本記事の内容
本記事は、「Rにおいて、ある数列が収束列であることとコーシー列であることは同値」という命題をボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理から証明する記事です。
本記事を読むにあたり、コーシー列とボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理を知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。
↓コーシー列の記事
↓ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理の記事
「収束列ならばコーシー列である。」ことの証明
前回の記事(【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その17)の例1.(下記参照)は上に有界な単調増加数列だったので収束します。
例1.an=1+122+132+⋯+1n2。
さらに、例1.の数列はコーシー列でした。
このように、収束列であれば、必ずコーシー列なのです。
この証明はさほど難しくない(と勝手に思っている)ので、是非挑戦してみてください。
定理2.の証明
{an}n∈Nが実数Aに収束するとします。
このときなにを示せばよいのかと言うと、
(∀ϵ1>0)(∃N1∈N s.t. ∀n∈N n≥N1⇒|an−A|<ϵ1)⋯①
のときに
(∀ϵ>0)(∃N2∈N s.t. ∀m,n∈N m,n≥N2⇒|am−an|<ϵ)②
を示したいのです。
要は、上記を満たすような番号N2を見つけてきなさいということです。
①が任意の正の実数ϵ1で成り立っているので、任意の正の実数ϵを用いてϵ1=ϵ2としても成り立ちます。
故に、
(∀ϵ>0)(∃N1∈N s.t. ∀n∈N n≥N1⇒|an−A|<ϵ2)⋯③
が成り立ちます。
今、③を満たすような番号N1を見つけてくることができています。
N2としてN1を採用しましょう。
このとき、m,n∈Nがm,n≥N2を満たしているならば、|am−A|<ϵ2および|an−A|<ϵ2が成り立っているので、
|am−an|=|am−A+A−an|≤|am−A|+|A−an|<ϵ2+ϵ2=ϵ
が成り立ちます。
ただし、|x+y|≤|x|+|y|という事実(三角不等式)を使った。
従って{an}n∈Nはコーシー列である。
証明終わり
前回の記事で述べた
という直感は正しかったようです。
「Rにおいて、コーシー列は収束する。」ことの証明
先の「収束列ならばコーシー列である。」という命題の逆が成り立つ、と言っているわけです。
例1.を思い出してみると、例1.の数列{an}n∈Nは収束列でした。
前回の記事(【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その17)では例1.の{an}n∈Nがコーシー列であることを示しました。
「例1.のときはコーシー列だったが、収束列であれば絶対コーシー列なのかネ?」とまたもやツッコミを受けそうなので、完璧なレスバをするために証明を与えます。
この証明は先程よりも難しいです。
従って、まずは流れを説明します。
といっても、2ステップです。
- (ステップ1) コーシー列が有界であることを示す。
- (ステップ2) 有界なので、ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理を使い、コーシー列がある収束する部分列の極限に収束する事を示す。
というわけで早速証明してみましょう。
定理3.の証明
(ステップ1)
{an}n∈Nがコーシー列であるとします。
すなわち、
(∀ϵ>0)(∃N∈N s.t. ∀m,n∈N m,n≥N⇒|am−an|<ϵ)
が成り立っているとします。
このϵは任意の正の実数に対して成り立つので、ϵ=1としても成り立ちます。
故に
∃N∈N s.t. ∀m,n∈N m,n≥N⇒|am−an|<1⋯①
が成り立っています。
すなわち、上記を満たすような番号Nを見つけてくることができます。
n≥Nを満たす任意のn∈Nに対して、①から
|an|=|an−an+aN|≤|an−aN|+|aN|<1+|aN|
が成り立ちます。
つまり、N番目以降の|an|は必ず1+|aN|より小さい値を取る、というわけです。
従って、|a1|, |a2|,…, |aN−1|, 1+|aN|の中で最大のものをRとすると、すなわち、R=max{|a1|, |a2|,…, |aN−1|, 1+|aN|}とすることで、
N番目以前の|an|の値よりも大きな実数と取ることができます。
従って、
(∀n∈N) |an|≤R
が成り立ちます。
従って、{an}n∈Nは有界です。
(ステップ2)
コーシー列{an}n∈Nが有界だということが分かったため、ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理の仮定を満たすから使うことができます。
この定理の証明は【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その15を御覧ください。
さて、ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理から、コーシー列{an}n∈Nには収束する部分列が存します(部分列については【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その13を御覧ください)。
すなわち、ある実数aが存在して、
limk→∞ank=a
を満たすような部分列{ank}k∈Nが存在する、というわけです。
今、コーシー列{an}n∈Nの極限の候補がaとなっています。
{an}n∈Nがaに収束すれば、証明は終わります。
すなわち、
(∀ϵ>0)(∃N1∈N s.t. ∀n∈N n≥N1⇒|an−a|<ϵ)
を示せば良いです。
要は上記を満たすような番号N1を見つけてきなさい、ということです。
今、{an}n∈Nがコーシー列なのだから、
(∀ϵ1>0)(∃N0∈N s.t. ∀m,n∈N m,n≥N0⇒|am−an|<ϵ1)
が成り立っています。
すなわち、上記を満たすような番号N0を見つけてくることができます。
この見つけてきたN0に対して、n,k∈Nがn,k≥N0を満たしているとします。
このとき、nk≥k≥Nです。
数学的帰納法で示します。
k=1のとき、n1≥1であれば良いのだが、n1は{an}n∈Nの部分列{ank}k∈Nの番号であるので、{nk}k∈Nは1以上の自然数からなる数列であるから、n1≥1です。
k=tでnt≥tが成り立ったとします。
k=t+1のとき、nk+1≥k+1であれば良いです。
ここで、{nk}k∈Nは狭義単調増加数列であり、かつ自然数の数列なのだからnt+1≥nt+1が成り立ちます。
従って、nt+1≥nt+1≥t+1となるため、成り立ちます。
さて、{an}n∈Nはコーシー列であり、{ank}k∈Nは{an}n∈Nの部分列です。
今、nk≥k≥Nであるから、
|an−ank|<ϵ
が成り立っています。
ここで2つ補題を与えます。
補題4.の証明
limn→∞an=aとします。
このとき、
(∀ϵ>0)(∃N∈N s.t. ∀n∈N n≥N1⇒||an|−|a||<ϵ)
が成り立てば良いです。
今、limn→∞an=aなのだから、
(∀ϵ>0)(∃N0∈N s.t. ∀n∈N n≥N0⇒|an−a|<ϵ)
が成り立っています。
NとしてN0を採用します。
n≥N0に対して、
- |an|=|(an−a)+a|≤|an−a|+|a|<ϵ+|a|,
- |a|=|(a−an)+an|≤|a−an|+|an|<ϵ+|an|
が成り立っています。
従って
−ϵ<|an|−|a|<ϵ
であるから、||an|−|a||<ϵです。
従って、成り立ちます。
補題4.の証明終わり
この証明は【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その11を参照してください。
さて、(ステップ2)の証明に戻りましょう。
補題4.、補題5.および定数列は定数に収束する(証明は【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その11参照してください)ので、limk→∞|an−ank|=|an−a|であり、limk→∞ϵ=ϵを得ます。
従って、
|an−a|<ϵ
です。
従って、
(∀ϵ>0)(∃N1∈N s.t. ∀n∈N n≥N1⇒|an−a|<ϵ)
が成りたつので、コーシー列{an}n∈Nは収束します。
定理2.の証明終わり
実は実数の集合以外だと、コーシー列は必ずしも収束しません。
例えば、ガウス記号[]を用いて作った数列{[n√2n]}n∈Nは有理数からなる数列です。
この数列は実数の範囲では√2に収束するのだが、√2は有理数でないので、有理数の範囲では収束しません。
従って、コーシー列は必ずしも収束しません。
ただ、実数の集合では収束します。
このようにコーシー列が収束するような集合を完備な集合といいます。
実は、有理数の集合をコーシー列が収束するように広げた(拡張した)集合が実数なのです。
そういう意味でもコーシー列が収束するという条件は実数の連続性と関係があります。
結
今回は「Rにおいて、ある数列が収束列であることとコーシー列であることは同値」という命題をボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理から証明しました。
すなわち、実数の範囲内では、収束列を考えることとコーシー列を考えることは全く同じということなのです。
しかし、これはあくまで実数での話であって、必ずしもコーシー列は収束するとは限りません。
コーシー列が収束するような集合を完備な集合といいます。
次回は、今回示した「Rにおいて、ある数列が収束列であることとコーシー列であることは同値」という命題からワイエルシュトラスの上限公理を導きます。
これにより、
- デデキントの定理
- ワイエルシュトラスの上限公理
- 有界な単調列は収束する。
- 区間縮小法+アルキメデスの原理
- ボルツァーノ-ワイエルシュトラスの定理
- コーシー列の収束
が全て同値であることが分かります。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
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