本記事の内容
本記事は『数学セミナー』(日本評論社)に掲載されている”エレガントな解答をもとむ”に出題されいている問題に、1時間で解けるか、という挑戦をする記事です。
本記事を読むにあたり、前提知識は基本的に必要ありませんが、以前紹介した記事の内容を使う場合はその旨を記述することにします。
今回も「エレガントな解答をもとむ selections」に掲載されいている問題です。
前回の問題については以下の記事を御覧ください!
では、問題
3辺の長さが整数で、面積も整数になる三角形のうちで、面積が最小となるものを求めてください。
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p17.
(ヒント) 辺の長さが3, 4, 53, 4, 5の直角三角形は面積が66です。これより小さいものはあるのでしょうか?
いざ、チャレンジ
チャレンジの結果…解けました。
比較的難易度は優しかったように思えます。
筆者の解答
この問題を見た瞬間に「ヘロンの公式をどうにかするんだなあ」と思いました。
ヘロンの公式は、三角形の三辺の長さがa,b,ca,b,cのとき、その三角形の面積SSが
S=√s(s−a)(s−b)(s−c)S=√s(s−a)(s−b)(s−c)
である、という公式です。
ただし、
s=a+b+c2s=a+b+c2
です。
問題はa,b,c,d,S∈Nのときに、Sを最小たらしめる(a,b,c)∈N3を求めることです。
ヘロンの公式を変形すると、
S=√s(s−a)(s−b)(s−c)=√a+b+c2(a+b+c2−a)(a+b+c2−b)(a+b+c2−c)=√a+b+c2⋅−a+b+c2⋅a−b+c2⋅a+b−c2=14√(a+b+c)(−a+b+c)(a−b+c)(a+b−c)
となります。
14√(a+b+c)(−a+b+c)(a−b+c)(a+b−c)∈N
だから、
(a+b+c)(−a+b+c)(a−b+c)(a+b−c)=16K2
というK∈Nが存在します(結局S=Kですが)。
16=24に着目して、a+b+c,−a+b+c,a−b+c,a+b−cを偶奇で分けてみます。
このとき、a+b+c,−a+b+c,a−b+c,a+b−cは全て偶数でなければなりません。
実際、
a+b+c+−a+b+c+a−b+c+a+b−c=2a+2b+2c
となるため、a+b+c,−a+b+c,a−b+c,a+b−cは
- 全て偶数
- 全て奇数
- 4つのうち2つが偶数で他2つが奇数
の3パターンがあります。
しかし、全て奇数、2つが偶数でもう2つが奇数の場合は等式
16S2=(a+b+c)(−a+b+c)(a−b+c)(a+b−c)
において、左辺が平方数であることに反します。
さて、変形したヘロンの公式を見やすくしたいと思います。
A=a+b+cB=−a+b+cC=a−b+cD=a+b−c
とすると、S=14√ABCDです。
ここで、この記号を導入するのを間違ったことに気が付きました。
というのも、
B+C+D=A
が成り立つからです。
そこで、結局p=B,q=C,r=Dと書き直すことで
S=14√(p+q+r)pqr
となります。
まとめておくと、
p=−a+b+c,q=a−b+c,r=a+b−c
とおき、p,q,rは全て偶数ということになります。
後は、Sを最小たらしめる(a,b,c)を求めたいので、S=1から地道に計算していけばOKです(もっとエレガントな方法があるのかも知れませんが…)。
- S=1のとき
4=√(p+q+r)pqrを満たす偶数p,q,rが存在するかを確かめます。
もし、そのようなp,q,rがあるとすれば、一番小さな組み合わせは(p,q,r)=(2,2,2)ですので、
(p+q+r)pqr=6×8=48
となるため、S=1は不適です。 - S=2のとき
先ほどと同様にして、8=√(p+q+r)pqrを満たす偶数p,q,rが存在するかを確かめます。
64=√(p+q+r)pqr
となるp,q,rが存在するかを知りたいわけですが、(p,q,r)=(2,2,4)とすると
(p+q+r)pqr=8×16=128
となるため、S=2の場合も不適です。 - S=3のとき
先ほどと同様にして、12=√(p+q+r)pqrを満たす偶数p,q,rが存在するかを確かめます。
144=√(p+q+r)pqr
となるp,q,rが存在するかを知りたいわけですが、(p,q,r)=(2,2,6)とすると
(p+q+r)pqr=10×24=240
となるため、S=3の場合も不適です。 - S=4のとき
先ほどと同様にして、16=√(p+q+r)pqrを満たす偶数p,q,rが存在するかを確かめます。
256=√(p+q+r)pqr
となるp,q,rが存在するかを知りたいわけですが、(p,q,r)=(2,4,4)とすると
(p+q+r)pqr=10×32=320
となるため、S=4の場合も不適です。 - S=5のとき
先ほどと同様にして、20=√(p+q+r)pqrを満たす偶数p,q,rが存在するかを確かめます。
400=√(p+q+r)pqr
となるp,q,rが存在するかを知りたいわけですが、(p,q,r)=(2,4,6)とすると
(p+q+r)pqr=12×48=576
となるため、S=5の場合も不適です。 - S=6のとき
先ほどと同様にして、24=√(p+q+r)pqrを満たす偶数p,q,rが存在するかを確かめます。
576=√(p+q+r)pqr
となるp,q,rが存在するかを知りたいわけですが、(p,q,r)=(2,4,6)とすると
(p+q+r)pqr=576
となることを先程確かめました。
故にS=6の場合が適切です。
したがって、S=6、(p,q,r=(2,4,6))が求めたいものとなります。
つまり、
{−a+b+c=2a−b+c=4a+b−c=6
を満たす(a,b,c)が求めたいものです。
この連立方程式を解けば、
(a,b,c)=(5,4,3)
となるため、結局は、三辺の長さが3,4,5の三角形が求めるものだったというオチでした。
投稿されたエレガントな解答
出題者の解答を紹介します。
(前略)
解法は以下の通り。やはりヘロンの公式を使うのが定石でしょう。ヘロンの公式によれば、三角形の3辺の長さをa,b,c、その面積をSとすると、次のようになります。
S2=(a+b+c2)(−a+b+c2)(a−b+c2)(a+b−c2)
右辺の分子に現れる式を、2を法として考えると、
a+b+c≡−a+b+c≡a−b+c≡a+b−c (mod 2)
となり、a+b+c,−a+b+c,a−b+c,a+b−cの4整数は同時にふうすうまたは奇数に成ることがわかります。
しかし、それが奇数だとすると、右辺は半整数の席になり、左辺が整数の平方であることに反します。したがって、分子の4整数は偶数となり、右辺の4個の整数の積に分解することになります。そこで、
x=−a+b+c2,y=a−b+c2,z=a+b−c2
とおくと、a+b+c2=x+y+zとなり、ヘロンの公式は、
S2=(x+y+z)xyz
と変形されます。あとは、Sの値を与えて、上の式を満たすx,y,zが存在するかどうかを順に調べていけばよいだけです。
それを実行すれば、たしかに、3,4,5の三角形が答えになることがわかります。ここで解答を終了してもよいのですが、もうすこし突っ込んだ考察をしてみましょう。実は、3辺が整数で面積も整数になる三角形の面積Sは6の倍数になっているのです。となれば、そういう三角形の面積の最小値が6になるのは、当然ですね。
それを示すために、まず、どんな平方数n2も3で割ると、余りが0か1になること、つまり、
n2≡0,1 (mod 3)
となることを確認しておきましょう。それは、n=3k+rとおいて次の式を考えれば、すぐにわかります。
(3k+r)2=9k2+6kr+r2≡r2 (mod 3)
そこで、x,y,zのいずれも3では割り切れないとして、S2を3で割ったときの余りがどうなるかを調べてみると、表1のようになります。そこには、それぞれを3で割ったときの余りが書かれています。たとえば、最小の行は、x,y,zのいずれも3で割ったときに余りが1になる場合で、そのような数を足せば3で割り切れることを意味しています。合同式の計算を知っている人なら、表の意味は明らかですね。
xyz x+y+z S2 (mod 3) 111 0 0 112 1 2 122 2 2 222 0 0 表1 3で割ったときの余り この表はあくまで機械的に場合分けしたものだから、答えとして不適切なものも含んでいます。実際、2行目と3行目は、S2≡0,1 (mod 3)に反します。したがって、1行目と4行目が生き残ります。結局、x,y,zのいずれかが3で割り切れる場合も併せて、S2が3で割り切れることがわかりました。もちろん、3は素数なので、Sも3で割り切れます。
どうように考えると、S2が4で割り切れることもわかります。まず、どんあ平方数n2に対しても、
n2≡0,1 (mod 4)
となることを確かめて下さい。続いて、x,y,zのいずれも4で割り切れない場合に、それぞれの値を4で割ったときの余りを調べてみると、表2が得られます。
xyz x+y+z S2 (mod 4) 111 3 3 112 0 0 113 1 3 122 1 0 123 2 0 133 3 3 223 3 0 233 0 0 333 1 3 表2 4で割ったときの余り やはり、S2=3の場合はありえないので、この表でもS2≡0の場合だけが生き残って、S2は4で割り切れることになります。したがって、Sが2で割り切れることになり、さらに3でも割り切れるので、Sが6の倍数になることがわかりました。めでたし、めでたし。
はたして、6の全ての倍数を、3辺の長さが整数の三角形の面積として実現できるのでしょうか?興味のある読者は、自分で考えてみて下さい。
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p125-p127.
読者の皆様への挑戦状!
各面の頂点の番号の和がすべて等しくなるように立方体の頂点に1,2,⋯,8の番号をふるふり方は全部で何通りありますか。
数学セミナー編集部編(2001)『エレガントな解答をもとむ selections』日本評論社 p17.
前回の問題は【1時間チャレンジシリーズ】挑戦⑰を御覧ください。
結
いかがでしたか?
今回は数セミの「エレガントな解答をもとむ」に挑戦してみる、という記事でした。
読者の皆様も是非一度挑戦してみて下さい!
そして、「読者の皆様への挑戦状」にも是非挑戦していただき、解答をコメントで教えて下さい!
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