本記事の内容
本記事は、p群と呼ばれる群について解説する記事です。
本記事を読むに当たり、位数、可換群、群の中心について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。
↓位数の記事
↓可換群の記事
↓群の中心の記事
可換群、位数、群の中心の軽い復習
まず、本記事に出現する主な概念を軽く復習します。
可換群
可換群(アーベル群)
Gを空でない集合とする。G上の演算∗が定められていて、次の性質を満たすとき、Gを可換群(Abel group)という。- 結合律 任意のa,b,c∈Gに対して、(a∗b)∗c=a∗(b∗c)が成り立つ。
- 単位元の存在 あるe∈Gが存在して、任意のa∈Gに対してa∗e=e∗a=aが成り立つ。このe∈Gを単位元と呼び、1Gと書くことがある。
- 逆元の存在 任意のa∈Gに対して、あるb∈Gが存在して、a∗b=b∗a=eが成り立つ。このb∈Gをa∈Gの逆元といい、a−1で表す。
- 可換性 任意のa,b∈Gに対して、a∗b=b∗aが成り立つ。
詳しくは、【代数学の基礎シリーズ】群論編 その1を御覧ください。
位数
群の位数、有限群、無限群
群Gに対してその要素の個数|G|をGの位数(order)という。位数が有限な群のことを有限群という。有限群でない群、すなわちGの位数|G|が有限でない群Gを無限群という。詳しくは【代数学の基礎シリーズ】群論編 その4を御覧ください。
群の中心
中心化群
Hが群Gの部分群とする。このとき ZG(H)={g∈G|∀h∈H, gh=hg} をHの中心化群という。また、 Z(G)=ZG(G) と書き、Gの中心という。x∈GでH=⟨x⟩のとき、ZG(H)の代わりにZG(x)とも書き、xの中心化群という。詳しくは【代数学の基礎シリーズ】群論編 その16を御覧ください。
p群
本題のp群について解説します。
p群を一言で。
p群を一言で述べれば、
です。
p群のpは素数の英語表記prime numberのpから来ています。
ほんのちょっとだけシローの定理とp群の関係性を述べておきます。
少々ネタバラシですが、この位数が素数のべき乗個であるような群(p群)は、次回以降解説するシローの定理とも関連して重要です。
なぜ重要かというと、そもそもシローの定理が重要だから、ということなのですが、なぜシローの定理が重要かというと、シローの定理は正規部分群の存在を示すための基本的な武器だからです。
筆者は整数論が専門ではないのですが、整数論視点を導入すると、素数というのは誠に興味深い対象です。
例えば、素因数分解定理のように、任意の整数は素数のべき乗の積で一意的に書ける、など整数の表現方法として誠に優秀です。
p群の数学的な説明と例
p群
pを素数とする。Gが有限群で|G|がpのベキ、つまりpe(eは正の整数)という形であるとき、Gをp群という。例えば、どんなのがp群なのかというと、最も基本的な例はZ/pnZ(n>0は整数)だと思います。
実際、
Z/pnZ={¯0,¯1,…,¯pn−2,¯pn−1}
ですから、Z/pnZの要素の数はpn個、すなわち|Z/pnZ|=pnとなるからです。
このような形の群の有限この直積もp群です。
二面体群のなかにもp群があります。
ちなみに二面体群とは
二面体群
整数n≥2を固定する。Pnを単位円x2+y2=1に内接し、(10)を一つの頂点とする正n角形とする。 Dn={g∈O(n)|gPn=Pn} とおき、二面体群という。ここで、 O(n)={g∈GLn(R)|g⊤g=In} であり、gPn=Pnとはgが集合PnをPnに移すという意味であり、全てのx∈Pnに対してgx=xとなるという意味ではない。
です。
例えば、D4={g∈O(4)|gP4=P4}ですから、|D4|=8=23なので、D4はp群です。
p群が満たす基本的な性質
p群が満たす基本的な性質を2つ解説します。
命題1.
Gがp群であれば、Z(G)≠{1G}である。命題1.の証明
pを素数として、|G|=pe>0とします。
類等式は、xが共役類の完全代表系の要素を表すとすれば、C(x)をxの共役類とするとき
|G|=pe=∑C(x)
という形をしています。
しかし、右辺には必ず1が現れます。
ここで、以下の事実を使います。
定理2.
Gを有限群とする。- x∈Gならば、|C(x)|=|G||ZG(x)|である。また、C(x)={x}であることとxがGの中心Z(G)の要素であることは同値である。
- (類等式) 等式|C(x)|=∑|C(x)|が成り立つ。ただし、和は全ての共役類を重複なく数えるとする。
定理2.の証明および類等式については【代数学の基礎シリーズ】群論編 その17を御覧ください。
もし、Z(G)={1G}であれば、定理2.の1.から右辺には1が1回しか現れません。
|C(x)|はpeの約数なので、|C(x)|≠1なら|C(x)|はpの倍数です。
故に、pe=1+pの倍数の和という形になるため、矛盾です。
したがって、Z(G)≠{1G}です。
命題1.の証明終わり
この命題1.から、p群はベキ零群であることがわかります。
命題2.
Gが有限群で、|G|=p2(pは素数)ならば、Gは可換群である。命題2.の証明
そもそも、H⊂Gを群Gの部分群とするとき、
ZG(H)={g∈G|∀h∈H, gh=hg}
だったわけで、
Z(G)=ZG(G)={g∈G|∀h∈G, gh=hg}
だから、Z(G)は可換群です。
そこで、Z(G)≠Gとして矛盾を導きます。
命題1.から、Z(G)≠{1G}であり、|Z(G)|は|G|=p2の約数なので、|Z(G)|=pです。
x∉Z(G)を取ります。
Z(G)⊂ZG(x)ですが、xは自分自身と可換ですから、x∈ZG(x)です。
したがって、ZG(x)はZ(G)よりも真に大きい集合です。
故に、|ZG(x)|>pです。
|ZG(x)|はp2の約数なので、|ZG(x)|=p2、つまりZG(x)=Gとなります。
これは、x∈Z(G)となることを意味していますので、x∉Z(G)とした仮定に矛盾です。
命題2.の証明終わり
皆様のコメントを下さい!
今回は円積問題です。
円積問題とは、
与えられた円と同じ面積の正方形を定規とコンパスのみを用いて作図せよ。
実は、この円積問題は不可能であることが示されています。
要するに、与えられた円と同じ面積の正方形は定規とコンパスで作図できないということです。
この円積問題を最終的に否定的に解決したのは、ドイツの数学者リンデマン(Carl Louis Ferdinand von Lindemann)です。
しかし、紀元前には「与えられた円と同じ面積の正方形を定規とコンパスのみを用いて作図できる」と主張したアンティポンという人がいました。
その人の解答が次です。
円に内接(inscribing)する正方形を作り、その辺を底辺(base)とし、頂点を円周上にもつような二等辺三角形を作る。さらにその辺上に二等辺三 角形を作って以下これを繰り返す。こうして、正多角形(regular polygon)の列ができるが、その辺の数が多くなるにつれて、円周に近づいていく。そして「最後には」円周と正多角形の周とは「一致する」。一方、多角形と面積が等しい正方形が作図できるから、結局、円と同じ面積をもつ正方形が作 図できる。
もちろん、このアンティポンの解答は間違っているわけですが、この論法はどこがおかしいでしょうか。
是非コメントをお待ちしています。
結
今回はp群について解説しました。
p群とは、位数、すなわち要素の個数が素数のべき乗であるような有限群のことを指します。
p群は、次回以降解説するシローの定理に関わってきます。
シローの定理は正規部分群の存在を示すための基本的な武器です。
次回は、シローの定理を証明するための準備をします。
乞うご期待!
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命題3.=命題2. ですか?
名無し様
コメントありがとうございます。
> 命題3.=命題2. ですか?
とのお問い合わせですが、おっしゃる通りでございます。
誤植でございましたので、訂正いたしました。
ご指摘ありがとうございました。