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「二次無理関数の不定積分の計算方法」【解析学の基礎シリーズ】積分編 その22

積分法

本記事の内容

本記事は二次の無理関数の不定積分の計算方法について解説する記事です。
本記事を読むにあたり、置換積分について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。

どんな形の積分ですか?

一言でいうと、二次の無理関数\(\sqrt{ax^2+bx+c}\)が絡む有理式の積分です。

一旦計算してみます。

例1. \(\displaystyle I=\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}\ dx\)を計算してみます。

これは\(x=\tan\theta\)と置換することで求めることができます。
このとき、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=\frac{1}{\cos^2\theta}\)ですので、
\begin{eqnarray}
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}\ dx&=&\int\frac{1}{\sqrt{\tan^2\theta+1}}\cdot\frac{1}{\cos^2\theta}\ d\theta\\
&=&\int\frac{1}{\displaystyle\sqrt{\frac{1}{\cos^2\theta}}}\cdot\frac{1}{\cos^2\theta}\ d\theta\\
&=&\int\cos\theta\cdot\frac{1}{\cos^2\theta}\ d\theta\\
&=&\int\frac{1}{\cos\theta}\ d\theta\\
\end{eqnarray}
となります。

この積分は前回(【解析学の基礎シリーズ】積分編 その21)計算したように、
$$
\int\frac{1}{\cos\theta}\ d\theta=\int\frac{\cos\theta}{1-\sin^2\theta}\ d\theta
$$
と変形して、\(t=\sin\theta\)と置換することで
\begin{eqnarray}
\int\frac{1}{\cos\theta}\ d\theta&=&\int\frac{1}{1-t^2}\ dt\\
&=&\log\left|\frac{1+\sin\theta}{\cos\theta}\right|+C
\end{eqnarray}
となります。
ここで、\(x=\tan\theta\)だったので、
\begin{eqnarray}
x^2+1&=&\tan^2\theta+1=\frac{1}{\cos^2\theta}
\end{eqnarray}
だから、\(\displaystyle\cos\theta=\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}\)です。
従って、
\begin{eqnarray}
\log\left|\frac{1+\sin\theta}{\cos\theta}\right|=\log\left|\frac{1}{\cos\theta}+\tan\theta\right|=\log\left|x+\sqrt{x^2+1}\right|
\end{eqnarray}
となるため、
\begin{eqnarray}
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}\ dx=\log\left|x+\sqrt{x^2+1}\right|+C
\end{eqnarray}
となります。

何が言いたいんですか?

先程の例1.で言いたいことは、

二次の無理関数の積分を置換積分によって、三角関数の有理式の積分に帰着させ、さらに置換積分をすることで、最終的に有理関数の積分に帰着させることができる、

ということです。
実際に見てみると、
$$
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}\ dx=\int\frac{1}{\cos\theta}\ d\theta=\int\frac{1}{1-t^2}\ dt
$$
というように、三角関数の有理式を経由して最終的には有理関数の積分に帰着されます。

二次無理関数の積分は有理関数の積分に帰着されます。

さきほどの主張を定理として明示して証明します。

主張の明示

定理2.

\(R(x,y)\)が実有理式であるとき、積分\(\displaystyle\int R\left(x,\sqrt{ax^2+bx+c} \right)\ dx\ (a,b,c\in\mathbb{R},\ a\neq0)\)は、有理関数の積分に変換される。

この主張では「三角関数の有理式を経由して」ということは書かれていませんが、証明の道中で三角関数の有理式を経由します。

主張の証明

では、証明に入ります。
なんてことありません。

定理2.の証明

\(ax^2+bx+c\)を平方完成すると、
\begin{eqnarray}
ax^2+bx+c&=&a\left( x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2}{4a}+c\\
&=&a\left\{\left( x+\frac{b}{2a}\right)^2-\frac{b^2}{4a^2}+\frac{c}{a}\right\}
\end{eqnarray}
となります。
故に、\(\sqrt{ax^2+bx+c}\)の項は

  1. \(\sqrt{k^2-X^2}\)
  2. \(\sqrt{X^2-k^2}\)
  3. \(\sqrt{X^2+k^2}\)

のいずれかの形になります。
\(X\)を新たに\(x\)と書き直して、上記の1.、2.、3.のそれぞれに対して

  1. \(x=k\sin\theta\)
  2. \(\displaystyle x=\frac{k}{\cos\theta}\)
  3. \(x=k\tan\theta\)

と置換します。
このとき二次式の平方根\(r\)と\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}\)は

  1. \(r=k\cos\theta\)、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=k\cos\theta\)
  2. \(r=k\tan\theta\)、\(\displaystyle \frac{dx}{d\theta}=\frac{k\sin\theta}{\cos^2\theta}\)
  3. \(\displaystyle r=\frac{k}{\cos\theta}\)、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=\frac{k}{\cos^2\theta}\)

となります。
つまり、

  1. \(\displaystyle\int R\left(x,\sqrt{ax^2+bx+c} \right)\ dx=\int R\left(k\sin\theta,k\cos\theta\right)\cdot k\cos\theta\ d\theta\)
  2. \(\displaystyle\int R\left(x,\sqrt{ax^2+bx+c} \right)\ dx=\int R\left(\frac{k}{\cos\theta},k\tan\theta\right)\cdot \frac{k\sin\theta}{\cos^2\theta}\ d\theta\)
  3. \(\displaystyle\int R\left(x,\sqrt{ax^2+bx+c} \right)\ dx=\int R\left(k\tan\theta,\frac{k}{\cos\theta}\right)\cdot \frac{k}{\cos^2\theta}\ d\theta\)

となります。
新たに、

  • \(\displaystyle R\left(k\sin\theta,k\cos\theta\right)\cdot k\cos\theta=R_1(\cos\theta,\sin\theta)\)
  • \(\displaystyle R\left(\frac{k}{\cos\theta},k\tan\theta\right)\cdot \frac{k\sin\theta}{\cos^2\theta}=R_2(\cos\theta,\sin\theta)\)
  • \(\displaystyle R\left(k\tan\theta,\frac{k}{\cos\theta}\right)\cdot \frac{k}{\cos^2\theta}=R_3(\cos\theta,\sin\theta)\)

と書くことができます。
ここで、以下の事実を使います。

定理3.

\(R(z,w)\)が2つの文字\(z,w\)の有理式である時、\(\displaystyle\tan\frac{x}{2}=t\)とおけば $$ \int R\left(\cos x,\sin x \right)\ dx=\int R\left(\frac{1-t^2}{1+t^2},\frac{2t}{1+t^2} \right)\cdot\frac{2}{1+t^2}\ dt $$ が成り立つ。すなわち、三角関数の有理式の積分は有理関数の積分に帰着する。

定理3.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その21を御覧ください。

定理3.により、各1.、2.、3.の積分は有理関数の積分に変換されます。
以上のことから、二次の無理関数の積分は有理関数の積分に帰着されます。

定理2.の証明終わり

三角関数を経由するのは面倒じゃないですか?

確かに、面倒かもしれません。
実は、特定の場合は三角関数を経由せずに有理関数に帰着することもできます。

一般に、二次式\(y=ax^2+bx+c\)で、\(a>0\)の場合は\(y\geq0\)の区間で
$$
t=\sqrt{a}x+\sqrt{ax^2+bx+c}
$$
とおけば、積分\(\displaystyle\int R\left( x,\sqrt{ax^2+bx+c}\right)\ dx\)は\(t\)に関する有理関数の積分となります。
\(a<0\)で、かつ二次式が相異なる2つの実根\(\alpha<\beta\)を持つときは
$$
t=\sqrt{(x-\alpha)(x-\beta)}
$$
とおくことで有理関数の積分に帰着することができます(実際に計算してみると分かります)。

皆様のコメントを下さい!

この記事の内容と全く関係ないことを話します。
このブログでも紹介しましたが、筆者は万年筆を愛用しています。
筆者が使っているのは、インクの入ったビンからインクを吸い出して万年筆に入れるコンバータ形式の万年筆です。

万年筆により、一回で入るインクの量は異なりますが、修士のときは1日に1回はインクを補充しないといけないくらい書いていました。
それ故、比較的頻繁に文房具屋さんに(当時は新宿の世界堂に)インクを買いに行っていました。
その時店員さんに「お客様、結構頻繁にいらしていますけれど、小説家か何かですか?」と言われたことがあります。
そのとき、「いえ、小説家ではないのですが、数学をやっておりまして…」と答えて「沢山文字を書かれるんですね」と言われました。

皆様はどんなペンをお使いですか?
どのくらいでインクが無くなりますか?

もし万年筆を使っていらっしゃる方がいれば、どのくらいでインクが無くなるか、コメントを教えて下さい!(筆者の減りが早すぎるのか知りたいので…)

今回は、二次の無理関数の不定積分の計算方法について解説しました。
二次の無理関数の不定積分の計算は、三角関数の有理式を経由することで有理関数の積分に帰着されます。
実は、三角関数を経由せずともよいのですが、最終的には有理関数の積分に帰着されます。

次回は、累次積分、つまり多変数の積分の計算について解説します。

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ちなみに「解析概論」は日本の歴史的名著らしいので、辞書的にもぜひ1冊持っておくと良いと思います!

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