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「全射って?」【論理と集合シリーズ】写像編 その7

写像

本記事の内容

本記事は「全射って何?」ということについて解説する記事である。

本記事を読むに当たり、「写像?」となっている方は以下の記事も合わせて御覧ください。

単射を知っていたほうが理解が進むと思われるので、その場合は以下の記事を参照してください。

全射

単射は「定義域の異なる要素は、対応する終域の要素も異なるような写像のこと。」だった。
単射の場合、終域の要素は全て使われていなくても良い(終域の要素に対応しない定義域の要素があっても良い)。
これに対して全射は「終域の要素が全て使われている写像」である。

例1′.(料理を食べるときに使う食器との対応規則の改変ver.)
X={,}X={,}Y={,,,}Y={,,,}とする。
このとき、写像h0:XYh0:XY

  1. h0()=h0()=
  2. h0()=h0()=
  3. h0()=h0()=

で定める。
このとき、YYの要素であるスプーン、ナイフ、手にはそれぞれと対応するカレー、ステーキ、おにぎりというXXの要素が存在する。
しかし、足YYと対応するXXの要素は存在しない。
つまり、終域の要素が全て使われているわけではない(使われていない終域の要素が存在する)。
従って、この写像は全射ではない。
同様に例1.も全射ではない。

例2.(数学っぽい例)
X={1,2,3}X={1,2,3}Y={1,4,9}Y={1,4,9}とする。
写像g:XYg:XY

  1. g(1)=1g(1)=1
  2. g(2)=4g(2)=4
  3. g(3)=9g(3)=9

で定める。
このとき、終域YYの要素1,4,91,4,9には全て、それぞれに対応する定義域XXの要素が存在する。
つまり、終域のすべての要素が使われている。
従って、g:XYg:XYは全射である。

例3′.(実数値の関数のちょっと改変ver.)
X=Y={xRx0}X=Y={xRx0}とする。
このとき、写像f0:XYf0:XYf0(x)=x2f0(x)=x2で定める。
このf0f0は全射である。
実際、任意のyYyYに対して、±yX±yXが存在するからである。
ここで、このf0f0は単射でもある。
なぜなら、任意のx1,x2Xx1,x2Xに対して、x1x2x1x2ならば、f0(x1)=x21f0(x1)=x21であり、f0(x2)=x22であるので、f0(x1)f0(x2)であるからである。

一方、X=Y=Rとした例3.は全射ではない。
というのも、負の実数yY=Rが対応するxX=Rが存在しないからである。

これを論理式で書けば、次である。

全射 f:XYを写像とする。このとき、f全射(a surjection, (形)surjective)もしくは上への写(an onto mapping, onto)であるとは、 (yY)(xX) s.t. y=f(x) が成り立つことを言う。

ここで1つ事実を述べる。

命題4.(写像が全射であることと同値な条件) 写像f:XYが全射であることと、f(X)(=Image(f))=Yであることは同値。 すなわち、 f:XYf(X)=Y である。 すなわち、写像が全射であることと、値域と終域が一致することは同値である、ということである。

この証明はさほど難しくないので、是非挑戦してみてほしい。

(証明)
f:XYを写像とする。
このとき、「f:XYが全射f(X)=Y」かつ「f(X)=Yf:XYが全射」が真であることを示せば良い。

①「f:XYが全射f(X)=Y」の証明
写像fが全射であるとする。
すなわち、
(yY)(xX) s.t. y=f(x)
が成り立っているとする。
このとき、

  1. f(X)Y,
  2. f(X)Y

を示せば良い(※集合が等しいとはこういうことだった!論理と集合シリーズ その5を参照)。

  1. f(X)Yについて
    (yf(X)yY)
    を示せば良い(※部分集合とはこういうことだった!論理と集合シリーズ その5参照)。
    f(X)fの値域であるので、
    f(X)={f(x)YxX}
    である(写像って?を参照)。
    任意のyf(X)に対して、f(X)={f(x)YxX}なのだから、y=f(x)と書ける。
    f(x)xXと対応するYの要素を指すのだから、f(x)Yである。
    すなわち、yYである。
    ※この1.は、fが全射でなくとも、写像であれば常に成り立つ。
  2. f(X)Yについて
    (yYyf(X))
    を示せば良い。
    fが全射であるため、
    (yY)(xX) s.t. y=f(x)
    が成り立っている。
    すなわち任意のyYに対して、y=f(x)を満たすxXを見つけてこれる。
    f(X)={f(x)xX}なのだから、f(x)f(X)である。
    従って、yf(X)である。
    故に、f:XYが全射f(X)=Yである。

②「f(X)=Yf:XYが全射」の証明
f(X)=Yとする。
このとき
(yY)(xX) s.t. y=f(x)
を示せば良い。
すなわち、上記を満たすようなxXを見つけてきなさい、ということである。
今、f(X)=Yなのだから、任意のyYに対して、yf(X)である(f(X)Yかつf(X)Yだから)。
従って、あるx0Xが存在して、y=f(x0)である。
xとして先程見つけたx0を採用すれば、任意のyYに対して、あるxXが存在して、y=f(x)を満たす。
従って、
(yY)(xX) s.t. y=f(x)
が成り立つ。
故に「f(X)=Yf:XYが全射」が成り立つ。

以上により、
f:XYf(X)=Y
である。
(Q.E.D.)

この命題により、「写像f:XYが全射と言われたらば、f(X)=Yのことだ!」と思って良いわけである。
f(X)は任意のxXに対してそのxと対応するYの要素の集合なのだから、f(X)=Yということは、Yの要素が全部使われているということなのである。

今回は全射について解説した。

全射は終域のすべての要素が使われている(終域のすべての要素に対応がある)ような写像である。
また、全射であることと、終域が定義域の順像と一致していることは同値である。
従って、「全射とは終域が定義域の順像と一致している写像のこと」と思ってもらって構わない。

次回は、「全単射」について解説する。
全単射は逆写像(逆関数)を語る上で必要不可欠な概念である。

乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!

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