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「置換積分(変数変換公式)?」【解析学の基礎シリーズ】積分編 その18

積分法

本記事の内容

本記事は置換積分について厳密に解説する記事です。

本記事を読むにあたり、 原始関数、微分積分学の基本定理について知っている必要があるため、以下の期jも合わせてご覧ください。

↓原始関数の記事

↓微分積分学の基本定理の記事

本記事で言いたいこと

以前の記事で
$$
\int_0^1x\ dx=\left[ \frac{1}{2}x^2\right]_0^1=\frac{1}{2}(1^2-0^2)=\frac{1}{2}(1-0)=\frac{1}{2}
$$
という計算方法が正しい計算方法であるのは、微分積分学の基本定理が成り立つからだということを説明しました。

高校数学で習った他の計算方法で、代表的なものとして置換積分と部分積分が挙げられると思います。
置換積分とはどういうものだったか、ということを軽く高校数学の範囲で復習しておきます。

高校数学での置換積分の軽い復習

例1. \(\displaystyle\int_0^1\frac{1}{1+x^2}\ dx\)を求めてみます。
「え?この積分は置換積分をするまでもないんじゃない?」と思った方、鋭いです。
なぜなら、前々回に\(\displaystyle\frac{1}{1+x^2}\)の原始関数は\(\arctan x\)だということを示したからです(詳しくは【解析学の基礎シリーズ】積分編 その16を御覧ください)。

しかし、高校ではこれは置換積分を用いて計算します。
どう計算するかを復習しましょう。

\(x=\tan\theta\)とします。
このとき、\(x\)の範囲は\(0\leq x\leq 1\)ですので、\(0\leq \tan\theta\leq 1\)です。
この不等式を満たす\(\displaystyle-\frac{\pi}{2}\leq\theta\leq\frac{\pi}{2}\)は\(\displaystyle0\leq\theta\leq\frac{\pi}{4}\)です。
勿論、\(\displaystyle-\frac{\pi}{2}\leq\theta\leq\frac{\pi}{2}\)という仮定を抜きにして\(\displaystyle\pi\leq\theta\leq\frac{5}{4}\pi\)としてもOKです。

このとき、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=\frac{1}{\cos^2\theta}\)で、\(\displaystyle\frac{1}{1+x^2}=\frac{1}{1+\tan^2\theta}=\cos^2\theta\)です。
故に、
\begin{eqnarray}
\int_0^1\frac{1}{1+x^2}\ dx=\int_0^{\frac{\pi}{4}}\cos^2\theta\cdot\frac{1}{\cos^2\theta}\ d\theta=\int_0^{\frac{\pi}{4}}1\ d\theta=\frac{\pi}{4}
\end{eqnarray}
と計算できます。

「そうだったね。」という感じだと思います。
もし、高校数学で置換積分を学んでいない方は形式的に「\(x\)の範囲を\(\theta\)の範囲に直して、\(\displaystyle\frac{dx}{d\theta}=\frac{1}{\cos^2\theta}\)だから\(\displaystyle dx=\frac{1}{\cos^2\theta}d\theta\)と書き直して、後は元の積分に代入するんだね。」という感覚でOKです。
「本当にそれでいいの?」という感じかもしれませんが、形式的にはこれでOKです。

※ちなみに、例1.の形の積分は高校数学では定積分でしか出現しません。
なぜなら、例1.の関数の原始関数は\(\arctan\)で、高校数学では出現しないからです。

置換積分の主張の明示とその証明

前置きが長くなってしまいましたが、置換積分の主張を明示、証明します。

置換積分の主張の明示

定理2.(置換積分)

関数\(f:I=[a,b]\to\mathbb{R}\)、\(\varphi:J=[\alpha,\beta]\to\mathbb{R}\)が次の1.から4.を満たすとする。
  1. \(f\)は\(I\)で連続である。
  2. \(\varphi\)は\(J\)で微分可能である。
  3. \(\varphi^\prime\)は\(J\)で有界かつ可積分である(例えば、連続)。
  4. \(\varphi(J)\subset I,\ \varphi(\alpha)=a,\ \varphi(\beta)=b\)
このとき、 $$ \int_a^bf(x)\ dx=\int_\alpha^\beta f\left(\varphi(t) \right)\varphi^\prime(t)\ dt\cdots(*) $$ が成り立つ。

この定理2.の証明には、今まで証明した様々な事実をてんこ盛りで使います。

置換積分の証明

では、証明に入っていきます。

定理2.の証明

まず、微分積分学の基本定理を使います。

定理0.(微分積分学の基本定理)

\(I\)を\(\mathbb{R}\)の有界閉区間、\(f\)を\(I\)上の実数値関数、すなわち\(f:I\to\mathbb{R}\)とする。このとき以下の2つが成り立つ。
  1. \(f\)が\(I\)で微分可能で、導関数\(f^\prime\)が\(I\)上で可積分(例えば、連続)ならば、任意の\(a,b\in I\)に対して $$ \int_a^bf^\prime(x)\ dx=f(b)-f(a) $$ が成り立つ。
  2. \(f\)が\(I\)上で可積分で、1点\(x\in I\)で連続ならば、\(f\)の不定積分\(\displaystyle F(x)=\int_a^xf(y)\ dy\)は\(x\)で微分可能で、\(F^\prime(x)=f(x)\)が成り立つ。

定理0.(微分積分学の基本定理)の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その14を御覧ください。

\(f\)の不定積分\(\displaystyle F(x)=\int_a^x f(y)\ dy\)は、仮定1.と定理0.から微分可能です。
ちなみに、\(f\)の可積分性であるのは、\(f\)が閉区間\(I\)で連続だからです(詳しくは【解析学の基礎シリーズ】積分編 その12を御覧ください)。

さらに、定理0.から\(F^\prime(x)=f(x)\ (\forall x\in I)\)です。
ここで、\(F\)と\(\varphi\)の合成関数\(F\circ\varphi:I\supset\varphi(J)\to\mathbb{R}\)の微分を考えます。
合成関数の微分法を使います。

定理3.(合成関数の微分法)

\(I,\ J\subset\mathbb{R}\)を\(\mathbb{R}\)の開区間、\(f:I\to\mathbb{R},\ g:J\to\mathbb{R}\)とする。このとき、\(f(I)\subset J\)とする。 \(f\)が\(a\in I\)で微分可能であり、\(g\)が\(b=f(a)\)で微分可能なとき、合成関数\(g\circ f\)は\(a\)で微分可能である。 さらに、 $$(g\circ f)^\prime(a)=g^\prime(b)f^\prime(a)$$ が成り立つ。

定理3.の証明は【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その3を御覧ください。

定理3.から
\begin{eqnarray}
\left( F\circ\varphi\right)^\prime(t)=F^\prime\left( \varphi(t)\right)\varphi(t)=f\left( \varphi(t)\right)\varphi^\prime(t)\cdots①
\end{eqnarray}
です。
仮定2.から\(\varphi\)は\(J\)で微分可能なので、\(J\)で連続です(詳しくは【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その3を御覧ください)。
従って、\(f\)が\(I\)で連続なので、連続な関数の合成関数もまた連続関数だから\(f\left( \varphi(t)\right)\)は\(J\)上で連続な関数です。
故に、\(f\left( \varphi(t)\right)\)は\(J\)上で可積分です(詳しくは【解析学の基礎シリーズ】積分編 その12を御覧ください)。

さらに、仮定3.から\(\varphi^\prime(t)\)が\(J\)上で可積分なので、\(f\left( \varphi(t)\right)\varphi^\prime(t)\)も\(J\)上で可積分です。
実際、以下が成り立つからです。

定理4.

\(I\subset\mathbb{R}^n\)とする。2つの有界な関数\(f\)、\(g\)が\(I\)上で可積分であれば、積\(fg\)も\(I\)上で可積分である。

定理4.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その8を御覧ください。

ここで、定理0.の1.と①から、
\begin{eqnarray}
\int_\alpha^\beta f\left(\varphi(t)\right)\varphi^\prime(t)\ dt&=&\int_\alpha^\beta\left( F\circ\varphi\right)^\prime(t)\ dt\\
&=&\left( F\circ\varphi\right)(\beta)-\left( F\circ\varphi\right)(\alpha)\\
&=&F\left(\varphi(\beta)\right)-F\left(\varphi(\alpha)\right)\\
&=&F(b)-F(a)\\
&=&\int_a^bf(x)\ dx
\end{eqnarray}
が成り立ちます。

定理2.の証明終わり

実際に計算してみよう!

ということで、実際に計算してみます。

例5. \(\displaystyle\int_2^3\frac{x}{\sqrt{x-1}}\ dx\)を置換積分で計算してみます。
この例は定理2.において

  • \(I=[2,3]\)、
  • \(\displaystyle f:I\to\mathbb{R},\quad f(x)=\frac{x}{\sqrt{x-1}}\)

です。
このとき、\(f\)は\(I\)で連続です。

さて、\(\varphi:J=[1,\sqrt{2}]\to\mathbb{R}\)を\(\varphi(t)=t^2+1\)とします。
※\(t=\sqrt{x-1}\)として、\(2\leq x\leq3\)という不等式から\(t\)の範囲を求めて\(J\)としています。

すると、

  • \(\varphi\)は\(J\)で微分可能。
  • \(\varphi^\prime(t)=2t\)は\(J\)で有界かつ可積分。
  • \(\varphi(J)=[2,3]=I\)、\(\varphi(1)=2\)、\(\varphi(\sqrt{2})=3\)

となります。
従って、定理2.を使うことができます。

定理2.から、
\begin{eqnarray}
\int_a^bf(x)\ dx&=&\int_2^3\frac{x}{\sqrt{x-1}}\ dx\\
&=&\int_1^\sqrt{2}\frac{t^2+1}{t}\cdot 2t\ dt\\
&=&2\int_1^\sqrt{2}t^2+1\ dt\\
&=&2\left[ \frac{1}{3}t^3+t\right]_1^\sqrt{2}\\
&=&2\left[ \frac{1}{3}\left( 2\sqrt{2}-1\right)+\left( \sqrt{2}-1\right)\right]\\
&=&2\left[ \frac{2\sqrt{2}}{3}-\frac{1}{3}+\sqrt{2}-1\right]\\
&=&2\left[ \frac{5\sqrt{2}}{3}-\frac{4}{3}\right]\\
&=&\frac{10\sqrt{2}}{3}-\frac{8}{3}
\end{eqnarray}
となります。

高校数学で習った置換積分を厳密に書くと、こうなります。

皆様のコメントを下さい!

数学をやっている方に限らず、皆様の好きな分野(または専門)をコメントで教えて下さい!
可能ならその理由もお願いします!

筆者は幾何学です。
幾何学に興味を持った経緯は2つ有りまして、1つ目はグラフ理論との出会いです。
点と点の繋がり方のみに着目した幾何学ということに大きな魅力を感じました。
ここまで抽象化出来るのか!と。

もう一つはタイリングです。
ペンローズ・タイルというものを見て「キレイだなあ」と思ったのがきっかけです。

皆様はどうですか?是非コメントで教えて下さい!

今回は、置換積分について解説しました。
置換積分も微分積分学の基本定理から得られます。

次回は、部分積分について解説します。

乞うご期待!
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この記事の内容をより詳しく知りたい方は以下のリンクの本を参照してください!
ちなみに「解析概論」は日本の歴史的名著らしいので、辞書的にもぜひ1冊持っておくと良いと思います!

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