本記事の内容
本記事は多変数ベクトル値関数のイメージを説明する記事です。
本記事を読むにあたり、多変数ベクトル値関数のグラフと1変数実数値関数の連続について知っているとよりイメージが膨らむと思われますので、その際は以下の記事を参照してください。
1変数実数値関数の連続のイメージのチャラい復習
1変数実数値関数の連続のイメージとしては、「関数が”定義域(区間)内のある点で”繋がっている。もしくは定義域(区間)のどの点でも繋がっている。」ということでした。
言い換えると、
です。
そして、”繋がっている(途切れていない)”というのは極限で表現できるのでした。
一言で言えば、
ということでした。
“多変数ベクトル値関数が連続である”ことのイメージ
多変数ベクトル値関数の場合も”基本的には”同じです。
なぜ”基本的に”なのかというと、ベクトル値関数が少々特殊だからです。
多変数実数値関数であれば、関数の値は実数なので、1変数実数値関数のときと同様に図でイメージが湧きやすいです。
一方でベクトル値関数は基本的にグラフは描けないため、イメージが湧きにくいのです。
まずは簡単な多変数実数値関数の場合についてイメージを説明します。
多変数実数値関数の連続のイメージ
1変数実数値関数とほとんど同じです。
1変数実数値関数はグラフが曲線だったのに対して、\(n\)変数実数値関数は\(n\)次元の曲面もしくは\(n\)次元の曲線になります。
従って、多変数実数値関数の連続のイメージは、
- 曲面の場合、定義域(領域)内のとある点において、穴が無い。もしくは、定義域(領域)内のどの点でも穴が無い。
- 曲線の場合、定義域(領域)内のとある点において、途切れていない。もしくは、定義域(領域)内のどの点でも途切れていない。
ということなのです。
1変数実数値関数は曲線ですので「途切れていない」と表現したのに対して、多変数実数値関数は曲面の場合もありますので「穴が無い」という表現になっただけです。
\(3\)変数以上の多変数実数値関数のグラフは\(4\)次元以上の空間に出ないと描けないので、我々は視認することができません。
つまり、グラフは描けません。
そこで\(2\)変数実数値関数で連続な関数と連続でない関数の例を挙げます。
連続な2変数実数値関数の例と連続でない2変数実数値関数の例
例1.(連続な2変数実数値関数の例)
\(f:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}\)が\(\displaystyle f(x,y)=\frac{x^3}{x^2+y^2+1}\)で定められているとします。
この\(f(x,y)\)のグラフは次です。
この曲面は\(\mathbb{R}^2\)のどの点でも穴がありません。
例2.(連続でない2変数実数値関数の例)
\(g:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}\)が
$$g(x,y)=\begin{cases}
\displaystyle\frac{1}{x^2+y^2}& ((x,y)\neq(0,0))\\
1& ((x,y)=(0,0))
\end{cases}
$$
で定められているとします。
この\(g(x,y)\)のグラフは次です。
この曲面は\((x,y)=(0,0)\)で穴が空いています。
以上が多変数実数値関数の連続のイメージです。
多変数ベクトル値関数の連続のイメージ
これは誠に難しいところです。
というのも、図を描こうにも空間にベクトルを、つまりは矢印を描くだけでどうにも”繋がっている”という直感に結びつきにくいからです。
「ベクトル値関数の連続ってぇのはよ、これのことを言うんだ!覚えろ!」と言ってしまうのは簡単ですが、イメージがあるのと無いのとでは理解のスピードが違うと思います。
さて、多変数ベクトル値関数そのもののイメージは【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その1で述べた通り、「座標に対してベクトルを対応させる関数」です。
図を描けば各座標から矢印が伸びたり入っていったりする図になります。
筆者が思う一番の疑問は「矢印が繋がってるってどういうことよ?」でした。
これに答えるのであれば、「”矢印が繋がっている”ことがベクトル値関数の連続性ではありません。」です。
「なればどういうことなのかネ?」というわけですが、一言で述べれば
ということです。
連続な2変数ベクトル値関数の例と連続でない2変数実数値関数の例
例3.(連続な2変数ベクトル値関数の例)
\(\boldsymbol{f}:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2\)が
$$
\boldsymbol{f}(x,y)=
\left(\begin{array}{c}\displaystyle\frac{1}{x^2+y^2+1}\\ y \end{array}\right)
$$
で定められているとします。
このときの\(\boldsymbol{f}\)の値(ベクトル)は次の動画です。
このように、矢印は連続的に変化しています。
このベクトル値関数は\(\mathbb{R}^2\)で連続です。
例4.(連続でない2変数ベクトル値関数の例)
\(\boldsymbol{g}:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2\)が
$$
\boldsymbol{g}(x,y)=
\begin{cases}
\left(\begin{array}{c}\displaystyle\frac{1}{x^2+y^2}\\ y \end{array}\right)& ((x,y)\neq (0,0))\\
\left(\begin{array}{c}0\\ 0 \end{array}\right)& ((x,y)= (0,0))\\
\end{cases}
$$
で定められているとします。
このときの\(\boldsymbol{g}\)の値(ベクトル)は次の動画です。
※実は厳密な動画ではありませんが、イメージとして「ふーん。こんな感じなんだ。」と思ってください。
※実は厳密な動画ではありませんが、イメージとして「ふーん。こんな感じなんだ。」と思ってください。
この動画で見えるように、\((x,y)=(0,0)\)付近で矢印が急にビュンと伸びている事がわかります。
その後一瞬矢印が消えて(\((x,y)=(0,0)\)はベクトルですが矢印は描けません)その後また一瞬ビュンと伸びて徐々に小さくなります。
動画で見る限りだと連続的に矢印が変化している用に見えるかもしれませんが、実は\((x,y)=(0,0)\)で発散してしまい\((x,y)=(0,0)\)で連続ではありません。
結
今回は多変数実数値関数と多変数ベクトル値関数の連続のイメージについて解説しました。
実数値関数の場合は簡単で、「曲面に穴が空いていない状態」ということが連続のイメージです。
一方でベクトル値関数の連続は「矢印が連続的に変化する状態」が連続のイメージです。
(難しいネ)
次回は、多変数ベクトル値関数と多変数実数値関数の連続を数学的に説明します。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
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