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【挑戦】(数セミ)エレガントな解答をもとむを解く㉗

1時間チャレンジ

本記事の内容

本記事は『数学セミナー』(日本評論社)に掲載されている”エレガントな解答をもとむ”に出題されいている問題を1時間で解けるか、という挑戦をする記事です。

本記事を読むにあたり、前提知識は基本的に必要ありませんが、以前紹介した記事の内容を使う場合はその旨を記述することにします。

今回も「エレガントな解答をもとむ selections」に掲載されいている問題です。

前回の問題については以下の記事を御覧ください!

問題を明示します。

古典的な累乗和の問題です。便宜上
$$
S_k(n)=\sum_{r=0}^{n-1}r^k
$$
とおきます。ただし\(0^0=1\)と約束しますので、
\begin{eqnarray}
&&S_{-1}(n)=0\quad(と定義)\\
&&S_{0}(n)=n\quad(0^0=1に注意)\\
&&S_{1}(n)=\frac{1}{2}n^2-\frac{1}{2}n\\
&&S_{2}(n)=\frac{1}{3}n^3-\frac{1}{2}n^2+\frac{1}{6}n\\
&&S_{3}(n)=\frac{1}{4}n^4-\frac{1}{2}n^3+\frac{1}{4}n^2\\
&&S_{4}(n)=\frac{1}{5}n^5-\frac{1}{2}n^4+\frac{1}{3}n^3-\frac{1}{30}n\\
&&\cdots\cdots
\end{eqnarray}
となります。\(S_k(n)\)は\(n\)について\((k+1)\)次多項式ですが、これを連続変数\(n\)の関数とみなすと、等式
$$
S^\prime_k(n)=\frac{dS_k(n)}{dn}=kS_{k-1}(n)+b_k\tag{1}
$$
が成立します。ここで定数項\(b_k\)は「ベルヌイ数」であって、次の漸化式によって定義されます。
$$
b_0=1,\quad \sum_{k=0}^{m-1}{}_m \mathrm{C}_k\cdot b_k=0\quad (m\geq2)\tag{2}
$$
 初めのほうの値は
$$
b_1=-\frac{1}{2},\ b_2=\frac{1}{6},\ b_3=0,\ b_4=-\frac{1}{30},\ b_5=0,\ b_6=\frac{1}{42},\cdots
$$
です。(1)は例に示した\(k=4\)までは直接確かめられますが、一般的に正しい式です。この関係式はベルヌイ以来何度も再発見されています。
 問題は、(1)をなるべく初等的に—できれば高等学校程度の数学で—証明することです。
 注意 (2)によって定義される\(b_k\)は、指数的母関数の関係式
$$
\sum_{k=0}^\infty\frac{b_k}{k!}t^k=\frac{t}{e^t-1}\tag{3}
$$
を満足します。(3)を活用すれば(1)の証明は容易ですが(そして(2)も導くことができますが)、なるべくなら(3)を知らないでもできる証明を望みます。

数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p21-p22

チャレンジの結果は…?

チャレンジの結果…解けませんでした…
負け惜しみですが、時間があったらなんとかなったような気も…気のせいでしょう…

目の付け所が悪かったのか、それともヒラメキが足りなかったのか….
いずれにせよ悔しい結果でした。

筆者の回答を紹介します。(正解していないので無意味なのですが…)

問題としては、
$$
b_0=1,\quad \sum_{k=0}^{m-1}{}_m \mathrm{C}_k\cdot b_k=0\quad (m\geq2)\tag{2}
$$
としたとき、
$$
S^\prime_k(n)=\frac{dS_k(n)}{dn}=kS_{k-1}(n)+b_k\tag{1}
$$
を証明せよ、ということです。

\(S_k(n)\)を\(n\)で表現して、正直に\(n\)で微分すればいいのかな?と思いましたが、そもそも\(S_k(n)\)を\(n\)で表現すること自体が骨が折れそうですし、仮に解けたとてそれはエレガントな解答と言えるのだろうか、と傲慢にも思ってしまいました。
単に問題を解く、ということであれば、確かに解答としてエレガントな方が良いのでしょうが、そもそも解けないことには始まらないという気もするので、結局言い訳です。

さて、筆者としてはどうにも\(b_k\)がイメージがつきにくいということで、\(b_k\)に注目してみることにしました。
とはいえ、使えるのは
$$
b_0=1,\quad \sum_{k=0}^{m-1}{}_m \mathrm{C}_k\cdot b_k=0\quad (m\geq2)\tag{2}
$$
だけです。
この(2)を見てみると、どことなく二項定理に似ている気がしました。
とはいえどのように二項定理を使えばよいか、ということは分からず、まずは\(b_k\)を数個計算してみることにしました。

  • \(m=2\)のとき
    \begin{eqnarray}
    \sum_{k=0}^1{}_2 \mathrm{C}_kb_k=0&\Longleftrightarrow&{}_2 \mathrm{C}_0b_0+{}_2 \mathrm{C}_1b_1=0\\
    &\Longleftrightarrow&b_0+2b_1=0\\
    &\Longleftrightarrow&2b_1=-1\\
    &\Longleftrightarrow&b_1=-\frac{1}{2}
    \end{eqnarray}
  • \(m=3\)のとき
    \begin{eqnarray}
    \sum_{k=0}^2{}_3 \mathrm{C}_kb_k=0&\Longleftrightarrow&{}_3 \mathrm{C}_0b_0+{}_3 \mathrm{C}_1b_1+{}_3 \mathrm{C}_2b_2=0\\
    &\Longleftrightarrow&1-\frac{3}{2}+3b_2=0\\
    &\Longleftrightarrow&2\frac{1}{2}=3b_2\\
    &\Longleftrightarrow&b_2=\frac{1}{6}
    \end{eqnarray}

計算してみたものの、特にめぼしい成果は得られませんでした。

というわけで、今のところ、緒が二項定理だけですので、無理やりに二項定理を使ってみることにしました。
具体的には、\((r+1)^k\)を二項定理で展開してみることにしました。

\begin{eqnarray}
(r+1)^k&=&\sum_{i=0}^k{}_k \mathrm{C}_ir^{k-i}\\
&=&\sum_{j=0}^k{}_k \mathrm{C}_jr^{j}\\
\end{eqnarray}
となります。
ほしい形としては、\(\displaystyle\sum r^k\)の形ですので、両辺に和をとってみます。
\begin{eqnarray}
\sum_{r=0}^{n-1}(r+1)^k&=&\sum_{r=0}^{n-1}\sum_{j=0}^k{}_k \mathrm{C}_jr^{j}\\
&=&\sum_{j=0}^k{}_k \mathrm{C}_j\sum_{r=0}^{n-1}r^{j}\\
&=&\sum_{j=0}^k{}_k \mathrm{C}_jS_j(n)\\
\end{eqnarray}
となりました。
もし、上式の左辺がもっと簡素な形であれば、何か手立てはありそうでしたが、悩んだところで時間切れでした。

実に悔しいです。

投稿されたエレガントな解答を紹介します!

(前略)
$$ S_{k-1}(n)=\frac{1}{k}\left[ S_k^\prime(n)-S_k^\prime(0)\right]\tag{1′} $$ (中略)

 原理的にはこの問題は、定義から得られる等式 $$ S_k(n)-S_k(n-1)=(n-1)^{k-1}\quad (k\geq0)\tag{4} $$ を多項式の間の恒等式とみて、\(n\)を連続変数とみなして微分し、得られる等式 $$ S_k^\prime(n)-S_k^\prime(n-1)=k(n-1)^{k-1} $$ を\(1\)から\(n\)まで加えて(1′)を示すことができます。結果的には正しいのですが、もともと離散的な整数値をとる変数\(n\)を、そのまま連続変数に拡張して良いという理由付けに、本質的な論点を感じました。特に、連続関数\(F(x)\)が恒等的に
  \(F(x+1)=F(x)\quad\)を満たせば\(\quad\displaystyle\frac{dF(x)}{dx}=0\)
と主張するのは無理です。 —-\(F(x)\sin(2\pi x)\)はどうでしょうか?—-もっともこのように言わんとする意味は理解できます。 対象を多項式に限定して、多項式\(F(x)\)の一意性の証明という形で面白い合理化をした方もありました。しかし以下では数多く寄せられた「標準的」な解法を紹介します。

まず初等的でないがかんたんな証明は、注意に述べた指数的母関数の式(3)を活用する方法です。 \(\displaystyle\sum_{r=1}^\infty\frac{t^r}{r!}=e^t-1\)を(3)の両辺に掛けて、べき級数の積の定理を活用すると漸化式 $$ b_0=1,\quad \sum_{r=0}^{k-1}\frac{b_r}{(k-r)!r!}=0\tag{2′} $$ を得ますが、これは本質的に(2)と同じです。 次に
\(\sum_{k=0}^\infty\frac{r^kt^k}{k!}=e^{rt}\)\quad (\(r=0,1,\cdots;0^0=1\)と約束)
を\(r=0\)から\(n-1\)まで加えて $$ \sum_{k=0}^\infty\frac{S_k(n)}{k!}t^k=\frac{e^{nt}-1}{e^t-1}\tag{5} $$ を得ます。 \(S_k(n)\)は\(n\)について\((k+1)\)次多項式であり、(5)で\(n\)を連続変数\(x\)としても成立します。 それは、(5)の右辺のべき級数で\(k\)次の項が\(x\)の\((k+1)\)次多項式で表され、それの値がすべて生の整数\(n\)で一致するので恒等的に等しい、という論法で確かめられます。 このようにして(5)の\(n\)を連続変数として微分すれば $$ \sum_{k=0}^\infty\frac{S_k^\prime(n)}{k!}t^k=\frac{t}{e^t-1}\cdot e^{nt}=\sum_{k=0}^\infty\frac{S_k(n)}{k!}t^{k+1}+\frac{t}{e^t-1} $$ となります。 (3)を使い、両辺の\(t^k\)の項を比較して $$ kS_{k-1}(n)=S_k^\prime(n)-b_k $$ を得ます。

高校数学の範囲でできる標準的な方法は以下のとおりで、大多数の解答がこの形式でした。 まず二項定理によって\((r+1)^{k+1}-r^{k+1}\)を展開して、\(r=0,1,\cdots,n-1\)について加え、、 $$ \sum_{j=0}^k{}_{k+1} \mathrm{C}_j\cdot S_j(n)=n^{k+1}\tag{6} $$ を導きます。 (6)は多項式に関する恒等式なので、\(n\)を連続変数\(x\)に拡張しても正しく、これを微分して $$ \sum_{j=0}^k{}_{k+1} \mathrm{C}_j\cdot S_j^\prime(n)=(k+1)n^k\tag{7} $$ を得ます。ここで
\(S_k^\prime(n)-kS_{k-1}(n)\)が定数\(b_k\)である
(\(b_k\)は(2)と一応無関係)
という命題を、\(k\)に関する数学的帰納法によって証明することにします。 \(k=0,1,2\)については、直接に確かめられます。 そこで\(k=0\)から\(m\)まで正しいと仮定します。 (6)に\((k+2)\)を掛けて、\(k=m\)とおくと \begin{eqnarray} &&(m+2)n^{m+1}\\ &=&(m+2)\sum_{j=0}^m{}_{m+1} \mathrm{C}_j\cdot S_j(n)\\ &=&(m+2)\sum_{j=0}^{m-1}\frac{{}_{m+1} \mathrm{C}_j}{j+1}(j+1)S_j(n)+(m+2)(m+1)S_m(n)\\ &=&\sum_{j=1}^m{}_{m+2} \mathrm{C}_{j+1}\cdot S_{j+1}^\prime(n)+\alpha+(m+2)(m+1)S_m(n)\tag{8} \end{eqnarray}
  \(\LARGE(\)帰納法の仮定;\(\alpha\)は定数\(\displaystyle=\sum_{k=0}^{m-1}{}_{m+2} \mathrm{C}_{j+1}\cdot b_{j+1}\LARGE)\)
です。 これに\(S_0^\prime(n)=1=b_0\)を補正して、第1項を\(j=0\)から\(m\)までの和にすれば、\(\alpha^\prime\)を新しい定数(\(\alpha-1\))として $$ (m+2)n^{m+1}=\sum_{j=0}^m{}_{m+2} \mathrm{C}_j\cdot S_j^\prime(n)+(m+2)(m+1)S_m(n)+\alpha^\prime $$ を得ます。 他方(7)で\(k=m+1\)の場合は $$ (m+2)n^{m+1}=\sum_{j=0}^m{}_{m+2} \mathrm{C}_j\cdot S_j^\prime(n)+(m+2)S_m^\prime(n) $$ と表されるので、両辺を等しいと置いてその差を\((m+2)\)で割れば
  \((m+1)S_m(n)=S_{m+1}^\prime(n)\)一定数
となって、\(m+1\)の場合も証明されました。 さらに(8)の中の定数の関係から、当面の定数\(b_k\)は\(b_0=1\)、かつ $$ (m+2)b_{m+1}=-\sum_{j=0}^{m-1}{}_{m+2} \mathrm{C}_{j+1}\cdot b_{j+1}b_0 $$ を満たします。 ここで\(m+2\)を\(m\)に変えて整理すると、漸化式(2)と同じになります。

(後略)

数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p187-p189.

読者の皆様への挑戦状!

今から紹介する問題の解答は今週の日曜日に解説します!

整数列\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)で以下の1.、2.を満たすものを考えます;
  1. \(2\leq a_1<a_2<\cdots < a_n<a_{n+1}<\cdots\)、
  2. すべての\(n\geq1\)について\(a_{n+1}\)は\(a_n\)の倍数である。
 このとき、逆数からなる無限数列 $$ \sum_{n=1}^\infty\frac{1}{a_n} $$ が収束し、その和\(A\)は\(0<A\leq 1\)を満たすことがわかります。 たとえば、数列\(\left\{2^n\right\}\)は上の性質を持ち、逆数和は\(1\)となります。
 さて、ここではその逆について問います。 すなわち、次のことを証明してください。
『\(0< A\leq 1\)なるどんな実数\(A\)に対しても、1.、2.を満たす整数列\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)をうまくとれば、 $$ \sum_{n=1}^\infty\frac{1}{a_n}=A $$ とできる』

数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p22-p23.

いかがでしたか?
今回は数セミの「エレガントな解答をもとむ」に挑戦してみる、という記事でした。

読者の皆様も是非一度挑戦してみて下さい!
そして、「読者の皆様への挑戦状」にも是非挑戦していただき、解答をコメントで教えて下さい!

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