本記事の内容
本記事は「数学の文章って何言ってるかわかんない」、「論理的ってどういうこと?」、「数学の勉強をしてみたいけど、何が書いてあるか読めない」という方向けである。
前々回から集合についてのトピックスを解説している。
前々回の記事では「集合って?」、「書き方は?」についてを解説した。
前回は特に代表的な集合について解説した。
今回はベキ集合、集合族、商集合について解説する。
「集合って?」となっている方は以下(前々回の記事)をご参照ください。

特に代表的な集合について知りたい方は以下(前回の記事)をご参照ください。

序
前回は「和集合」、「共通部分」、「差集合」、「補集合」、「直積集合」について解説した。
特に「和集合」、「差集合」、「直積集合」はそれぞれ四則演算(+,−,×,÷)の+,−,×に対応する集合だ、と述べた。
今回は、商(割り算)に対応する集合について述べる。
商に対応する集合は和、差、積に対応する集合よりも予備知識が必要であるため、それも解説する。
また、確率論やらルベーグ積分論やら測度論でよく出現するベキ集合、集合を要素とした集合である集合族について解説する。
少々ネタバラシをしておくと、実は商集合はグループ分けに対応する概念であって、我々は日常的に商集合の概念を使っている。
ベキ集合は起こりうる事象の羅列(起こりうるパターンの列挙)に対応するため、確率論やらでよく出現するのである。
ベキ集合
「ベキ集合ってどういうときに使われるの?」やら「なんで必要なの?」という疑問があるかと思うが、まずは「ベキ集合とは何か?」について述べておくことにする。
ベキ集合って?
例1.
集合AをA=デネブ,アルタイル,ベガとするとき、そのベキ集合2A(=Pow(A))は2A(=Pow(A))={{デネブ},{アルタイル},{ベガ},{デネブ,アルタイル},{デネブ,ベガ},{アルタイル,ベガ},{デネブ,アルタイル,ベガ},∅}
である。
例2.
集合BをB=x∈N∣x≤4とすると、そのベキ集合2B(=Pow(B))は
2B(=Pow(B)))={{1},{2},{3},{4},{1,2},{1,3},{1,4},{2,3},{2,4},{3,4},{1,2,3},{1,2,4},{1,3,4},{2,3,4},{1,2,3,4},∅}
である。
このように、集合Xの部分集合を全て集めてできる集合をベキ集合(冪集合, a power set of X)といい、2XまたはPow(X)と書く。
これを論理式で書けば、
和集合、差集合、直積集合、補集合と比べると少々特徴的な記号が用いられている。
なぜXのベキ集合に2Xという記号が使われるかと言うと、2Xの要素の数に着目してみるとわかる。
というのも、要素の数が有限の集合(有限集合という)Xの要素の数を∣X∣と書くと、Xのベキ集合2Xの要素の数∣2X∣と2∣X∣が等しいからである。
より具体的には、要素の数がn個であるような集合Xのベキ集合2Xの要素の数は2n個だからである。
というのも、$n$個の要素に対して、「選ぶor選ばない」という2パターンがあるので、$2^n$なのである。
実際、上記の例を見ると、
例1.
Aの要素の数=3、23=8=2Aの要素の数
例2.
Bの要素の数=4、24=16=2Bの要素の数
である。
この規則は有限集合に対してのみなのだが、「区間[0,1]で連続な実関数の集合」のように要素が無限個ある集合(無限集合という)に対してもベキ集合を考えることができる。
勿論、このときのベキ集合の要素の数も無限個である。
注意
ここで注意なのが、ベキ集合には要素として必ず空集合∅が含まれるということである。
というのも、空集合は任意の集合の部分集合だからである。
証明を与えてみよう。
(証明)Xを任意の集合とする。このとき、空集合∅に対して、
∀x,x∈∅⇒x∈X(部分集合とはこれを満たす集合だった!)
が真であれば、∅はXの部分集合であるため、空集合は任意の集合の部分集合であることを示したことになる。
(※「部分集合ってなんだっけ?」となった方は「集合って?」「部分集合って?」【論理と集合シリーズ】数学の文章を読むための論理的思考の基礎 その5を参照してください。)
しかしながら、空集合は要素が1つもない集合であるから、x∈∅を満たすようなxは存在しない。
従って、x∈∅という命題は偽である。
ここで、p⇒qという形の命題の真偽を思い出すと、pが偽であるときはp⇒qは真である。
(※「あれ?そうだったっけ?」となった方は「真理値表」、「かつ、または」、「ならば」【論理と集合シリーズ】数学の文章を読むための論理的思考の基礎 その3を参照してください。)
今回は、pがx∈∅、qがx∈Xであるので、pが偽だからp⇒q、すなわちx∈∅⇒x∈Xは真である。
したがって、∅は任意の集合の部分集合である。(Q.E.D.)
ベキ集合っていつ使われるの?
序でも述べたとおり、確率論やらルベーグ積分論やら測度論で出現することが多い印象がある。
というのも、ベキ集合は起こりうる事象の羅列(起こるパターン)に対応するためである。
例えば、次を考えてみよう。
(※あくまでイメージを伝えるための例ですので、厳密性についてはご容赦ください。)
例4.
ある人がコイントスをするときの起こりうる事象(パターン)は?
「そんなん表か裏かしか出ないんだから、起こりうるパターンは{{表},{裏}}でしょうよ。」と思うかもしれない。
勿論、間違ってはいない。
結局{{表},{裏}}と考えてよいのだけれど、起こりうるパターンと言われるとちょっと違う。
起こりうるパターンは{{表},{裏},{表,裏},∅}である。
「はぁ?」と思う気持ちもわかる。
「{表}、{裏}についてはわかるよ。けど、{表,裏}と∅は何奴よ?」となるのもわかる。
{表,裏}、すなわち表も裏も同時に起こるとき、というのはコインを投げたときに、そのコインが自立したパターンである(「起こるかい!そんなパターン!」というのもわかるがちょっと我慢して)。
∅、すなわち何も起こらないとき、というのはコインを投げたはいいものの、高く投げすぎて戻ってこなかったパターンである(「ワンパンマンか!」というのもわかるがちょっと我慢して)。
現実世界で考えると、自立するパターンと戻ってこないパターンは起こりうるけれども、ほとんど起こり得ない。
従ってこれらの確率を$0$と仮定している。
すなわち、あるパターンYが起こる確率をp(Y)で書けば、
p({表,裏})=p(∅)=0としているわけである。
従って、コイントスにおけるパターンは{{表},{裏}}であり、p({表})=p({裏})=12なのである。
最も、投げるコインが曲がってたりすると、この限りではない。
これがまさにベキ集合なのである。
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ベキ集合とは、ある集合の部分集合を全て集めてできた集合だ
である。
集合族
今まで解説してきた集合の要素に着目して見ると、「人」やら「数」やら、はたまた「星」といった複数ではあるけれども対象としては単一なモノだった。
つまり、今まで扱ってきたモノは「要素」という言葉がピッタリ合うようなモノで、集合ではなかった。
しかし、集合は属すか属さないかを命題として判断できるようなモノの集まりであったので、要素が集合であっても良いのである。
例5.
東京都の各自治体に住所を持つ人の集合の集合={{中央区に住所を持つ人},{世田谷区に住所を持つ人},…,}
例6.
集合Xのベキ集合2X。
このように集合族(a family of sets)、というのは一言で言ってしまえば「要素が集合である集合です」である。
要は集合を集めてできた集合のことを集合族というのである。
ただし、本記事では可算個(自然数を使って番号が付けられるという意味)の集合からなる集合族しか扱わない。
より簡単な数学の例を挙げれば、X={{1,2},{1,2,3}}の要素も集合であるため、集合族である。
集合族における和集合、共通部分
要素が集合であれ、集合族は集合なのだから、通常の集合と同様に和集合と共通部分を考えることができる。
例7.
- C:ラーメンが好きな人の集合の集合={{温かいラーメンが好きな人},{冷たいラーメンが好きな人}}、
- D:温かい麺が好きな人の集合の集合={{温かいうどんが好きな人},{温かいラーメンが好きな人},…}、
としたとき、
- 和集合C∪D={{温かいラーメンが好きな人},{冷たいラーメンが好きな人},{温かいうどんが好きな人},…,}、
- 共通部分C∩D={温かいラーメンが好きな人}
である。
例8.
- E={{1},{1,2,3}}
- F={{2},{2,3,4}}
としたとき
- 和集合E∪F={{1},{1,2,3},{2},{2,3,4}}、
- 共通部分E∩F=∅
いつ使われるの?(ほぼ余談)
正直なところ、要素が集合とであれば全部集合族なので、ありとあらゆるところに出現する。
例えば、ハイパーグラフがある。
少々長くなってしまうだけでなく、本記事とは関係のないことなので、読み飛ばしてもらって構わない。
グラフ、というと関数のグラフを思い浮かべたくなるのだが、それとは別物である。
数学、特に幾何学においてグラフというのは、平たく言うと「点と辺からなる図形」のことを指す。
その線に”長さ”という概念はなく、「点と点が辺で繋がっているかどうか」のみに着目した幾何学である。
この立場に立って展開される理論をグラフ理論という。
一般にグラフXは点の集合Vと辺の集合Eの組(V,E)で書かれる。
※グラフ理論の出発点を知りたい方はケーニヒスベルクの橋の問題を参照してみてください。
グラフは点と点が繋がっていなくても良い。
つまり、点はあるけど、点があるだけで繋がっていないという状態でも良い。
ハイパーグラフは、上記のグラフを一般化(拡張)したもので、任意個数の頂点をつなげることができる。
つまり、普通のグラフは1つの辺につき頂点は2つだけなのだが、ハイパーグラフは2つでなくてもよい。
(想像しにくいだろうけれど、ふーんって感じでいいです。)
このハイパーグラフの辺の集合は集合族である。
ちなみに、ハイパーグラフの横断(transversal)またはヒッティングセット(hitting set)という概念は、機械学習などの計算機科学分野で応用されており、ゲーム理論やらデータベースのインデックス付け、最適化などに関連している。
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集合族は要素が集合であるような集合
である。
商集合
さて、四則演算(+,−,×,÷)に対応する集合の中で、最後に商(÷)に対応する集合、商集合について解説する。
商集合とは、一言で言ってしまえば、「集合の要素をグループ分けしたときの名前の集合」である。
序でも述べた通り、実は商集合の概念は日常的に使われている。(後述)
とはいえ、商集合を説明するために
- 二項関係
- 同値関係
- 同値類
の知識が必要であるため、まずはこれら3つについて解説する。
ちなみに、私が学部、修士とお世話になった教授から「大学で学ぶ数学において、特に重要な概念が同値関係と商集合であり、これを理解することにより、現代数学の相当部分に馴染むことができる。」と言われたことがある。
「関係」とは?
「関係」という言葉は日常でも使われるが、数学でも使われる。
ただし、日常で使う「関係」と数学で出現する「関係」はおおよそ同じ意味であるが、似て非なるものである。
数学では、複数の対象に”関係がある”というのも考察対象になりうる。
日常では、「友人関係」やら「関係者」やら「営業関係の人」などというように使われる。
これは、狭い意味では「1つ又は1組のモノが他に対しても何らかの”つながり”がある」ということが「関係がある」という意味である。
実は、この「関係」は集合で、特に直積集合として捉える事ができる。
数学ではさらに限定的に使われる。
二項関係
先に、「関係は集合で捉えることができる」と述べた。その例を挙げよう。
例9.
日本人の友人関係を例にとる。
- J:日本人の集合
- R0={(j,k)∈J×J∣jとkは友人関係}
とすると、R0⊂J×Jであり、jとkは友人関係にある⇔(j,k)∈R0である。
このように、「関係」は集合で捉えることができる。
数学において「関係」はさらに限定的に扱われる。
例10.
実数a,bの大小関係a<bを例に取る。
a<bは「aがbより小さい(またはbはaより大きい)」ことを表していて、「aとbに対して、大きい、小さいという関係がある」ということである。
このとき、
- R1={(a,b)∈R2∣a<b}
とおけば、R1⊂R2である。このとき、a<b⇔(a,b)∈R1である。
実際、a<bであれば、(a,b)∈Rは(a,b)∈Rであり、逆に(a,b)∈R1であればa<bであるからである。
よって、実数の大小関係はこのR2の部分集合R1について考える、ということと同じ意味なのである。
ダメ押し、ということでもう1例だけ挙げる。
例11.
実数a,bにおける相等関係(2つの実数が等しいという関係)a=b。
a=bは「aがbと等しい(またはbはaと等しい)」ことを表していて、「aとbに対して、等しいという関係がある」ということである。
このとき、
- R2={(a,b)∈R2∣a=b}
とおけば、R2⊂R2である。このとき、a=b⇔(a,b)∈R2である。
実際、a=bであれば、(a,b)∈Rは(a,b)∈R2であり、逆に(a,b)∈R2であればa=bであるからである。
よって、実数の相等関係はこのR2の部分集合R2について考える、ということと同じ意味なのである。
すなわち、”数学における関係”とは、ある空集合でない集合の直積集合の部分集合を考えるということなのである。
より正確に言えば、集合X≠∅の2要素間の関係(これをX上の二項関係という)を考えることと、直積集合X×Xの部分集合Rを考えることは同じことだ、というわけである。
記号
一般に、集合Xの2要素間の関係(X上の二項関係)を考えることを、直積集合X×Xの部分集合Rを考えることだ、と理解したとき、(a,b)∈RをaRbやらa∼bと書く。
ただし、後者のa∼bという記号が一般的によく使われるのだが、Rがどのように定められたのか不明瞭という欠点があるため、注意が必要である。
要は、この”∼”と言う記号に”=”やら”<”やらが入るわけである。
ちなみに、集合Xのn個の要素の間の関係は、n項関係と呼ばれ、直積集合Xn=X×⋯×Xの部分集合を考えることになる。
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1行覚えるなら、
集合Xの2要素間の関係をX上の二項関係といい、関係を考えるということは直積集合X×Xを考えることと同じ
である。
同値関係
二項関係の中で、特に重要な性質を満たすようなものを同値関係という。
例11.
実数a,bにおける相等関係(2つの実数が等しいという関係)a=b。
- R2={(a,b)∈R2∣a=b}
とおき、(a,b)∈R2であることをa=bと書くのであった。
この関係”=”は次の性質を満たしている。
- a=a,
- a=b⇒b=a,
- a=b, b=c⇒a=c.
「何を当たり前のことを。改まって。」と思うかもしれないのだが、実は、上記の3つの性質は、すべての関係が満たすわけではないのである。
すなわち、必ず満たすわけではないのである。
実際、
例9.および例10は満たさない。
例9.
- J:日本人の集合
- R0={(j,k)∈J×J∣jとkは友人関係}
としたとき、(j,k)∈R0をj∼kと書くことにする。このとき
- j∼jは成り立たない。
これは微妙なのだが、一般に友人と言って自分自身を友人として相手に紹介するような人は見たことがないので、友人でない。というか、友人ではなく本人である。 - j∼k⇒k∼jは成り立つ。
(j,k)∈R0、すなわちjとkが友人であれば、勿論kとjも友人である。 - j∼k, k∼l⇒j∼lは成り立たない。
つまり、「友人の友人は友人か?」というわけだが、そんなことはない。
会ったことがない人だっている。
もしかしたら、パリピの間では成り立つのかもしれないが、一般的には成り立たない。
例10.
実数a,bの大小関係\(a<b\(について、
- R1={(a,b)∈R2∣a<b}
としたとき、(a,b)∈R1をa<bと書くことにする。このとき、
- a<aは成り立たない。
- a<b⇒b<aも成り立たない。
- a<b, b<c⇒a<cは成り立つ。
このように、”=”と同様にこれら3つの条件はどんな関係も必ず満たすというわけではないのである。
- x∈Xのとき、x∼x(反射律),
- x,y∈Xのとき、x∼y⇒y∼x(対称律),
- x,y,z∈Xのとき、x∼y, y∼z⇒x∼z(推移律)
例12.
同じ学年である、という関係。
とある中学校の生徒の集合Gに対して、
- R3={(g,h)∈G×G∣gとhは同学年}
としたとき、(g,h)∈R3をg∼hと書くことにする。このとき、
- g∼gが成り立つ。
本人同士は同学年。 - g∼h⇒h∼gが成り立つ。
gとhが同学年なら、hとgも同学年。 - g∼h, h∼i⇒g∼iが成り立つ。
gとhが同学年で、hとiも同学年であれば、gとiもまた同学年である。
例13.
平面上の直線たちの間の関係。
平面上の直線の集合Lに対して、
- R4={(l1,l2)∈L×L∣直線l1は直線l2に一致する、あるいは直線l1と直線l2は平行}
としたとき、(l1,l2)∈R4をl1∼l2と書くことにする。このとき、
- l1∼l1が成り立つ。
直線l1は直線l1と一致するため、成り立つ。 - l1∼l2⇒l2∼l1が成り立つ。
l1∼l2だから、l1とl2は一致しているか、平行である。
l1とl2が一致していれば、l2とl1も一致している。
l1とl2が平行であれば、l2とl1も平行。
従って、成り立つ。 - l1∼l2, l2∼l3⇒l1∼l3が成り立つ。
l1∼l2、l2∼l3であるから、l1とl2は一致しているか、あるいは平行であり、l2とl3は一致しているか、あるいは平行である。
l1とl2が一致していれば、l2∼l3により、l1∼l3であるから成り立つ。
l1とl2が平行であるとする。
このとき、l2とl3が一致していれば、l1∼l3であるから成り立つ。
一方、l2とl3が平行であり、かつl1≁l3だったとする。(背理法!)
このとき、l1≁l2となるが、これは矛盾である。
したがって、成り立つ。
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反射律、対称律、推移律を満たす二項関係が同値関係である
である。
同値類
集合X上に同値関係∼が与えられたとする。
すると、Xの「分割」が得られる。
ここで、分割とは「過不足無くピッタリ分けられる」ということであり、これを論理式で表せば、
- X=A1∪A2∪⋯∪An
- ∀i,j∈{1,2,…,n}, i≠j⇒Ai∩Aj=∅
例14.
X=トランプとしたとき、A1={♠の集合}、A2={♥の集合}、A_3=\{◆の集合\}、A_4=\{♣の集合\}としたとき、集合族\{A_1,A_2,A_3,A_4\}はXの分割である。
例15.
X=\{1,2,3,4,5\}とし、A_1=\{1\}、A_2=\{2,4\}、A_3=\{3,5\}とすると、集合族\{A_1,A_2,A_3\}はXの分割である。
上記の論理式を少し噛み砕くと、「全部の和集合をとると、全体の集合と一致して、それらは互いに共通部分を持たないような集合の族を分割といいますよ」ということである。
まさに「ピッタリ分けられている」ということである。
さて、実は集合X上に同値関係\simがあたえられると、分割が得られる。
例12.(改良版)
同じ学年である、という関係。
とある中学校の生徒の集合Gが\mid G\mid =4、すなわちこの中学校には4人しかいなかったとする(少ないけど)。
その内訳はG=\{O君(1年生),Pさん(2年生),Q君(3年生),Rさん(3年生)\}であるとする。
このGに対して、
- R_3=\{(g,h)\in G\times G\mid gとhは同学年\}
としたとき、(g,h)\in R_3をg\sim_{12} hと書くことにする。このとき、\sim_{12}は同値関係である、ということは前述した。
このとき、
- O君(1年生)と同値なGの要素からなる集合をC_O=\{x\in G\mid O\sim_{12} x\}
- P(2年生)さんと同値なGの要素からなる集合をC_P=\{x\in G\mid P\sim_{12} x\}
- Q(3年生)君と同値なGの要素からなる集合をC_Q=\{x\in G\mid Q\sim_{12} x\}
- R(3年生)さんと同値なGの要素からなる集合をC_R=\{x\in G\mid R\sim_{12} x\}
とする。
この例における同値関係はどういう関係だったかというと、「同学年である」という関係なのだから、
- C_O=\{O君(1年生)\},
- C_P=\{Pさん(2年生)\},
- C_Q=C_R=\{Q君,Rさん\}
が成り立つ。
これらを新たにC_OをC_{1年生}、C_PをC_{2年生}、C_Q=C_RをC_{3年生}と名前をつけ直せば、
- G=C_{1年生}\cup C_{2年生}\cup C_{3年生},
- C_{1年生}\cap C_{2年生}=C_{2年生}\cap C_{3年生}=C_{1年生}\cap C_{3年生}=\emptyset
であるから、集合族\{C_{1年生},C_{2年生},C_{3年生}\}は分割である。
要は、全校生徒4人を3学年に分けた、ということである。
例13.(改良版)
平面上の直線たちの間の関係。
平面上の直線の集合Lが\mid L\mid =4、すなわち特定の4本の直線からなる集合とする。
- 直線m_1を直線y=x,
- 直線m_2を直線y=x+7,
- 直線m_3を直線y=-2x,
- 直線m_4を直線y=-2x-9
と名前をつけ、L=\{m_1,m_2,m_3,m_4\}とする。このLに対して、
- R_4=\{(l_1,l_2)\in L\times L\mid 直線l_1は直線l_2に一致する、あるいは直線l_1と直線l_2は平行\}
としたとき、(l_1,l_2)\in R_4をl_1\sim_{13} l_2と書くことにすることで、\sim_{13}は同値関係である。
このとき、
- m_1と同値なLの要素からなる集合C_{m_1}=\{y\in L\mid m_1\sim_{13} y\},
- m_2と同値なLの要素からなる集合C_{m_2}=\{y\in L\mid m_2\sim_{13} y\},
- m_3と同値なLの要素からなる集合C_{m_3}=\{y\in L\mid m_3\sim_{13} y\},
- m_4と同値なLの要素からなる集合C_{m_4}=\{y\in L\mid m_4\sim_{13} y\}
とする。
先の例と同様に、
- C_{m_1}=C_{m_2}=\{m_1,m_2\},
- C_{m_3}=C_{m_4}=\{m_3,m_4\}
が成り立つ。
新たにC_{m_1}=C_{m_2}にC_4、C_{m_3}=C_{m_4}にC_5と名前をつけ直すと、
- L=C_4\cup C_5,
- C_4\cap C_5=\emptyset
であるから、集合族\{C_4,C_5\}はLの分割である。
要はm_1(m_2,m_3,m_4のどれでも良い)と平行なのか、そうでないかで分けた、ということである。
このように、同値関係があれば、分割得られるのである。
上記の例は全て要素の個数が有限個の集合(有限集合)場合だが、実は有限個でなくても同値関係があれば分割が得られる。
- x\in C_x,
- C_x\cap C_y\neq \emptyset \Rightarrow C_x=C_y,
- C_x\neq C_y\Rightarrow C_x\cap C_y= \emptyset.
証明を与えてみよう。
とはいえ、簡単なので、ある種の練習問題として解いてみるのもよい。
(証明)1.は\simが同値関係であるのでx\sim xであるから、成り立つ。
2.はC_x\cap C_y\neq \emptysetとしたとき、共通部分が空集合でないので、C_x\cap C_yには何か要素がある、ということがわかる。
従って、それをzと書く。すなわち、z\in C_x\cap C_yとする。
このとき
- C_x\subset C_y,
- C_y\subset C_x.
を示せば良い。(集合が等しいとはこれを示すことだった!)
z\in C_x\land z\in C_yであるから、z\sim x\land z\sim yである。
\simは同値関係であるので、推移律が成り立つから、x\sim yである。
さて、\forall w\in C_xに対して、w\sim xであり、先の議論からx\sim yであるから、推移律を用いてw\sim yである。
従って、w\in C_yであるからC_x\subset C_y。
同様に\forall w\in C_yに対して、w\sim yであり、先の議論からx\sim yであるから、推移律を用いてw\sim xである。
従って、w\in C_xであるからC_y\subset C_x。(Q.E.D)
さて、問題なのは、同値類C_xを集めてできた集合族は果たして本当にXの分割になっているのか?ということである。
実はしっかりなっている。
しかし、これは練習問題とする。
練習問題
集合Xの同値類を要素とする集合族はXの分割である事を示せ。(解答は最後にあります。)

上記では、同値関係があれば、分割を得られる、と述べたのだが、逆に分割があれば、同値関係を得ることもできる。
従って、同値関係を考えるということと集合の分割を考えるということは全く同じことなのである。
商集合
あと一息である。
やっとこさ商集合の話に入るのだが、実はすでに商集合の正体はバレている。
というのも、同値類を要素とする集合族こそが商集合なのである。
例12.(改良版)
同じ学年である、という関係。
これにおいて、集合族\{C_1,C_2,C_3\}がG上の同値関係\sim_{12}に対する商集合である。
例13.(改良版)
平面上の直線たちの間の関係。
これにおいて、集合族\{C_4,C_5\}がL上の同値関係\sim_{13}に対する商集合である。
商集合を論理式で書けば、
「これの一体どこが商なんだ?割り算に対応するんだ?」となっているかもしれないが、先の通り、同値関係から集合の分割が得られるため、集合を”グループ分けする”という意味で割り算なのである。
さて、「実は商集合は日常的に使ってるよ」と述べたが、「どこでよ?」ということについて述べておく。
我々はモノを数えるときに自然数を使うのだが、本質的には自然数は「モノ」の集まりに「名前」をつけることによって得られる。
例えば、「モノ」の集まりに「1」やら「2」やら「100」やら「1000」やらといった「名前」をつけることで数を数えている、ということなのである。
要は、「りんごが1つありました」というときには「1」という同値類の要素だ、と暗にとらえており、「鉛筆が1ダースありました」というときには「12」という同値類の要素だ、と暗に捉えているというわけである。
1行覚えよう!
1行覚えるなら
商集合は同値類すべて集めて、それらを要素とする集合族のこと
である。
結
なんやかんやで非常に長くなってしまったのだが、本記事では「ベキ集合」、「集合族」、「商集合」について解説した。
結局の所、
- ベキ集合
部分集合を全部集めた集合。
確率論やルベーグ積分論や測度論でよく出現する。
起こりうるパターンの集合がイメージに近い。 - 集合族
集合を要素とするような集合。
ありとあらゆる場所で出て来る。 - 商集合
同値類をすべて集めて、それらを要素とする集合族のこと。
集合に同値関係を与えることで得られる。
グループの名前に対応する集合である。
というわけなのである。
今回で集合の話はおしまいである。お疲れさまでした。
次回はいよいよ「実数の連続性」について解説する。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
この記事の内容をより詳しく知りたい方は以下のリンクの本を参照してください!
ちなみに、「集合・写像・論理ー数学の基本を学ぶ」の方が入門者にはオススメです!
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