本記事の内容
本記事はベクトルの外積(特に3次元)と点列の外積の極限を解説する記事です。
本記事を読むにあたり、点列の極限について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。
では早速行きましょう!
この記事を読む前に…
本記事は点列の外積の極限が極限の外積と一致する、ということを説明する記事です。
正直なところ、その目的を達成するだけだった場合、外積の成分表示だけ分かっていればOKなのです。
従って、「外積は今は必要なことだけ分かってればいいや」という方はベクトルの外積の幾何的な説明と3次元ベクトルの外積の成分表示だけ読んでいただければ十分です。
ベクトルの外積
ベクトルの外積を知る上で最も重要なのが、
ということです。
「なぜ?」と思うかもしれませんが、そのためには「多元数」の話をしなければならず、本記事の趣旨とはずれてしまいますので省略します。
さらに言えば、本当に真面目にベクトルの外積を語ろうとすると殆どベクトル解析の分野になってしまいますので、ここでは分かりやすい場合(特に3次元)について述べることにします。
以降の文章は「3次元のベクトルについて語ってるのだな」と思って読んで頂けると嬉しいです。
(筆者もそのつもりで書いてます)
では内積は既に高校数学で学んでいるので、主に外積について説明します。
ちなみに内積は
ということに注意してください。
言ってしまえば、ベクトルの内積(,)は(,):R2×R2→Rという写像だ、とも捉えられます。
ベクトルの外積
ベクトルの内積は実数値でした。
一方でベクトルの外積はベクトルです。
「何?ベクトル同士の外積という掛け算の結果はベクトルなのかネ?」と思うかもしれません。
「何か違和感があるがネ」と。
たしかにそうかも知れません。
しかし、それは実数の掛け算のように「〇〇が△△個ある」という捉え方をしているからです。
実はこれは「積」に対しては間違っていないのですが、もっと広く考えることができます。
2×3=6は「2という数字と3という数字のペアに6という数字を対応付けます。」
と捉えてみましょう。
この規則こそが掛け算で、その規則を×と書きましょう、というわけなのです。
故にベクトルの外積は「ベクトルのペアに、とあるベクトルを対応付けする規則です。」
と捉えます。
要は
ということを言いたかったのです。
内積と同様に3次元ベクトルの外積×は×:R3×R3→R3という写像だ、とも捉えられます。
では、ベクトルaとベクトルbの外積a×bはどんなベクトルか、ということを幾何的に(図で)説明します。
その後に具体的にどんな成分か、を明示します。
ベクトルの外積の幾何的な説明
a∈R3とb∈R3の外積a×bは以下のベクトルです。

a×bは大きさがaとbが張る平行四辺形の面積と一致していて、かつ方向は右ねじの法則に則った方向で(b×aは向きがa×bと逆)、かつa、bの両方と垂直な(直交している)ベクトルです。
ベクトルは向きと大きさを持つ量ですので、これらの情報でただ1つのベクトルが対応します。
まとめると、
- aとbが張る平行四辺形の面積と一致している。
- 方向は右ねじの法則に則った方向である。
- a、bの両方と垂直な(直交している)ベクトル。
というわけです。
3次元ベクトルの外積の成分表示
この節の最初に「外積はすべての次元で語ることができるわけではない」という話でした(これは厳密ではないかもしれませんが、イメージはそんなもんです。)
では早速成分表示をします。
この成分表示をすることで、
- aとbが張る平行四辺形の面積と一致している。
- 方向は右ねじの法則に則った方向である。
- a、bの両方と垂直な(直交している)ベクトル。
ということを確かめることができますが、ここでは省略します。
「こんな文字列を覚えろと言うのかネ?」と思うかもしれませんが、覚え方があります。
それを以下の図で説明します。


例1.
a=(123),b=(456)
としたとき、
a×b=(a2b3−a3b2a3b1−a1b3a1b2−a2b1)=(2×6−3×53×4−1×61×5−2×4)=(−36−3)
(a,a×b)も(b,a×b)も0であることが分かります。
また、平行四辺形の面積と一致しているかは余弦定理を使えば分かります。

3次元の点列の外積の極限と極限の外積は一致する
「点列?」となっている方は【解析学の基礎シリーズ】点列編 その1を参照してください。
さて、本題に入っていきます。
いきなりですが、主張を明示してしまいましょう。
実は、これは前回までの知識で簡単に証明ができる。
ただ、外積の計算が面倒なだけです。
証明
左辺と右辺をそれぞれ式変形して一致することを示します。
an=(an,1an,2an,3),bn=(bn,1bn,2bn,3)
とします。
このとき、
limn→∞(an×bn)=limn→∞(an,2bn,3−an,3bn,2an,3bn,1−an,1bn,3an,1bn,2−an,2bn,1)
です。
ここで、
が成り立つので(証明は【解析学の基礎シリーズ】点列編 その1を参照してください)、
limn→∞(an,2bn,3−an,3bn,2an,3bn,1−an,1bn,3an,1bn,2−an,2bn,1)=(limn→∞(an,2bn,3−an,3bn,2)limn→∞(an,3bn,1−an,1bn,3)limn→∞(an,1bn,2−an,2bn,1))
です。
さらに、
- limn→∞(an+bn)=limn→∞an+limn→∞bn
- limn→∞(an−bn)=limn→∞an−limn→∞bn
- limn→∞(anbn)=(limn→∞an)⋅(limn→∞bn)
が成り立つので(証明は【解析学の基礎シリーズ】点列編 その2を参照してください)、
(limn→∞(an,2bn,3−an,3bn,2)limn→∞(an,3bn,1−an,1bn,3)limn→∞(an,1bn,2−an,2bn,1))=(limn→∞an,2bn,3−limn→∞an,3bn,2limn→∞an,3bn,1−limn→∞an,1bn,3limn→∞an,1bn,2−limn→∞an,2bn,1)=((limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,3)−(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,2)(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,1)−(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,3)(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,2)−(limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,1))
従って、
limn→∞(an×bn)=((limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,3)−(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,2)(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,1)−(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,3)(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,2)−(limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,1))
です。
一方で、
(limn→∞an)×(limn→∞bn)=limn→∞(an,1an,2an,3)×limn→∞(bn,1bn,2bn,3)
です。
ここでも、定理(点列の収束と同値な命題)を用いる事によって、
limn→∞(an,1an,2an,3)×limn→∞(bn,1bn,2bn,3)=(limn→∞an,1limn→∞an,2limn→∞an,3)×limn→∞(limn→∞bn,1limn→∞bn,2limn→∞bn,3)=((limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,3)−(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,2)(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,1)−(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,3)(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,2)−(limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,1))
です。
従って、
(limn→∞an)×(limn→∞bn)=((limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,3)−(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,2)(limn→∞an,3)⋅(limn→∞bn,1)−(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,3)(limn→∞an,1)⋅(limn→∞bn,2)−(limn→∞an,2)⋅(limn→∞bn,1))
です。
以上のことから
limn→∞(an×bn)=(limn→∞a×limn→∞bn)
です。
証明終わり
結
今回は3次元のベクトルの外積と点列の外積の極限は極限の外積と一致するということを証明しました。
これの証明は数列の極限に帰着できるため、証明は簡単です。
そういう意味では定理(点列の収束と同値な命題)は強力です。
次回は和差積と来たので点列の商の極限について解説します。
ただし、積と同様にベクトルでは正直に割り算ができないので、点列と数列の商の極限です。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
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