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「多変数ベクトル値関数の外積の極限」【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その5

多変数関数

本記事の内容

本記事は多変数ベクトル値関数の外積の極限について解説する記事です。

この記事を読むにあたり、多変数ベクトル値関数の極限と3次元ベクトルの外積について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。

3次元ベクトルの外積のチャラい復習

この節ではチャラく復習しますので、詳しく知りたい方は【解析学の基礎シリーズ】点列編 その4を御覧ください。
ベクトルの内積は実数値でしたが、外積はベクトルでした。
また、重要な事実として外積はすべての次元で考えられるモノでもない、ということも注意しておきます。

3次元ベクトルの外積の幾何的な説明

aR3aR3bR3の外積a×bは以下のベクトルです。

a×bは大きさがabが張る平行四辺形の面積と一致していて、かつ方向は右ねじの法則に則った方向で(b×aは向きがa×bと逆)、かつabの両方と垂直な(直交している)ベクトルです。
ベクトルは向きと大きさを持つ量ですので、これらの情報でただ1つのベクトルが対応します。

3次元ベクトルの外積の成分表示

3次元ベクトルの外積はベクトルでした。
そのベクトルの成分を書くと、次でした。

3次元ベクトルの外積(成分表示) aR3bR3a=(a1a2a3),b=(b1b2b3) と成分表示されたとする。このときaR3bR3の外積a×ba×b=(a2b3a3b2a3b1a1b3a1b2a2b1) である。

「随分と複雑だネ」と思うかもしれませんが、覚え方があります。
覚え方については【解析学の基礎シリーズ】点列編 その4を御覧ください。

3次元の多変数ベクトル値関数の外積の極限と極限の外積は一致する

いきなりですが、本題に入っていきましょう。
まずは主張を明示してしまいます。

多変数ベクトル値関数の外積の極限 ΩRnRnの領域、f:ΩR3およびg:ΩR3を写像(関数)、aˉΩAR3BR3とする。xaのときf(x)Aに、g(x)Bに収束するとする。 このとき、 limxa(f(x)×g(x))=limxaf(x)×limxag(x) が成り立つ。 言い換えれば、 f(x)=(f1(x)f2(x)f3(x)),A=(A1A2A3),g(x)=(g1(x)g2(x)g3(x)),B=(B1B2B3), と書いたとき、 limxa(f(x)×g(x))=((limxaf2(x))(limxag3(x))(limxaf3(x))(limxag2(x))(limxaf3(x))(limxag1(x))(limxaf1(x))(limxag3(x))(limxaf1(x))(limxag2(x))(limxaf2(x))(limxag1(x)))=limxa(f1(x)f2(xf3(x))×limxa(g1(x)g2(xg3(x)) が成り立つ。

言いたいことは内積のときと同様です。
高校数学的なノリで言うところの、「limはカッコの中に入れて計算してOK」ということです。

この主張の証明も簡単で、式変形により証明できます。

証明

式変形により証明します。

limxa(f(x)×g(x))=limxa(f2(x)g3(x)f3(x)g2(x)f3(x)g1(x)f1(x)g3(x)f1(x)g2(x)f2(x)g1(x))
です。
ここで、次の事実を使います。

定理(多変数ベクトル値関数の収束と同値な命題) ΩRnRnの領域、f:ΩRmを写像(関数)、aˉΩARmとする。xaのときf(x)Aに収束するとする。 すなわち、 (ϵ>0)(δ>0) s.t. (xˉΩ:0<|xa|<δ|f(x)A|<ϵ) が成り立っているとする。 f(x)=(f1(x)f2(x)fm(x)),A=(A1A2Am), と書いたとき、 limxaf(x)=A (iN:1im) limxafi(x)=Ai が成り立つ。 言い換えれば、 limxaf(x)=limxa(f1(x)f2(x)fm(x))=(limxaf1(x)limxaf2(x)limxafm(x)) が成り立つ。

この定理の証明は【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その2を御覧ください。
この定理を使うと、
limxa(f2(x)g3(x)f3(x)g2(x)f3(x)g1(x)f1(x)g3(x)f1(x)g2(x)f2(x)g1(x))=(limxa(f2(x)g3(x)f3(x)g2(x))limxa(f3(x)g1(x)f1(x)g3(x))limxa(f1(x)g2(x)f2(x)g1(x)))
です。
さらに、次の事実を使います。

補題1.(多変数実数値関数の和の極限) ΩRnRnの領域、f:ΩRおよびg:ΩRを写像(関数)、aˉΩとする。 また、xaのときf(x)g(x)が収束するとする。 このとき、 limxa(f(x)+g(x))=limxaf(x)+limxag(x) が成り立つ。

この事実の証明は【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その3を御覧ください。
この事実を使うと、
(limxa(f2(x)g3(x)f3(x)g2(x))limxa(f3(x)g1(x)f1(x)g3(x))limxa(f1(x)g2(x)f2(x)g1(x)))=(limxaf2(x)g3(x)limxaf3(x)g2(x)limxaf3(x)g1(x)limxaf1(x)g3(x)limxaf1(x)g2(x)limxaf2(x)g1(x))
です。
また、次の事実を使います。

補題2.(多変数実数値関数の積の極限) ΩRnRnの領域、f:ΩRおよびg:ΩRを写像(関数)、aˉΩとする。 また、xaのときf(x)g(x)が収束するとする。 このとき、 limxaf(x)g(x)=(limxaf(x))(limxag(x)) が成り立つ。

この事実の証明は【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その4を御覧ください。
この事実を使えば、
(limxaf2(x)g3(x)limxaf3(x)g2(x)limxaf3(x)g1(x)limxaf1(x)g3(x)limxaf1(x)g2(x)limxaf2(x)g1(x))=((limxaf2(x))(limxag3(x))(limxaf3(x))(limxag2(x))(limxaf3(x))(limxag1(x))(limxaf1(x))(limxag3(x))(limxaf1(x))(limxag2(x))(limxaf2(x))(limxag1(x)))
です。
これはまさに外積の成分表示ですので、
((limxaf2(x))(limxag3(x))(limxaf3(x))(limxag2(x))(limxaf3(x))(limxag1(x))(limxaf1(x))(limxag3(x))(limxaf1(x))(limxag2(x))(limxaf2(x))(limxag1(x)))=(limxaf1(x)limxaf2(x)limxaf3(x))×(limxag1(x)limxag2(x)limxag3(x))
ここで、再度定理(多変数ベクトル値関数の収束と同値な命題)を使うと、
(limxaf1(x)limxaf2(x)limxaf3(x))×(limxag1(x)limxag2(x)limxag3(x))=limxa(f1(x)f2(x)f3(x))×limxa(g1(x)g2(x)g3(x))=limxaf(x)×limxag(x)
です。

証明終わり

本当に成り立つのかネ?

簡単ではありますが、例を挙げます。

f:R2R3g:R2R3
f(x)=(xy1),g(x)=(y1x)
で定められているとします。
このとき、

  • limx(1,1)(f(x)×g(x))=limx(1,1)(xy1yx2xy2)=(000)
  • limx(1,1)f(x)×limx(1,1)g(x)=(111)×(111)=(000)

今回は多変数ベクトル値関数の外積の極限について解説しました。
結局のところは内積と同様で、limはカッコの中に入れて計算してOKということです。

次回は実数値関数と多変数ベクトル値関数の商の極限について解説します。

乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!

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