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「二面体群とは?二面体群が満たす性質」【代数学の基礎シリーズ】編 その12

代数学

本記事の内容

本記事は、二面体群とは何か?ということと、二面体群が満たす基本的な性質を解説する記事です。

本記事を読むに当たり、群、位数、群作用について知っている必要があるので、以下の記事も合わせてご覧ください。

↓群の記事

↓位数の記事

↓群作用の記事

二面体群とは?

二面体群は正多面体群と呼ばれる群の一種です。
正多面体群は後に紹介しますが、非常に興味深い群です。
今回は、その正多面体群のうちの一種の二面体群について解説します。

余談(と言っておきながら実は重要かも) 後の記事で解説しますが、正多面体群は\(A_4,\mathcal{G}_4,A_5\)に同型です。

では、「二面体群とは何か?」ということについて解説します。

二面体群を一言で。

二面体群を一言でいうと、

正多角形の対称性を表現したもの。

です。
より正確には、

正多角形を自分自身に移す合同変換全体の成す群のこと。

です。

要するに、写像を要素とする群ということです。

二面体群の数学的な説明

さて、二面体群を厳密に述べると以下です。

整数\(n\geq2\)を固定する。\(P_n\)を単位円\(x^2+y^2=1\)に内接し、\(\displaystyle\left(\begin{array}{c}1\\ 0\end{array}\right)\)を一つの頂点とする正\(n\)角形とする。 $$ D_n=\left\{g\in O(n)\middle| gP_n=P_n\right\} $$ とおき、二面体群という。
ここで、 $$ O(n)=\left\{g\in {\rm GL}_n(\mathbb{R})\middle|g^\top g=I_n\right\} $$ であり、\(gP_n=P_n\)とは\(g\)が集合\(P_n\)を\(P_n\)に移すという意味であり、全ての\(\boldsymbol{x}\in P_n\)に対して\(g\boldsymbol{x}=\boldsymbol{x}\)となるという意味ではない。

\(O(n)\)は直交群と呼ばれる群でした。

先程、「二面体群の要素は写像だ」と述べましたが、より詳しくは、二面体群の要素は行列です。
行列は線型写像としてみなすことができるため、先のように述べました(これについては【線型代数学の基礎シリーズ】行列編 その5を御覧ください)。

二面体群が満たす基本的な性質

$$
R_\theta=
\begin{pmatrix}
\cos\theta&-\sin\theta\\
\sin\theta&\cos\theta
\end{pmatrix},\quad
r=
\begin{pmatrix}
1&0\\
0&-1
\end{pmatrix}\in O(2)
$$
とします。
また、\(t=R_{2\pi/n}\)とします。

命題1.

  1. 関係式\(t^n=I_2\)(ただし、\(I_2\)は\(2\)次元の単位行列)、\(r^2=I_2\)、\(rtr=t^{-1}\)が成り立つ。
  2. \(\left|D_n\right|=2n\)、\(D_n=\left\{I_2,t,\dots,t^{n-1},r,rt,\dots,rt^{n-1}\right\}\)である。
  3. \(rt^i\ (i=0,\dots,n-1)\)の位数は\(2\)である。

命題1.の証明

1.の証明

\(t=R_{2\pi/n}\)ですので、\(t\)は\(\displaystyle\frac{2\pi}{n}\)回転を表す行列です。
その\(n\)乗は\(\displaystyle\frac{2\pi}{n}\)回転を\(n\)回だけ回転させるため、\(t^n=R_{2\pi/n\times n}=R_{2\pi}=I_2\)ということになります。

\(r\)は\(y\)座標の符号を変える行列です。
\(r^2\)は\(y\)座標を\(-1\)倍し、その後再度\(y\)座標を\(-1\)倍するため、座標はもとに戻ります。
故に、\(r^2=I_2\)です。

\(\theta\in\mathbb{R}\)なら、
$$
\begin{pmatrix}
1&0\\
0&-1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\cos\theta&-\sin\theta\\
\sin\theta&\cos\theta
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1&0\\
0&-1
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
\cos\theta&\sin\theta\\
-\sin\theta&\cos\theta
\end{pmatrix}=R_\theta^{-1}
$$
であるので、\(\displaystyle\theta=\frac{2\pi}{n}\)とすると、\(rtr=t^{-1}\)です。

2.の証明

まず、\(D_n=\left\{I_2,t,\dots,t^{n-1},r,rt,\dots,rt^{n-1}\right\}\)を示します。
\(P_n\)の頂点を\(\displaystyle\left(\begin{array}{c}1\\ 0\end{array}\right)\)から反時計回りに
$$
A_1=\left(\begin{array}{c}1\\ 0\end{array}\right),\cdots,A_n
$$
とします。
\(t\)は角度\(\displaystyle\frac{2\pi}{n}\)の回転なので、
$$
A_1\to A_2\to A_3\to \cdots\to A_n\to A_1
$$
と移します。
従って、\(tP_n=P_n\)です。
\(r\)は平面の点を\(x\)軸に関して対称な点に移す(\(y\)座標の符号を変える)ので、\(rP_n=P_n\)です。

\(g\in D_n\)で、\(\det g=-1\)なら、\(r\in D_n\)、\(\det(rg)=1\)なので、\(rg\in {\rm SO}(2)\cap D_n\)です。
ただし、\({\rm SO}(n)\)は特殊直交群と呼ばれ
\begin{eqnarray}
{\rm SO}(n)&=&O(n)\cap {\rm SL}_n(\mathbb{R})\\
&=&O(n)\cap \left\{A\in {\rm GL}_n(\mathbb{R})\middle|\det A=1\right\}
\end{eqnarray}
でした。
\(h=rg\)とおくと、\(r^2=I_2\)なので、\(g=rh\)です。
\(R_\theta\in{\rm SO}(2)\cap D_n\)なら、\(R_\theta A_1\)は\(P_n\)の頂点でなければならないので、\(0\leq k\leq n-1\)が存在して、
$$
R\theta A_1=A_{k+1}=R_{2k\pi/n}A_1
$$
となります。
すると、\(\displaystyle\cos\theta=\cos\frac{2k\pi}{n}\)、\(\displaystyle\sin\theta=\sin\frac{2k\pi}{n}\)なので、
$$
R_\theta=R_{2k\pi/n}=t^k
$$
です。
よって、\(D_n=\left\{I_2,t,\dots,t^{n-1},r,rt,\dots,rt^{n-1}\right\}\)です。

\(0\leq i<j\leq n-1\)なら、\(t^iA_1=A_{i+1}\)、\(t^jA_1=A_{j+1}\)で\(A_{i+1}\neq A_{j+1}\)なので、\(t^i\neq t^j\)です。
\(t^i=t^j\)と\(rt^i=rt^j\)は同値なので、\(r,\dots,rt^{n-1}\)は全て異なります。
\(\det t^k=1\)、\(\det(rt^k)=-1\)なので、\(\left\{I_2,t,\dots,t^{n-1},r,rt,\dots,rt^{n-1}\right\}\)はすねて異なります。
従って、\(\left|D_n\right|=2n\)です。
任意の\(i\)に対して\(rt^irt^i=r^2t^{-i}t^i=I_2\)となるので、3.が成り立ちます。

命題1.の証明終わり

皆様のコメントを下さい!

今回はニュートンです。

ニュートン(Sir Issac Newton;1642-1727)は英国の物理学者かつ数学者。
自作農の子として生まれ、1661年にケンブリッジ大学に入学。
1669年にバロウの後を継いで25歳の若さで教授に就任しました。
1672年に英国の科学研究の中心である王立協会の会員になり、1703年に会長に就任して1727年に84歳で亡くなるまでその職にありました。

数学と物理学における革命的とも言える業績を挙げたことで、科学史上の巨人の一人です。
ライプニッツと並んで微分積分学の開拓者であり、微分積分学の基本定理を発見し、その後の解析学の発展に対する礎石を築きました。
また、1687年に出版された彼の不朽の著作「自然哲学の数学的諸原理」(プリンキピア;Principia)の中で展開されたニュートンの力学理論は、ガリレオ・ガリレイとケプラーの衣鉢を継いでアリストテレス以来の力学観を決定的に打ち砕く理論であり、相対性理論と量子力学の誕生前夜の19世紀後半まで物理現象を完全に記述する理論と目されていました。
この中で、彼が打ち立てた万有引力の法則と運動法則からケプラーの法則を導いています。
なおニュートンはデカルトによる幾何学の新しい手法に熟達していたにもかかわらず、プリンキピアはユークリッドの「原論」のスタイルで書かれており、古代の幾何学的色彩が濃厚です。
このほか、反射望遠鏡を発明し、光と色彩についての研究を行いました。

ニュートンの人生の後半は、若い頃の研究の整理と造幣局長官就任などの世俗的な活動で占められています。
また、原始教会の自由主義を証明する歴史研究としての「神学」や、怪しげな 「錬金術」にのめり込んだりもしました(J. M. ケインズによれば,ニュートンは理性に属する最初の人ではなく、最後の魔術師であり錬金術師です)。

今回は、二面体群について解説しました。
二面体群は正多面体群の一種です。
正多面体群は非常に興味深い群です。
正多面体群を後に解説しますが、その布石となるはずです。

次回はケーリーの定理について解説します。

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代数についてより詳しく知りたい方は以下を参考にすると良いと思います!

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  1. 2.の証明の3行目の式がエラーでTeXソースになっています。

    • 名無し様

      コメントありがとうございます。
      >2.の証明の3行目の式がエラーでTeXソースになっています。
      とのことでしたが、ご指摘ありがとうございます。
      訂正いたしました。