本記事の内容
本記事は『数学セミナー』(日本評論社)に掲載されている”エレガントな解答をもとむ”に出題されいている問題に、1時間で解けるか、という挑戦をする記事です。
本記事を読むにあたり、前提知識は基本的に必要ありませんが、以前紹介した記事の内容を使う場合はその旨を記述することにします。
今回も「エレガントな解答をもとむ selections」に掲載されいている問題です。
前回の問題については以下の記事を御覧ください!
では、問題
空間の5点A,B,C,D,EA,B,C,D,Eに対して
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p18.
AB=BC=CD=DE=EA,AC=BD=CE=DA=EB
が成り立つとき、A,B,C,D,Eは同一平面上にあるといえるでしょうか。
いざ、チャレンジ
チャレンジの結果…解けました。
簡単ではないですが、別段難問というわけでもなさそうな印象でした。
筆者の解答
3次元の場合は一瞬、というより読みながら「これ、正五角形のことじゃんね」となりましたので解けました(ちなみに、正五角形に対角線を引くと、黄金比が隠れています)。
しかしながら、これはあくまで3次元の話ですので、4次元以上の超空間ではどうなるかということは想像できないため、解析的に考える必要があります。
そこで、やはり座標系を導入して、座標でもって考える必要があります。
いきなり4次元以上でやってもいいのですが、まずは3次元の場合はどうなるかということを考えてみました。
筆者の経験上、こういう問題は2次元やら3次元の手法をほぼそのまま4次元以上に使えたりすることも多く、想像できない4次元を考察するための布石として3次元を考察することに意味がある場合が多い印象があります。
次の図のように2次元平面に点を取ります。

A(0,a,0), B(x,y,z), C(0,−1,0), D(1,0,0)とします。
すると、仮定からAB=BC=2(=BD)、BD=√a2+1(=AC)であるので、
x2+(y−a)2+z2=4,(x+1)2+y2+z2=4,(x−1)2+y2+z2=a2+1
を満たします。
これを解くと、
x=14(−a2+3),y=14a(3a2−5),z2=−116a2(a6−5a4−45a2+25)=−116a2(a2+5)(a4−10a2+5)
となります。
最後の因数分解は必要かどうかはわかりませんでしたが、因数分解ができそうなので、やってみたらできた、ということに過ぎません。
さて、Eの座標はCとDの役割を交換するだけで良いので、E(−x,y,±z)となります。
このとき、z=0であれば、3次元の場合はおしまいです。
BE=√a2+1からaの値が先に決まってしまいます。
次の2つの場合に分けて考えます。
- BとEのz座標が一致しているとき
このとき、B及びEはyz平面に対して対称ということになり、条件は(2x)2=a2+1となります。
故に、a4−10a2+5=0となります。
したがって、
z2=−116a2(a2+5)(a4−10a2+5)=0
ということになり、z=0です。 - B及びEのz座標が符号のみ異なるとき
このとき、BおよびEはy軸に対して対称で、条件は(2x)2+(2z)2=a2+1となります。
故に、a4−10a2+5=0となり、z=0です。
以上のことからz=0が分かり、さらにBとEがyz平面、またはy軸に対して対称だということが分かりました。
△ACDを共有する2つの四面体B−ACDとE−ADCは、対応する6組の辺が互いに等しいことから、合同か、もしくは裏返しをして合同かです。
故に、これらの四面体が△ACDの同じ側にあれば、場合1.、反対側であれば場合2.になるわけです。
そして、空間が4次元いじょうだとすると、四面体が面ACDを固定したままいろいろな方向に回転してしてしまうため、これは成り立ちません
つまり、4次元以上では問題の主張は成り立たないということが分かります。
投稿されたエレガントな解答
筆者の解答と似ている回答がありましたが、その部分は割愛します。
(前略)
事実1 △ACDを共有する2つの四面体B−ACDとE−ADCは、対応する6組の辺が互いに等しいので、合同または裏返し合同である。
(中略)
4次元以上の場合に言及しましょう。5次元空間の5点(1,0,0,0,0), (0,1,0,0,0),⋯,(0,0,0,0,1)は、どの2点間の距離も等しく、4次元超平面x1+x2+x3+x4+x5=1に含まれています。これが正五胞体で、4次元以上では代位は「いえない」ことを示す凡例になります。
(中略)
解2 行列式を用いた解。(中略)
補題 A0,A1,⋯,Anをn次元空間の点、lijをAiとAjの距離とする。このとき、A0,A1,⋯,Anの作る単体のn次元体積Vの平方は次の(n+2)次行列式の定数倍である。
|1011⋯110l201l202⋯l20n1l2100l212⋯l21n1l220l2210⋯l22n⋮⋮⋮⋮⋮⋮1l2n0l2n1l2n2⋯0|(中略)n=2のときは有名なヘロンの公式、n=3のときは四面体の4辺の長さから堆積を算出する公式になります。(『数学セミナー』1997年1,2月号「エレガントな解答をもとむ」参照)。
補題から、とくに(n+1)この点が(n−1)次元以下のアフィン部分空間に含まれるための必要十分条件は、上記の行列式の値が0となることです。
さて、以下では5点A,B,C,D,Eが3次元空間内にあって
AB2=BC2=⋯=x,AC2=BD2=⋯=y
を満たすとします。3次元空間は4次元空間に含まれるので、n=4で補題を用いて、5点がつくる4次元単体が3次元に退化するという条件式は
|01111110xyyx1x0xyy1yx0xy1yyx0x1xyyx0|=0
です。ここで、左辺を因数分解すると5(x2−3xy+y2)2になる、というこですが、これには強靭な計算力が必要です。x=1としてよいことは、相似から分かります(V2はx,yの4次同次式!)が、あとは、ひたすら辛い掃き出し計算が待っています。運が良ければ、3次の行列式になるぐらいのところで、どれかの行か列からめでたく共通因数を括り出せるでしょう。
次に、点Eを除く4点の作る四面体の3次元体積の平方は補題でn=3とすることによって、定数倍を除いて
|0111110xyy1x0xy1yx0x1yyx0|=−2(x+y)(x2−3xy+y2)
です。この計算は先程より簡単です。不思議なことに、個々に現れる2次の因子が、先程の6次行列式の因子と同じなので、この行列式の値は0です。よって、4点A,B,C,Dは同一平面上にあります。条件の対称性から、4点B,C,D,Eも同一平面上にあるので、5点が同一平面BCD上にあることが言えました。なお、一般の場合x2−xxy+y2≤0であることも分かります。(中略)
以下では、5点が同一平面上にはないと仮定します(背理法)。
解3 体積を用いた解。(中略)すべての四面体は互いに合同または裏返し合同だから、体積は同じvです。v=0が示せれば、どの4点も同一平面上にあるので、5点は同一平面上にあることが示せます。5点の凸包をTとします。Tは多面体で、全ての面は三角形です。
(Case1) 5てんのどれかがTの内部に含まれるとき、Tはひとつの四面体となり、それは同時に、4つの面を底面とする4つの四面体の合併でもありますから、v=4vとなり、矛盾です(全体は部分より大きい!)。
(Case2) 5てん全てがTの頂点であるとき、例えば、図のようにTの面でない△ABDと辺でない線分ECをとると、Tは△ABDを共有面とする2つの四面体の合併でおあり、また線分ECを共有辺とする3つの四面体の合併でもありますから、2v=3vです。よって、v=0となり、やはり矛盾です。
解4 事実1から出発します。△ACDを共有する2つの四面体B−ACDとE−ADCが同じ側にあると、それらはCDの垂直2等分面に関して鏡映対称になるので、BE//CDとなり、4点B,C,D,Eが同一平面に含まれてしまいます。四面体BCDEが潰れたのでv=0です。
よって、v≠0であるためには、どの3点で決まる平面に関しても、残りの2点は反対側になければなりません。しかし、凸包Tの面をなす三角形では、そのことは不可能です。(中略)
解5 直行性を利用する証明。二等辺三角形のせいしつから、たとえば線分BEの中点をM、線分CDの中点をNとすると、AM⊥BE、AN⊥CDです。また△BCD≡△ECDなどからMN⊥BE、MN⊥CDとなります。もし、A,M,Nが同一直線上にないと、BE,CDはともに平面AMNに垂直なので、/\!/となり矛盾。よって、A,M,Nが同一直線上に乗らなければなりません。すると、平面ABEに関してNはその上に、C,Dは反対側に有り、平面ACDに関してMはその上に、B,Eは反対側にあります。同様に、3点で決まるどの平面に関しても残りの2点は反対側になければなりませんが、すでに凸包Tに着目して示したように、これは矛盾です。
(後略)
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p147-p153.
読者の皆様への挑戦状!
以下の問題は来週挑戦します!
θを定数とします。OP=1であるような点Pをx軸中心に角度θだけ回転し、さらにy軸を中心に角度θだけ回転してうつった点をQとします。
原点を中心とする単位球面上の任意の位置に始点Pをとりなおしたとき、線分PQの長さの最大値はいくらになるでしょうか。
ただしx軸を中心とする角度はz軸からy軸の向きを正とし、y軸を中心とする角度はx軸からz軸の向きを正とします。数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p19.
前回の問題は、【1時間チャレンジシリーズ】挑戦㉑を御覧ください。
結
いかがでしたか?
今回は数セミの「エレガントな解答をもとむ」に挑戦してみる、という記事でした。
読者の皆様も是非一度挑戦してみて下さい!
そして、「読者の皆様への挑戦状」にも是非挑戦していただき、解答をコメントで教えて下さい!
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