本記事の内容
本記事は「発散する関数の逆数は0に収束する。」「0に収束する関数の逆数は発散する。」という命題を証明する記事です。
本記事を読むにあたり、ある点付近での関数の発散について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。
では行きましょう!
ある点付近で発散する関数の逆数は0に収束する。
「ある点付近で発散する関数の逆数は0に収束する。」という主張は、形式的には、
1∞=0
ということです。
以前、「数列が”発散する”って?」「”無限大”って?」【解析学の基礎シリーズ】で述べたように、1∞は実数ではありません。
実数ではありませんので、「”形式的には”1∞=0」ということです。
では、主張を明確にしましょう。
Ω⊂Rn、f:Ω→R、a∈ˉΩとする。 このとき、 limx→af(x)=∞⇒limx→a1f(x)=0 が成り立つ。
定理1.の証明
実は簡単です。
示したいことは、limx→af(x)=∞のとき、
(∀ϵ>0) (∃δ>0) s.t. (∀x∈Ω:0<|x−a|<δ⇒|1f(x)|<ϵ)
です。
仮定からlimx→af(x)=∞ですので、
(∀U∈R) (∃δ0>0) s.t. (∀x∈Ω:0<|x−a|<δ0⇒|f(x)|>U)
です。
Uは任意の実数ですので、任意のϵ>0に対してU=1ϵとしても成り立ちます。
故に、0<|x−a|<δ0を満たす任意のx∈Ωに対して|f(x)|>1ϵが成り立っています。
すなわち、0<|x−a|<δ0を満たす任意のx∈Ωに対して|1f(x)|<ϵが成り立っています。
従って、δとしてδ0を採用すれば良いことが分かります。
いじょうのことから
(∀ϵ>0) (∃δ>0) s.t. (∀x∈Ω:0<|x−a|<δ⇒|1f(x)|<ϵ)
が成り立ちます。
定理1.の証明終わり
0に収束する関数の逆数は発散する。
「0に収束する関数の逆数は発散する。」という主張は、形式的には、
10=∞
ということです。
「分母の絶対値をちっちゃくすればするほど、元の数はでっかくなるよね」という直感に対応していますが、本来10は定められておらず、あくまで形式的に過ぎません。
ですが、極限を使うことで無限大であることが表現できます。
では、主張を明確にしましょう。
Ω⊂Rn、f:Ω→R、a∈ˉΩとする。 このとき、 ((∀x∈Ω) f(x)>0 ∧limx→af(x)=0)⇒limx→a1f(x)=∞ が成り立つ。
定理2.の証明
これも簡単です。
示したいことは、任意のx∈Ωに対してf(x)>0であり、かつlimx→af(x)=0のとき、
(∀U∈R) (∃δ>0) s.t. (∀x∈Ω:0<|x−a|<δ⇒1f(x)>U)
です。
仮定からlimx→af(x)=0ですので、
(∀ϵ>0) (∃δ0>0) s.t. (∀x∈Ω:0<|x−a|<δ0⇒|f(x)|<ϵ)
です。
ϵ>0は任意ですので、任意のU∈Rを用いて、ϵ=1|U|+1としても成り立ちます。
故に、0<|x−a|<δ0を満たす任意のx∈Ωに対して|f(x)|<ϵを満たします。
従って、このとき|1f(x)|>1ϵです。
ここで、仮定から、任意のx∈Ωに対してf(x)>0ですので、|f(x)|=f(x)です。
故に
1f(x)=|1f(x)|>1ϵ=|U|+1>U
です。
以上のことから、δ=δ0とすれば良い事がわかるので、
任意のx∈Ωに対してf(x)>0であり、かつlimx→af(x)=0のとき、
(∀U∈R) (∃δ>0) s.t. (∀x∈Ω:0<|x−a|<δ⇒1f(x)>U)
です。
定理2.の証明終わり
本当に成り立つのかネ?
毎度のことながら、「証明したので成り立ちますよ、局長」と言いたいところですが、例があったほうが説得力があるし、さらに理解しやすいと思われるので、簡単ではありますが、例を挙げます。
例1. f:R∖{nπ2|n∈Z}→Rをf(x)=1tanxで定めたとします。
このとき、limx→π2−0f(x)=0です。
※左右極限については【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その6を御覧ください。
証明(というより計算)
証明というよりも計算ですがね(笑)
まずは、limx→π2−0tanx=∞です。
このとき、
limx→π2−01tanx=limx→π2−0cosxsinx=limx→π2−0cosxlimx→π2−0sinx=01=0
です。
証明(というより計算)終わり
例2. 例1. g:Ω={(x,y)∈R2|x2+y2≠0}→Rをg(x)=1x2+y2で定めたとします。
このとき、lim(x,y)→(0,0)1x2+y2=∞です。
証明
示したいことは、
(∀U∈R) (∃δ>0) s.t. (∀(x,y)∈Ω:0<√x2+y2<δ⇒1x2+y2>U)
です。
これも簡単です。
任意のU∈Rに対して、δ=1√|U|+1とすると、0<√x2+y2<δを満たす∀(x,y)∈Ωに対しては、
1x2+y2>1δ2=|U|+1>U
です。
従って、(∀U∈R) (∃δ>0) s.t. (∀(x,y)∈Ω:0<√x2+y2<δ⇒1x2+y2>U)です。
証明終わり
結
今回は、ある点付近で発散する関数の逆数は0に収束する。」「0に収束する関数の逆数は発散する。」ということについて解説、証明しました。
高校数学で数Ⅲ(今はもう違う名前かもしれませんが)で形式的に学んだことを、厳密に証明しました。
直感的には「当たり前じゃね?」ということもしっかり証明できるところが数学の面白さの一つだと思います(筆者は勝手にそう思ってます)。
次回は1変数ベクトル値関数において、x→∞のときのf(x)→aについて解説します。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
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