本記事の内容
本記事は多次元ver.のワイエルシュトラスの最大値定理のイメージとRnにおける開集合、閉集合について説明する記事です。
本記事を読むにあたり、1変数の場合のワイエルシュトラスの最大値定理を知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。
1次元の場合のワイエルシュトラスの最大値定理のチャラい復習
1次元の場合のワイエルシュトラスの最大値定理のイメージとしては単純なもので、

ということでした。
これを数学的に表現すると次でした。
多次元版のイメージも同じようなものです。
言ってしまえば、閉区間が閉領域、一般に閉集合に変わるだけです。
ただ、「閉領域(閉集合)とは何かネ?」という話ですので、まずはそれについて話します。
Rnにおける開集合、閉集合
Rにおける開区間、閉区間の領域ver.のようなものです。
直感的には、
- 開集合:境界(縁)を含まない集合
- 閉集合:境界(縁)を含む集合
です。

これを数学的に表すと、次です。
- Rnの開集合 ΩがRnの開集合(開部分集合、an open (sub)set of Rn)であるとは、 (∀x∈Ω) (∃ϵ>0) s.t. B(x;ϵ)⊂Ω が成り立つことをいう。
- Rnの閉集合 ΩがRnの閉集合(閉部分集合、an close (sub)set of Rn)であるとは、 Ωの補集合Ωc=Rn∖ΩがRnの開集合であることをいう。 すなわち、 (∀x∈Rn∖Ω) (∃ϵ>0) s.t. B(x;ϵ)⊂Rn∖Ω が成り立つことをいう。

※注意※ 開かつ閉な集合もあります(RにおいてはRと∅です)。
Rnの閉集合には次の性質があります。
- KはRnの閉集合である。
- K内の任意の点列{an}n∈Nに対して、{an}n∈Nが(Rnで)収束するならば、その極限はKに属する。 言い換えれば、 (∀{an}n∈N∈K) anがRnで収束する。⇒limn→∞an∈Kが成り立つ。
証明
1.⇒2.の証明
{an}n∈NはK内の点列で、Rnでaに収束しているとします。
示したいことは、a∈Kです。
背理法により証明します。
仮にa∉K、すなわちa∈Kcとしましょう。
KはRnの閉集合ですので、KcはRnの開集合です。
従って、
(∀x∈Kc) (∃ϵ>0) s.t. B(x;ϵ)⊂Kc
が成り立ちます。
x∈Kcは任意なので、x=aとしても成り立ちます。
故に、
(∃ϵ>0) s.t. B(a;ϵ)⊂Kc
が成り立ちます。
一般に、集合A, Bに対してA∩B=∅⇔A⊂Bcですので、B(a;ϵ)∩K=∅です。
ここで、limn→∞an=aですので、
(∀ϵ0>0) (∃N∈N) s.t. (∀n∈N:n≥N⇒|an−a|<ϵ0)
が成り立っています。
このϵ0は任意なので、ϵ0=ϵとしても成り立ちます。
故に、
(∀n∈N:n≥N⇒|an−a|<ϵ)
です。
つまり、n≥Nを満たす任意のn∈Nに対しては、an∈B(a;ϵ)です。
さて、{an}n∈NはK内の点列でしたので、任意のn∈Nに対して、an∈Kです。
すなわち、任意のn∈Nに対して、an∉Kcです。
従って、B(a;ϵ)⊂Kcによりan∉B(a;ϵ)のはずです。
故に、an∈B(a;ϵ)とan∉B(a;ϵ)が同時に成り立ってしまったので矛盾です。
以上のことからa∈Kです。
2.⇒1.の証明
これも背理法で証明します。
KがRnの閉集合でないとしましょう。
すると、Kcは開集合でないので、
(∃a∈Kc) s.t. (∀ϵ>0) B(a;ϵ)⊄Kc
です。
従って、B(a;ϵ)∩K≠∅です。
このϵ>0は任意ですので、任意のn∈Nに対して、ϵ=1nとしても成り立ちます。
{an}n∈NはK内の点列でしたので、任意のn∈Nに対してan∈Kです。
故に、∃an∈B(a;1n)∩Kです。
従って、任意のϵ>0に対して、1N<ϵとなるようなN∈Nを選べば(アルキメデスの原理!)、
∀n∈N:n≥N⇒an∈B(a;1n)⊂B(a;1N)⊂B(a;ϵ)
となるため、これはまさにlimn→∞an=aを表しています。
仮定から{an}n∈Nの極限はKの要素なので、a∈Kです。
故にa∈Kcとa∉Kcが同時に成り立ってしまったので矛盾です。
以上のことからKは閉集合です。
証明終わり
多次元版のワイエルシュトラスの最大値定理のイメージ
前置きが長くなってしまいましたが、多次元版のワイエルシュトラスの最大値定理のイメージを説明します。
一言で述べてしまえば、
ということです。
1次元版と何ら変わりません。
簡単ですが、例を挙げます。
例. Ω={x∈Rn∣|x|≤1}とし、f:Ω→Rがf(x,y)=x2+y2で定められているとします。
このとき、Ωは閉集合であり、かつfはΩで連続です。
fは多項式関数ですので、Ωで連続です(証明は【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その12を御覧ください)。
Ω閉集合であることについては簡単に証明できます。
ΩがRnの閉集合であることの証明
示したいことは、
(∀x∈Ωc) (∃ϵ>0) s.t. B(x;ϵ)⊂Ωc
です。
要は、上記を満たすϵ>0を見つけてくれば良いというわけです。
Ωc={z∈R2∣|z|≥1}に注意します。
任意のz∈Ωcに対して、ϵ=|z|−1とします。
すると、w∈B(z;|z−1|)は|z−w|<|z|−1を満たします。
故に、
|z|−|w|≤|z−w|<|z|−1
により、|w|>1です。
従って、w∈Ωcですので、ΩはR2の閉集合です。
証明終わり
このfのグラフは次になります。

このとき、fはx2+y2=1を満たす(x,y)で最大値1を取ります。
つまり、(a,b)∈{(x,y)∈R2∣x2+y2=1}に対して、f(a,b)=1です。
一方、(x,y)=(0,0)で最小値0を取ります。
このように、定義域が閉集合で、かつ定義域で連続な多変数実数値関数は必ず最大値と最小値があります。
結
今回はRnの開集合、閉集合、多次元バージョンのワイエルシュトラスの最大値定理のイメージを説明しました。
Rnにおいての開集合のイメージは「境界(縁)を含まない集合」で、閉集合のイメージは「境界(縁)を含む集合」です。
多次元版ワイエルシュトラスの最大値定理のイメージとしては、
ということです。
次回は多次元版ワイエルシュトラスの最大値定理の証明と、その証明のために必要な点列の場合のボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理の証明をします。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
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