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「\(f(x)\times g(x)\)の可積分性と\(\displaystyle\frac{1}{f(x)}\)の可積分性」【解析学の基礎シリーズ】積分編 その8

積分法

本記事の内容

本記事は積の可積分性と逆数の可積分性を解説する記事です。

本記事を読むにあたり、可積分条件について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。

積の可積分性

積の可積分性と言っても、積の微分のように何か公式的なものがあるわけではありません。
単に、ある条件下の関数は積をとっても可積分ですよ、という話です。

積の可積分性を一言で。

一言で言えば、

有界な可積分関数の積も可積分関数です。

という主張です。

では、明示します。

積の可積分性の明示

定理1.

\(I\subset\mathbb{R}^n\)とする。2つの有界な関数\(f\)、\(g\)が\(I\)上で可積分であれば、積\(fg\)も\(I\)上で可積分である。

証明は比較的シンプルです。

定理1.の証明

\(f\)と\(g\)は有界なので、
$$
\left\|f(\boldsymbol{x})\right\|\leq C_1,\quad \left\|g(\boldsymbol{x})\right\|\leq C_2\quad (\boldsymbol{x}\in I)
$$
という実数\(C_1\geq 0\)と\(C_2\geq0\)が存在します。
ここで、\(C=\max\{C_1,C_2\}\)とすると、
$$
\left\|f(\boldsymbol{x})\right\|\leq C,\quad \left\|g(\boldsymbol{x})\right\|\leq C\quad (\boldsymbol{x}\in I)
$$
が成り立っています(\(C\geq0\))。

このとき、任意の\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in I\)に対して
\begin{eqnarray}
\left|f(\boldsymbol{x})g(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})g(\boldsymbol{y})\right|&=&\left|f(\boldsymbol{x})g(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})g(\boldsymbol{y})\color{red}{+f(\boldsymbol{y})g(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})g(\boldsymbol{x})}\right|\\
&=&\left| \left( f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})\right)g(\boldsymbol{x})+f(\boldsymbol{y})\left(g(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{y}) \right)\right|\\
&\leq&\left| \left( f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})\right)g(\boldsymbol{x})\right|+\left|f(\boldsymbol{y})\left(g(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{y}) \right)\right|\\
&=&\left| \left( f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})\right)\right|\cdot \left|g(\boldsymbol{x})\right|+\left|f(\boldsymbol{y})\right|\cdot\left|\left(g(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{y}) \right)\right|\\
&\leq&\left| \left( f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})\right)\right|\cdot C+C\cdot\left|\left(g(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{y}) \right)\right|\\
&=&C\left\{\left|f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y}) \right|+\left|g(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{y}) \right|\right\}
\end{eqnarray}
です。

これにより、振幅\(a\left( fg,I_k\right)\)には
$$
a\left( fg,I_k\right)\leq C\left\{a\left(f,I_k \right)+a\left(g,I_k \right)\right\}
$$
が成り立ちます。
ここで、\(f\)と\(g\)が可積分なので、以下の3.を満たします。

定理0.(可積分条件)

\(I\)を\(\mathbb{R}^n\)の有界閉集合とするとき、\(I\)上の有界な実数値関数\(f:I\to \mathbb{R}\)に対して、次の1.~5.は同値である。
  1. \(f\)は\(I\)上で(リーマン)可積分である。
  2. \(\displaystyle\lim_{d(\Delta)\to0}\left( S_\Delta-s_\Delta\right)=0\)
  3. リーマンの可積分条件
  4. 小区間\(I_k\ (k\in K(\Delta))\)上の\(f\)の振幅\(a(f,I_k)=M_k-m_k\)に対して、 $$ \lim_{d(\Delta)\to0}\sum_{k\in K(\Delta)}a(f,I_k)v(I_k)=0 $$ である。
  5. ダルブーの可積分条件
  6. \(S=s\)、すなわち、 $$ \underline{\int_I} f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\overline{\int_I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x} $$ である。
  7. 任意の\(\varepsilon>0\)に対して、\(S_\Delta-s_\Delta<\varepsilon\)となる\(I\)の分割\(\Delta\)が存在する。
 そして、これらの条件が満たされるとき、 $$ \int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=S=s $$ が成り立つ。

定理0.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その4および【解析学の基礎シリーズ】積分編 その5を御覧ください。

故に、\(fg\)は\(I\)上で可積分です。

定理1.の証明終わり

逆数の可積分性

これも主張としてはシンプルです。

逆数の可積分性を一言で。

一言で言えば、

\(0\)でない可積分関数はその逆数も可積分関数です。

という主張です。

では、明示します。

逆数の可積分性の明示

定理2.

\(I\subset\mathbb{R}^n\)とする。\(I\)上で有界かつ\(0\)でない関数\(f\)が\(I\)上で可積分で、\(\displaystyle\frac{1}{f}\)も有界であれば、\(\displaystyle\frac{1}{f}\)も\(I\)上で可積分である。

定理2.の証明

\(\displaystyle\frac{1}{f}\)が有界なので、
$$
\left|\frac{1}{f(\boldsymbol{x})}\right|\leq C\quad(\boldsymbol{x}\in I)
$$
となるような\(C>0\)が存在します。

任意の\(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in I\)に対して
$$
\left|\frac{1}{f(\boldsymbol{x})}-\frac{1}{f(\boldsymbol{y})}\right|\leq C^2\left|f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})\right|
$$
だから、
$$
a\left( \frac{1}{f},I_k\right)\leq C^2\cdot a\left(f,I_k \right)
$$
が成り立つので、定理0.の3.を満たすから\(\displaystyle\frac{1}{f}\)も\(I\)上で可積分です。

定理2.の証明終わり

定理1.と定理2.を使ってみます。

例3. \(I=[0,a]\)、\(f(x)=g(x)=x\)とします。
このとき、\(f\)と\(g\)は\(I\)で単調な関数なので、\(I\)上で可積分です(※これについては【解析学の基礎シリーズ】積分編 その6を御覧ください)。

では、\(f(x)g(x)=x^2\)が可積分かどうかを考えます。
しかし、これも、\(f(x)g(x)\)が\(I=[0,a]\)で単調な関数なので、可積分です。

実際に積分はどうなるか、ということをサラッと書きます。

\begin{eqnarray}
\int_If(x)g(x)\ dx&=&\int_Ix^2\ dx\\
&=&\lim_{n\to\infty}\frac{a^3}{n^3}\cdot\frac{n(n+1)(2n+1)}{6}=\frac{1}{3}a^3
\end{eqnarray}
です。

例4. \(I=[1,2]\)、\(f(x)=x\)とします。
先程の通り、\(f\)は\(I\)で単調なので、可積分です。
このとき\(\displaystyle\frac{1}{f(x)}=\frac{1}{x}\)も可積分です。
これは、少々先取りの話になってしまうのでカットしますが、
\begin{eqnarray}
\int_1^2\frac{1}{x}\ dx&=&\left[ \log x\right]_1^2=\log 2-\log 1=\log2
\end{eqnarray}
となります。

皆様のコメントを下さい!

数学者に対するジョークというものがあります。
筆者が知っているのは以下です。

天文学者と物理学者と数学者がスコットランドで休暇を過ごしていた。列車の窓から眺めていると、平原の真ん中に黒い羊がいるのが見えた。

天文学者:なんということだ!スコットランドの羊は全て黒いんだね。
物理学者:いやいや。何匹かが黒いってだけだよ。
数学者:(やれやれという調子で)スコットランドには、「こちら側の片面が黒い羊が1匹存在するような平原が存在する」ということが分かるだけだ。

An astronomer, a physicist and a mathematician were holidaying in Scotland. Glancing from a train window, they observed a black sheep in the middle of a field.
“How interesting,” observed the astronomer, “all scottish sheep are black!”
To which the physicist responded, “No, no! Some Scottish sheep are black!”
The mathematician gazed heavenward in supplication, and then intoned, “In Scotland there exists at least one field, containing at least one sheep, at least one side of which is black.”

数学者は厳密だ、ということを言いたいのでしょう。
私も数学者の意見には賛成といえば賛成ですが、天文学者と物理学者の言いたいことも分かります。

皆様はこのようなジョークはご存知ですか?
コメントで教えて下さい!

今回は、積の可積分性と逆数の可積分性について解説しました。
微分法のときと同様に、多少の条件はあれど、可積分な関数の積も逆数も可積分です。
証明には可積分条件を用います。

次回は区間に関する加法性を解説します。

乞うご期待!
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