k\in K(\Delta)}\underline{\int_{I_k}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\cdots②
$$
が成り立ちます。
同様にして上積分についても
$$
\overline{\int_I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\sum_{k\in K(\Delta)}\overline{\int_{I_k}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\cdots③
$$
が成り立ちます。
ここで、以下の可積分条件を使います。
定理0.(可積分条件)
\(I\)を\(\mathbb{R}^n\)の有界閉集合とするとき、\(I\)上の有界な実数値関数\(f:I\to \mathbb{R}\)に対して、次の1.~5.は同値である。- \(f\)は\(I\)上で(リーマン)可積分である。
- \(\displaystyle\lim_{d(\Delta)\to0}\left( S_\Delta-s_\Delta\right)=0\)
- リーマンの可積分条件 小区間\(I_k\ (k\in K(\Delta))\)上の\(f\)の振幅\(a(f,I_k)=M_k-m_k\)に対して、 $$ \lim_{d(\Delta)\to0}\sum_{k\in K(\Delta)}a(f,I_k)v(I_k)=0 $$ である。
- ダルブーの可積分条件 \(S=s\)、すなわち、 $$ \underline{\int_I} f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\overline{\int_I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x} $$ である。
- 任意の\(\varepsilon>0\)に対して、\(S_\Delta-s_\Delta<\varepsilon\)となる\(I\)の分割\(\Delta\)が存在する。
定理0.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その4および【解析学の基礎シリーズ】積分編 その5を御覧ください。
今、\(f\)が\(I\)上で可積分だから、定理0.の4.が成り立ち、
$$
\underline{\int_I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\overline{\int_I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}
$$
です。
一方で、任意の\(k\in K(\Delta)\)に対して
$$
\underline{\int_{I_k}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\leq\overline{\int_{I_k}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}
$$
が成り立っているので、この不等号は全て等号でなければなりません。
そこで、\(f\)は各\(I_k\ (k\in K(\Delta))\)上で可積分で①が成り立ちます。
逆に、\(f\)が各\(I_k\)で可積分ならば、任意の\(k\in K(\Delta)\)に対して、
$$
\underline{\int_{I_k}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\overline{\int_{I_k}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}
$$
が成り立つから、②と③により
$$
\underline{\int_{I}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\overline{\int_{I}}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}
$$
となり、\(f\)は\(I\)上で可積分です。
定理1.の証明終わり
積分の区間に関する加法性の系
定理1.の系を1つ解説します。
直感的には「当たり前でしょ」ということです。
一言でいうと、
という主張です。
系3.
\(f\)が有界閉集合\(I\)上で可積分ならば、\(J\subset I\)となる任意の閉集合\(J\)上で\(f\)は可積分である。系3.の証明
簡単です。
ある\(k\in K(\Delta)\)に対して、\(I_k=J\)となるような\(I\)の分割\(\Delta\)を1つ取ります。
この分割に対して定理1.を適用させればOKです。
系3.の証明終わり
定理1.を確かめてみます。
例4. \(I=[0,2]\)、\(f:I\to\mathbb{R}\)を\(f(x)=x\)で定めます。
これは以前に証明したように\(f\)は\(I\)上で可積分で、
$$
\int_If(x)\ dx=\int_0^2x\ dx=\left[ \frac{1}{2}x^2\right]_0^2=\frac{1}{2}(4-0)=2
$$
です。
ここで、\(I=[0,1]\cup[1,2]\)として、各区間について積分を計算してみます。
\begin{eqnarray}
&&\int_0^1x\ dx=\left[ \frac{1}{2}x^2\right]_0^1=\frac{1}{2}(1-0)=\frac{1}{2}\\
&&\int_1^2x\ dx=\left[ \frac{1}{2}x^2\right]_1^2=\frac{1}{2}(4-1)=\frac{3}{2}
\end{eqnarray}
となるので、
$$
\int_0^1x\ dx+\int_1^2x\ dx=\frac{1}{2}+\frac{3}{2}=2
$$
となり、確かに一致します。
皆様のコメントを下さい!
数学ばかりやっていると、頭が混乱することはありませんか?
数学だけに限らず、息抜きというものは必要だと思います。
筆者は博士後期課程に進学していますが、そこで得た数学者と数学をやっている人の特徴を紹介します(勿論、筆者の周りではという話ですが)。
数学者の方は、よくコーヒーを飲む印象があります。
さらに、そのコーヒーの量がえらく多いです。
「胃が痛くならないのかな?」と思うくらいです。
筆者はコーヒーよりも紅茶派なので、コーヒーはあまり飲みませんが。
さらに、お酒の量も尋常じゃありません。
めちゃめちゃ飲みます。
数学をやっている方全員じゃないにしろ、趣味が「お酒を嗜むこと」という方は多い印象があります。
皆様は数学をやっている人にどういう印象がありますか?
コメントで教えて下さい!
結
今回は、積分の区間に関する加法性について解説しました。
既に高校数学で学んでいたことが\(n\)次元でも成り立つよ、ということを解説しました。
次回はベクトル値関数の積分を解説します。
乞うご期待!
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