本記事の内容
本記事は「有界な単調列は収束する」という命題の証明に必要な、数列の極限を語る上で必要なことをまとめた記事です。
この記事を読むにあたって前提知識は、基礎的な論理以外にはありませんが、数列の収束は実数の連続性と関連があるため、実数の連続性を意識しながら読むとより理解が深まると思われますので、以下の記事も合わせてご覧ください。
数列って?
いきなりネタバラシなのですが、数列は読んで字の如く”数”の”列”です。
数学的に厳密にいえば「数列とは自然数全体の集合\(\mathbb{N}\)から実数全体の集合\(\mathbb{R}\)への写像\(a:\mathbb{N}\to\mathbb{R}\)である。」なのですが、
これは、自然数全体の集合\(\mathbb{N}\)と実数全体の集合\(\mathbb{R}\)の間にある対応関係のことです。
※写像についてはまだやっていないので、「対応関係なんだ。ふーん。」程度で今はOKです。
要は、実数の列に自然数の番号をつけて並べたものが数列です。
数列の\(n\)項目(\(n\)番目)を第\(n\)項とよび\(a_n\)と書きます。
また数列自体を\(\{a_n\}\)やら\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)と書きます。
数列は、数(ここでは実数)を集めたものなので、集合です。
故に数列を表す記号は集合と似た記号ですが、この\(\{\}\)は集合のそれとは別です。
例1.(正の奇数の数列)
\(a_n=2n-1\)とおくことで、\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)は正の奇数の数列となります。
実際、\(a_1=1, a_2=3, a_3=5, \dots\)です。
これは、\(1\)番目の奇数\(1\)に\(1\)という番号を、\(2\)番目の奇数\(3\)に\(2\)という番号を、\(3\)番目の奇数\(5\)に\(3\)という番号を対応付けた、と捉えることができます。
例2.(反比例に似た数列)
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{n}\)とおくことで、\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)は数列となります。
実際、\(\displaystyle a_1=1, a_2=\frac{1}{2}, a_3=\frac{1}{3}, \dots\)です。
これは、\(1\)番目の数\(1\)に\(1\)という番号を、\(2\)番目の数\(\displaystyle\frac{1}{2}\)に\(2\)という番号を、\(3\)番目の奇数\(\displaystyle\frac{1}{3}\)に\(3\)という番号を対応付けた、と捉えることができます。
有界って?
実は、有界についてはほぼすでに学んでいるようなものです。
というのも、実数全体の集合の部分集合に対する「上に有界」、「下に有界」とほぼ同じだからです。
「おや?」となった方は【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その3を参照してください。
実数全体の集合の部分集合に対する「上に有界」、「下に有界」はすでに解説しました。
「じゃあ数列に対しては?」となるのだがほぼ同じなのです。
というのも、実数の数列は実数の集合の部分集合だからです。
例1.(正の奇数の数列)
\(a_n=2n-1\)とおくことで、\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)は正奇数の数列となります。
この数列の全ての項を集めてできた集合\(\{a_1,a_2,a_3,\dots\}=\{a_n\mid n\in\mathbb{N},\ a_n=2n-1\}\)は実数全体の集合\(\mathbb{R}\)の部分集合です。
このとき、任意の自然数\(n\)(番号)に対して、\(a_n>0\)です。
例2.(反比例に似た数列)
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{n}\)とおくことで、\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)は数列となります。
この数列の全ての項を集めてできた集合\(\{a_1,a_2,a_3,\dots\}=\{a_n\mid n\in\mathbb{N},\ a_n=\displaystyle\frac{1}{n}\}\)は実数全体の集合\(\mathbb{R}\)の部分集合です。
このとき、任意の自然数\(n\)(番号)に対して、\(a_n\leq 1\)です。
例2.(初項\(1\)、公比\(\displaystyle-\frac{1}{2}\)の等比数列)
\(\displaystyle a_n=\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\)とおくことで、\(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)は数列となります。
この数列の全ての項を集めてできた集合\(\{a_1,a_2,a_3,\dots\}=\left\{a_n\middle| n\in\mathbb{N},\ a_n=\displaystyle\left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\right\}\)は実数全体の集合\(\mathbb{R}\)の部分集合です。
このとき、任意の自然数\(n\)(番号)に対して、\(\displaystyle-\frac{1}{2}\leq a_n\leq 1\)です。
このように、数列の全ての値と等しいか大きい実数が存在するとき、その数列は上に有界であるといいます。
また、同様に数列の全ての値と等しいか小さい実数が存在するとき、その数列は下に有界であるといいます。
上に有界であり、かつ下にも有界であるような数列を有界な数列といいます。
これを論理式で書くと、次です。
- \(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)が上に有界とは、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}\)が上に有界なこと、すなわち、次が成り立つことをいう。 $$(\exists U\in\mathbb{R})\ {\rm s.t.}\ (\forall n\in\mathbb{N}\ a_n\leq U).$$
- \(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)が下に有界とは、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}\)が下に有界なこと、すなわち、次が成り立つことをいう。 $$\exists L\in\mathbb{R})\ {\rm s.t.}\ (\forall n\in\mathbb{N}\ a_n\geq L).$$
- \(\{a_n\}_{n\in\mathbb{N}}\)が有界とは、\(\mathbb{R}\)の部分集合\(\{a_n\mid n\in\mathbb{N}\}\)が有界なこと、すなわち、次が成り立つことをいう。 $$(\exists R\in\mathbb{R})\ {\rm s.t.}\ (\forall n\in\mathbb{N}\ |a_n|\leq R).$$
単調列って?
実は単調列も読んで字の如く”単調”な数”列”のことです。
どういう意味で”単調”なのかというと、値がどんどん大きくなる、または値がどんどん小さくなるような数列という意味で単調です。
例1.(正の奇数の数列)
\(a_n=2n-1\)としたとき、数列\(\{a_n\}\)の値はどんどん大きくなります。
実際、\(a_1\leq a_2\leq a_3\leq \dots\)です。
例2.(反比例ににた数列)
\(\displaystyle a_n=\frac{1}{n}\)としたとき、数列\(\{a_n\}\)の値はどんどん小さくなります。
実際、\(a_1\geq a_2\geq a_3\geq \dots\)です。
このように、値がどんどん大きくなる数列を単調増加(数)列といいます。
また、数列\(\{a_n\}\)は単調増加(monotone increasing)であるといいます。
一方、値がどんどん小さくなる数列を単調減少(数)列といいます。
また、数列\(\{a_n\}\)は単調減少(monotone decreasing)であるといいます。
これを論理式で表せば、次です。
- 数列\(\{a_n\}\)が単調増加(monotone increasing)であるとは、 $$(\forall n\in\mathbb{N})\ a_n\leq a_{n+1}$$ が成り立つことを言う。このことを\(a_1\leq a_2\leq \dots \leq a_n\leq a_{n+1}\leq \dots\)やら\(a_1\leq a_2\leq \dots\)と書く。
- 数列\(\{a_n\}\)が単調減少(monotone decreasing)であるとは、 $$(\forall n\in\mathbb{N})\ a_n\geq a_{n+1}$$ が成り立つことを言う。このことを\(a_1\geq a_2\geq \dots \geq a_n\geq a_{n+1}\geq \dots\)やら\(a_1\geq a_2\geq \dots\)と書く。
結
今回は「有界な単調列は収束する」という命題の証明に必要な、数列の極限を語る上で必要なことをまとめました。
次回は「数列の収束?」である。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
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