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「累次積分の計算は、なぜ1変数の積分の繰り返しなのか?」【解析学の基礎シリーズ】積分編 その25

積分法

本記事の内容

本記事は「累次積分の計算は1変数の積分の繰り返しである。」という事実を証明する記事です。

本記事を読むにあたり、累次積分の区間に関する分割について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。

本記事で言いたいこと

本記事で言いたいことは誠にシンプルです。
累次積分を導入して記事で述べたことです。
つまり、

本記事で言いたいこと
n次元の有界閉区間I=[a1,b1]×[a2,b2]××[an,bn]上で定められた可積分関数f(x)=f(x1,x2,,xn)の積分は If(x) dx=b1a1{b2a2{{bnanf(x1,x2,,xn) dxn}}dx2}dx1 のように各変数xiについての積分をn回繰り返すことで得られる。

です。
要するに、

例1. I=[0,a]×[0,b](x2+y2) dxdyは、

I=a0{b0(x2+y2) dy}dx=a0[x2y+13y3]y=by=0 dx=a0(bx2+13b3) dx=[13bx3+13b3x]a0=ab3(a2+b2)
と計算できる、ということです。

この計算は既に例として挙げていますが、「1つ目の等式が成り立つのはなぜか?」ということを今回で証明しよう、ということです。

主張の明示とその証明

では、主張を明示して証明します。

主張の明示

定理0.

fI=[a1,b1]××[an,bn]で可積分かつ有界な関数で、1knを満たす任意のkNに対して、次の条件(Pk)を満たすとする。
条件(Pk)
I=[a1,b1]××[ak,bk]=Jkの任意の点(x1,,xk)を固定するとき、関数 fx1,,xk:(xk+1,,xn)f(x1,,xn)Kk=[ak+1,bk+1]××[an,bn]上で可積分である。
このとき、次の等式が成り立つ。 If(x) dx=b1a1{b2a2{{bnanf(x1,x2,,xn) dxn}}dx2}dx1

では、証明に入っていきましょう。

主張の証明

定理0.の証明

nに関する数学的帰納法で証明します。

(1)n=1のとき

つまり、1変数の場合の積分そのものですので、成り立ちます。

(2)n>1のとき

n>1として、n1のときに定理は成り立つとします。
仮定(P1)により、任意のx1[a1,b1]を固定すると、関数
fx1:(x2,x3,,xn)f(x1,x2,x3,,xn)
は区間K1=[a2,b2]××[an,bn]上で可積分です。
そこで、次の事実を使います。

定理2.

有界な実数値関数f:I=J×KRが次の2つの条件1.、2.を満たすとする。
  1. fI上で可積分である。
  2. xJを固定するとき、yの関数fx:yf(x,y)K上で可積分である。
このとき、F(x)=Kf(x,y) dyJ上で可積分で If(z) dz=J{Kf(x,y) dy}dx  が成り立つ。

定理2.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その23を御覧ください。

定理2.から
If(x) dx=b1a1{K1f(x1,x2,x3,,xn) dx2dxn}dx1
が成り立ちます。
次に、関数fx1に対して、数学的帰納法の仮定を適用できるわけですので、
K1f(x1,x2,x3,,xn) dx2dxn=b2a2{{bnanf(x1,x2,x3,,xn)dxn}}dx2
が成り立ちます。
この式を②に代入すると、
If(x) dx=b1a1{K1f(x1,x2,x3,,xn) dx2dxn}dx1=b1a1{b2a2{{bnanf(x1,x2,x3,,xn)dxn}}dx2}dx1
となるため、定理0.が成り立ちます。

定理0.の証明終わり

定理0.についての補足

この定理0.のおかげでやっとn次元区間上の積分が1変数関数の積分の繰り返しであることが保証されます。
故に、以前の記事で解説した1変数関数の重要な事実(微分積分学の基本定理、置換積分、部分積分、不定積分の計算方法)が、多変数関数の積分についても有効になります。

関数が連続であれば、自動的に定理0.と定理2.が成り立ちます。

もし、考察する関数が連続であれば、定理0.の仮定も定理2.の仮定も同時に満たします。
故に、連続であれば定理0.定理2.が成り立ちます。

定理3.

n次元の有界な閉区間Iを、p次元区間Jq次元区間Kとの直積I=J×Kと分解し、Iの任意の要素zz=(x,y) (xJ,yK)と書いたとする。このとき、fIで連続であれば、f定理2.の仮定1.、2.、すなわち
  1. fI上で可積分である。
  2. xJを固定するとき、yの関数fx:yf(x,y)K上で可積分である。
を満たし、fに対して If(z) dz=J{Kf(x,y) dy}dx が成り立つ。また、定理0.の仮定(Pk) (1kn)、すなわち
条件(Pk)
I=[a1,b1]××[ak,bk]=Jkの任意の点(x1,,xk)を固定するとき、関数 fx1,,xk:(xk+1,,xn)f(x1,,xn)Kk=[ak+1,bk+1]××[an,bn]上で可積分である。
も満たし、 If(x) dx=b1a1{b2a2{{bnanf(x1,x2,,xn) dxn}}dx2}dx1 が成り立つ。

定理3.の証明

まず、fは閉集合I上で連続なので、仮定1.を満たします。
実際、次が成り立つからです。

定理4.(連続関数の可積分性)

Rnの有界閉集合I上で連続な関数f:IRmは、I上で可積分である。

定理4.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その12を御覧ください。

fは連続なので、各xJに対してxを固定した関数fx:yf(x,y)も連続です。
故に、fxK上で可積分ですので、仮定2.も満たされます。
従って、定理2.により④、すなわち
If(z) dz=J{Kf(x,y) dy}dx
が成り立ちます。
同様にして、n次元区間Iをどのように区切ってJKとしても良いわけですので、先程と全く同じ議論から条件(Pk)を満たします。
故に
If(x) dx=b1a1{b2a2{{bnanf(x1,x2,,xn) dxn}}dx2}dx1
が成り立ちます。

定理3.の証明終わり

くどいようですが、計算してみます。

くどいようですが、実際に計算してみましょう。

例5. J=[0,π2]×[0,π]sin(x+y) dxdyを計算してみます。

I=[0,π2]×[0,π]としたとき、sin(x+y)Iで連続ですので、定理3.が適用できます。
従って、
J=π20[cos(x+y)]y=πy=0 dx=2π20cosx dx=2[sinx]x=π2x=0=2
です。

2次元だけでなく、3次元の場合にも計算してみましょう。

例6. fI=[a,b]×[c,d]×[g,h]で連続であれば、w=(x,y,z)としたとき、定理2.定理3.から
If(w) dw=ba{[c,d]×[g,h]f(x,y,z) dydz}dx=ba{dc{hgf(x,y,z) dz}dy}dx=hg{dc{baf(x,y,z) dx}dy}dz
などが成り立ちます。

ちょっと踏み込んだお話(多変数関数の微分と積分の関係)

1変数関数の微分と積分の関係は微分積分学の基本定理により互いに逆演算である、ということを述べました。

定理7.(微分積分学の基本定理)

IRの有界閉区間、fI上の実数値関数、すなわちf:IRとする。このとき以下の2つが成り立つ。
  1. fIで微分可能で、導関数fI上で可積分(例えば、連続)ならば、任意のa,bIに対して baf(x) dx=f(b)f(a) が成り立つ。
  2. fI上で可積分で、1点xIで連続ならば、fの不定積分F(x)=xaf(y) dyxで微分可能で、F(x)=f(x)が成り立つ。

定理7.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その14をご覧ください。

多変数関数では、こkの関係が色々な方向へ分岐します。
例えば、ベクトル解析におけるガウス・ストークスの定理は、dωの積分をωの境界上の値で表す事ができるという主張で、微分積分法の基本公式の多変数関数版とみなすことができます。

ここでは、定理3.を利用して、微分積分学の基本定理の1.の2変数関数への直接的な拡張を与えます。

例8. R2の区間I=[a,b]×[c,d]上で関数F(x,y)の偏導関数f(x,y)=2F(x,y)xyが存在して、かつ連続であれば、
I2Fxy(x,y) dxdy=F(b,d)F(b,c)F(a,d)+F(a,c)()
が成り立ちます。

実際、定理3.定理7.(微分積分学の基本定理)から、
I2Fxy(x,y) dxdy=dc{ba2Fxy(x,y) dx}dy=dc{Fy(b,y)Fy(a,y)}dy=F(b,d)F(b,c)F(a,d)+F(a,c)
が成り立ちます。

今、主張をシンプルにするためにf(x,y)=2F(x,y)xyが連続だと仮定しましたが、fI上で可積分とするだけで同じ結論が成り立ちます。
この結果はn変数関数にも同様にして拡張できます。

皆様のコメントを下さい!

記事内容とは全く関係ないお話をします。

筆者はMARVEL作品が結構好きで色々と見ているのですが、ついこの前「ソー ラブ&サンダー」を観ました。
面白かったですが、ちょっと悲しい感じでした。
映画でいうと、MARVEL作品ではありませんが、ベネディクト・カンバーバッチが主演の「イミテーション・ゲーム」も面白いです。
第2次世界大戦中に活躍したイギリスの数学者アラン・チューリングを描いた作品です。

皆様のオススメの映画をコメントで教えて下さい!

今回は、累次積分が1変数の積分の繰り返しとなる、ということを証明しました。
今回示した定理0.により、多変数の積分といえど、結局は1変数の積分を何度も繰り返すことで計算が可能だ、ということが保証されます。
さらに、今回示した定理0.により、多変数の微分積分学の基本定理に拡張できます。

今回で、積分編は一旦おしまいです。
少々お休みをいただきます。

乞うご期待!
質問、コメントなどお待ちしております!
どんな些細なことでも構いませんし、「定理〇〇の△△が分からない!」などいただければ全てお答えします!
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この記事の内容をより詳しく知りたい方は以下のリンクの本を参照してください!
ちなみに「解析概論」は日本の歴史的名著らしいので、辞書的にもぜひ1冊持っておくと良いと思います!

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