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「連続な多変数ベクトル値関数と\(0\)でない連続な多変数実数値関数の商も連続な関数」【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その11

多変数関数

本記事の内容

本記事は「連続な多変数ベクトル値関数と\(0\)でない連続な実数値関数の商も連続な関数」ということを説明する記事です。

本記事を読むにあたり多変数ベクトル値関数の連続について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。

多変数ベクトル値関数の連続のチャラい復習

多変数ベクトル値関数の連続をチャラく復習します。
イメージとしては

サラッとですが、イメージを復習しておきます。

  • 実数値関数の場合
    • 曲面の場合、定義域(領域)内のとある点において、穴が無い。もしくは、定義域(領域)内のどの点でも穴が無い。
    • 曲線の場合、定義域(領域)内のとある点において、途切れていない。もしくは、定義域(領域)内のどの点でも途切れていない。
  • ベクトル値関数の場合
    矢印が連続的に変化する。

でした。

一方これを数学で表現すると、

多変数ベクトル値関数の連続 \(\Omega\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域、\(\boldsymbol{f}:\Omegaと\to\mathbb{R}^m\)とする。
  • \(\boldsymbol{a}\in\Omega\)とする。\(\boldsymbol{f}\)が\(\boldsymbol{a}\in\Omega\)で連続(continuous at \(\boldsymbol{a}\))であるとは、 $$\lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})=\boldsymbol{f}(\boldsymbol{a})$$ が成り立つことをいう。
  • すなわち、 $$(\forall \epsilon>0)(\exists \delta>0)\ {\rm s.t.}\ (\forall\boldsymbol{x}\in\Omega;\ 0<|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a}|<\delta\Rightarrow |\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})-\boldsymbol{f}(\boldsymbol{a})|<\epsilon)$$ が成り立つことをいう。
  • \(\boldsymbol{f}\)が\(\Omega\)で連続である(continuous on \(\Omega\))とは、任意の\(\boldsymbol{a}\in \Omega\)に対して、\(\boldsymbol{f}\)が\(\boldsymbol{a}\)で連続であることをいう。
  • すなわち、 $$(\forall \boldsymbol{a}\in\Omega)(\forall \epsilon>0)(\exists \delta>0)\ {\rm s.t.}\ (\forall \boldsymbol{x}\in\Omega:\ 0<|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a}|<\delta\Rightarrow |\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})-\boldsymbol{f}(\boldsymbol{a})|<\epsilon)$$ が成り立つことをいう。

でした。
さらに、

多変数ベクトル値関数の連続と同値な命題 \(\Omega\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域、\(\boldsymbol{f}:\Omegaと\to\mathbb{R}^m\)とする。
  • \(\boldsymbol{f}\)が\(\boldsymbol{a}\in\Omega\)で連続であることは\(f_i\ (i=1,2,\dots,m)\)が\(\boldsymbol{a}\in\Omega\)で連続であることが必要十分条件である。
  • \(\boldsymbol{f}\)が\(\Omega\)で連続であることは\(f_i\ (i=1,2,\dots,m)\)が\(\Omega\)で連続であることが必要十分条件である。

から多変数ベクトル値関数が連続かどうかは成分ごとに考えれば良い、ということでした。
詳しくは、【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その8を御覧ください。

連続な多変数ベクトル値関数と\(0\)でない連続な実数値関数の商も連続な関数

定義域と終域が一致している連続な多変数ベクトル値関数と\(0\)でない実数値関数は商をとってもまた連続な関数です。
まずは、主張を明示してしまいましょう。

定理1. \(\Omega\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域、\(\boldsymbol{f}:\Omega\to\mathbb{R}^m\)、\(g:\Omega\to\mathbb{R}\)とする。このとき、 $$ B\neq0\Rightarrow \exists \delta_0>0\ {\rm s.t.}\ (\forall x\in\Omega;0<|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a}|<\delta_0\Rightarrow g(\boldsymbol{x})\neq0) $$ であるとする。
  • \(\boldsymbol{a}\in\Omega\)とし、\(\boldsymbol{f}\)と\(g\)は\(\boldsymbol{a}\)で連続とするとき、\(\displaystyle\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}\)は\(\boldsymbol{a}\)で連続である。すなわち、 $$ \lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}=\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{a})}{g(\boldsymbol{a})} $$ が成り立つ。
  • \(\boldsymbol{f}\)と\(g\)は\(\Omega\)で連続とするとき、\(\displaystyle\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}\)は\(\Omega\)で連続である。すなわち、 $$(\forall \boldsymbol{a}\in\Omega)\quad\lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}=\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{a})}{g(\boldsymbol{a})}$$ が成り立つ。

さて、実はこれの証明は既に行っているようなものです。
というのも、次を既に証明しているからです。

定理2.(多変数ベクトル値関数と実数値関数の商の極限) \(\Omega\subset\mathbb{R}^n\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域、\(\boldsymbol{f}:\Omega\to\mathbb{R}^m\)および\(g:\Omega\to\mathbb{R}\)を写像(関数)、\(\boldsymbol{a}\in\bar{\Omega}\)、\(\boldsymbol{A}\in\mathbb{R}^m\)、\(B\in\mathbb{R}\)とする。\(\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}\)のとき\(\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})\)が\(\boldsymbol{A}\)に、\(g(\boldsymbol{x})\)が\(B\)に収束するとする。 このとき、 $$ B\neq0\Rightarrow \exists \delta_0>0\ {\rm s.t.}\ (\forall x\in\Omega;0<|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a}|<\delta_0\Rightarrow g(\boldsymbol{x})\neq0) $$ であれば、 $$ \lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}=\frac{\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}f(\boldsymbol{x})}{\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}g(\boldsymbol{x})}=\frac{\boldsymbol{A}}{B} $$ が成り立つ。

この事実(定理2.)の証明は【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その4を御覧ください。

定理1.定理2.において、\(\boldsymbol{A}=\boldsymbol{f}(\boldsymbol{a})\)、\(B=g(\boldsymbol{a})\)とすれば良いからです。

そういう意味で定理1.の証明は既に終わっているようなもの、ということです。

本当に成り立つのかネ?

いつもの通り、簡単ではありますが、例を挙げます。

例.\(\Omega=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2|x+y\neq 0\}\)、\(\boldsymbol{f}:\Omega\to\mathbb{R}^2\)と\(g:\Omega\to\mathbb{R}\)が
$$\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})=\left(
\begin{array}{c}
x \\
y\\
\end{array}\right),\quad
g(\boldsymbol{x})=x+y
$$
で定められているとします。
\(\boldsymbol{x}\to(1,1)\)の連続性を考えてみましょう。
このとき、
$$\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to(1,1)}\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}=\frac{\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to(1,1)}\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to(1,1)}g(\boldsymbol{x})}=\frac{1}{2}\cdot \left(\begin{array}{c}1\\ 1\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c} \displaystyle\frac{1}{2}\\ \displaystyle\frac{1}{2}\end{array}\right)=\frac{\boldsymbol{f}(1,1)}{g(1,1)}$$
ですので、\(\displaystyle\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}\)は\(\boldsymbol{x}=(1,1)\)で連続です。

また、\(\displaystyle\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}\)は任意の\(\boldsymbol{a}=(a,b)\in\Omega\)で連続です。

実際、\(\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}x=a\)、\(\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}y=b\)、\(\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to\boldsymbol{a}}(x+y)=a+b\)ですので、
$$\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to(a,b)}\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}=\frac{\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to(a,b)}\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{\displaystyle\lim_{\boldsymbol{x}\to(a,b)}g(\boldsymbol{x})}=\frac{1}{a+b}\cdot \left(\begin{array}{c}a\\ b\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c} \displaystyle\frac{a}{a+b}\\ \displaystyle\frac{b}{a+b}\end{array}\right)=\frac{\boldsymbol{f}(a,b)}{g(a,b)}$$
です。
すなわち、\(\displaystyle\frac{\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})}{g(\boldsymbol{x})}\)は任意の\(\boldsymbol{a}=(a,b)\in\Omega\)で連続です。

今回は、多変数ベクトル値関数と\(0\)でない多変数実数値関数の商の連続について解説しました。
結局の所、多変数ベクトル値関数と\(0\)でない多変数実数値関数の商の極限から直ちに分かるということでした。

次回は、多変数多項式関数の連続について解説します。

乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!

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