スポンサーリンク

「有界閉集合上の連続な関数は可積分」「積分の強単調性」【解析学の基礎シリーズ】積分編 その12

積分法

本記事の内容

本記事は「有界閉集合上の連続関数は可積分である(連続関数の可積分性)」と積分の強単調性について解説する記事です。

本記事を読むにあたり、一様連続、ハイネの定理と可積分条件について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。

↓一様連続の記事

↓可積分条件の記事

有界閉集合上の連続関数は、その有界閉集合上で可積分です。

有界閉集合上の連続な関数は、その有界閉集合上で可積分です。

この事実は非常に強力な主張です。
なぜかというと、この事実のおかげで\(\sin x\)やらの三角関数(\(\tan x\)については\(\mathbb{R}\)では不連続なので、適切に定義域を定める必要がありますが)、対数関数(これも定義域を適切に定める必要があります)、指数関数、多項式関数などが可積分だ、ということが従います。

とはいえ、勿論、先に上げた三角関数やら対数関数やらはリーマン和の極限が収束することを確かめることでも可積分性を示すことができますが、骨が折れます。
しかし、この有界閉集合上の連続関数の可積分性を論じることでそれら全ての(面倒くさい)リーマン和の極限やら上積分、下積分やらの話をせずに良くなります。
(※積分についても連続関数というのは非常に声質が良く、扱いやすい関数だ、とも言えます。)

故に、強力な主張なのです。

では、主張を明示します。

連続関数の可積分性の明示とその証明

定理1.(連続関数の可積分性)

\(\mathbb{R}^n\)の有界閉集合\(I\)上で連続な関数\(\boldsymbol{f}:I\to\mathbb{R}^m\)は、\(I\)上で可積分である。

この定理の証明には、前回解説したハイネの定理と、以前解説した可積分条件を使います。

定理1.の証明

\(\boldsymbol{f}\)は仮定からベクトル値関数ですが、\(\boldsymbol{f}\)を実数値関数\(f\)として証明すれば十分です。
なぜならば、以下の定理から、ベクトル値関数の積分は各成分の実数値関数の積分に帰着されるからです。

定理2.(有界なベクトル値関数の可積分条件)

\(I\subset\mathbb{R}^n\)を有界な閉集合とする。このとき有界なベクトル値関数\(\boldsymbol{f}:I\to\mathbb{R}^m\)が\(I\)上で可積分であるための必要十分条件は、\(\boldsymbol{f}\)の成分である実数値関数\(f_i:I\to\mathbb{R}\ (i=1,2,\dots,m)\)が全て\(I\)上で可積分であることである。そしてこのとき、 $$ \int_I\boldsymbol{f}(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}= \left( \begin{array}{c} \displaystyle\int_If_1(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\\ \displaystyle\int_If_2(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\\ \vdots\\ \displaystyle\int_If_m(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\\ \end{array} \right) $$ である。

定理2.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その10を御覧ください。

ここで「今、本当に定理2.が使えるの?有界な関数じゃないといけないんじゃないの?」となるかもしれませんが、大丈夫です。
なぜなら以下の事実が成り立つからです。

定理3.(多次元版ワイエルシュトラスの最大値定理)

\(K\)は\(\mathbb{R}^n\)の空でない有界な閉集合であり、\(f:K\to\mathbb{R}\)は\(K\)で連続であるとする。このとき、\(f\)は最大値を持つ。すなわち、 $$ (\exists \boldsymbol{c}\in K)\ (\forall \boldsymbol{x}\in K)\ f(\boldsymbol{c})\geq f(\boldsymbol{x}) $$ が成り立つ。 最小値についても同様である。

定理3.の証明は【解析学の基礎シリーズ】多変数関数編 その18を御覧ください。

要するに、有界閉集合上の連続関数には最大値と最小値が存在する、ということですので、この関数は有界です。
今の状況は関数\(\boldsymbol{f}\)が有界閉集合で連続なので、有界だから定理2.が使える、ということです。

つまり何が言いたかったかと言うと、証明したい定理1.の仮定はベクトル値関数なのですが、定理2.定理3.から実数値関数の場合を証明すれば十分だ、ということです。

というわけで、\(I\subset \mathbb{R}^n\)を有界閉集合として、\(I\)で連続な関数\(f:I\to\mathbb{R}\)を考えます。
今、\(f:I\to\mathbb{R}\)の定義域\(I\)は有界閉集合で、かつ\(f\)は\(I\)で連続ですので、以下の定理が成り立ちます。

定理4.(ハイネの定理)

\(A\subset\mathbb{R}^n\)が有界閉集合だとする。このとき、\(\boldsymbol{f}:A\to\mathbb{R}^m\)が\(A\)で連続ならば、\(\boldsymbol{f}\)は\(A\)上一様連続である。

定理4.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その11を御覧ください。

故に、今、\(f\)は\(I\)上で一様連続です。
従って、
$$
(\forall \varepsilon>0)\ (\exists \delta>0)\ {\rm s.t.}\ (\forall \boldsymbol{x}\in A)\ (\forall \boldsymbol{y}\in A)\ (\left\|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{y}\right\|<\delta\Longrightarrow \left|f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})\right|<\varepsilon)
$$
が成り立ちます。

そこで、\(d(\Delta)<\delta\)となる\(I\)の分割\(\Delta\)を任意に1つ取れば、各\(k\in K(\Delta)\)に対して、
$$
\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in I_k\Longrightarrow \left\|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{y}\right\|\leq d(\Delta)<\delta\Longrightarrow\left|f(\boldsymbol{x})-f(\boldsymbol{y})\right|<\varepsilon\cdots①
$$
が成り立っている、ということになります。
ちなみに、\(\left\|\boldsymbol{x}-\boldsymbol{y}\right\|\leq d(\Delta)\)が成り立つのは、\(d(\Delta)\)が分割\(\Delta\)から得られる小区間\(I_k\)の直径の最大値だからです。
従って、①が任意の\(k\in K(\Delta)\)で成り立っているわけですので
$$
a\left( f,I_k\right)\leq\varepsilon\quad(k\in K(\Delta))
$$
が成り立っています。
また、
$$
v(I)=\sum_{k\in K(\Delta)}v(I_k)
$$
ですので、
$$
\sum_{k\in K(\Delta)}a\left( f,I_k\right)v(I_k)\leq \varepsilon v(I)
$$
が成り立ちます。

ここで、可積分条件を使います。

定理0.(可積分条件)

\(I\)を\(\mathbb{R}^n\)の有界閉集合とするとき、\(I\)上の有界な実数値関数\(f:I\to \mathbb{R}\)に対して、次の1.~5.は同値である。
  1. \(f\)は\(I\)上で(リーマン)可積分である。
  2. \(\displaystyle\lim_{d(\Delta)\to0}\left( S_\Delta-s_\Delta\right)=0\)
  3. リーマンの可積分条件
  4. 小区間\(I_k\ (k\in K(\Delta))\)上の\(f\)の振幅\(a(f,I_k)=M_k-m_k\)に対して、 $$ \lim_{d(\Delta)\to0}\sum_{k\in K(\Delta)}a(f,I_k)v(I_k)=0 $$ である。
  5. ダルブーの可積分条件
  6. \(S=s\)、すなわち、 $$ \underline{\int_I} f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\overline{\int_I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x} $$ である。
  7. 任意の\(\varepsilon>0\)に対して、\(S_\Delta-s_\Delta<\varepsilon\)となる\(I\)の分割\(\Delta\)が存在する。
 そして、これらの条件が満たされるとき、 $$ \int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=S=s $$ が成り立つ。

定理0.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その4および【解析学の基礎シリーズ】積分編 その5を御覧ください。

今までのことを整理すると、
$$
(\forall \varepsilon>0)\ (\exists \delta>0)\ {\rm s.t.}\ \left(d(\Delta)<\delta\Longrightarrow \sum_{k\in K(\Delta)}a\left( f,I_k\right)v(I_k)\leq \varepsilon v(I)\right)
$$
が成り立っている、ということですので、定理0.の3.を満たしていますので、\(f\)は\(I\)上で可積分です。

定理1.の証明終わり

この章の最初に述べましたが、定理1.のが成り立つので、定義域を適切に定める(有界閉集合となるように、という意味)ことで

  • 三角関数
  • 対数関数
  • 指数関数
  • 多項式関数
  • 有理関数

などが可積分だ、ということが分かります。
最初に述べた通り、これらの関数は勿論、定理0.(可積分条件)を満たすかどうかを地道に確かめることでも可積分性を証明できますが、誠に骨が折れます。

また、これは「可積分である」ということを述べているだけで似すぎないので、リーマン和の極限が一体どの実数に収束するのか、ということについては更に踏み込んだ議論が必要になります。

これについて、つまりは先に挙げた関数たちの積分がどの実数に収束するのか、ということについては後の記事で解説します。

積分の強単調性

この章では積分の強単調性について解説します。

以前の記事で、”積分の単調性”について解説しました。

以前の記事(【解析学の基礎シリーズ】積分編 その2)で、”積分の単調性”について解説しました。
サラッと復習すると、以下でした。

定理5.(積分の単調性)

\(f,g\)が\(I\)上で可積分で、 $$ (\forall \boldsymbol{x}\in I)\ f(\boldsymbol{x})\geq g(\boldsymbol{x}) $$ が成り立つならば、 $$ \int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\geq \int_Ig(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x} $$ が成り立つ。

定理5.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その2を御覧ください。

定理5.には関数の連続性に関する条件は一切ありません。
しかし、「関数が連続である」という条件を追加することで、より強い主張になります。

それが、積分の”強”単調性です。
とはいえ、主張自体は定理5.と遜色ないものです。

積分の強単調性の明示とその証明

では、主張を明示して証明していきます。

定理6.(積分の強単調性)

\(I\subset\mathbb{R}^n\)を体積が正の有界閉集合とし、\(f:I\to\mathbb{R}\)、\(g:I\to\mathbb{R}\)が\(I\)上で連続で $$ (\forall \boldsymbol{x}\in I)\quad f(\boldsymbol{x})\geq g(\boldsymbol{x}) $$ で、かつ $$ (\exists \boldsymbol{x}_0\in I)\ {\rm s.t.}\ f(\boldsymbol{x}_0)>g(\boldsymbol{x}_0) $$ であるならば、 $$ \int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}>\int_Ig(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x} $$ である。

定理6.の証明

\(h:I\to\mathbb{R}\)を任意の\(\boldsymbol{x}\in I\)に対して\(h(\boldsymbol{x})=f(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{x})\)で定めます。
今、
$$
(\forall \boldsymbol{x}\in I)\quad f(\boldsymbol{x})\geq g(\boldsymbol{x})
$$
ですので、任意の\(\boldsymbol{x}\in I\)に対して\(h(\boldsymbol{x})\geq0\)です。
また、\(\boldsymbol{x}_0\in I\)については\(h(\boldsymbol{x}_0)>0\)です。

さて、\(\displaystyle a=\frac{h(\boldsymbol{x}_0)}{2}\)とします。
ここで、以下の事実を使います。

定理7.

\(I\)を\(\mathbb{R}\)の区間、\(f:I\to\mathbb{R}\)、\(g:I\to\mathbb{R}\)とする。
  • \(a\in I\)とし、\(f\)と\(g\)は\(a\)で連続とするとき、次が成り立つ。
    1. \(f(x)+g(x)\)、\(f(x)-g(x)\)、\(f(x)g(x)\)は\(a\)で連続である。すなわち、
      • \(\displaystyle \lim_{x\to a}(f(x)+g(x))=f(a)+g(a)\),
      • \(\displaystyle \lim_{x\to a}(f(x)-g(x))=f(a)-g(a)\),
      • \(\displaystyle \lim_{x\to a}(f(x)g(x))=f(a)g(a)\).
      である。
    2. \(\displaystyle g(a)\neq 0\)ならば、\(\dfrac{f(x)}{g(x)}\)は\(a\)で連続である。すなわち、 $$\lim_{x\to a}\dfrac{f(x)}{g(x)}=\dfrac{f(a)}{g(a)}$$ である。
  • \(f\)と\(g\)は\(I\)で連続であるとするとき、次が成り立つ。
    1. \(f(x)+g(x)\)、\(f(x)-g(x)\)、\(f(x)g(x)\)は\(I\)で連続である。すなわち、
      • \(\displaystyle(\forall a\in I) \lim_{x\to a}(f(x)+g(x))=f(a)+g(a)\),
      • \(\displaystyle(\forall a\in I) \lim_{x\to a}(f(x)-g(x))=f(a)-g(a)\),
      • \(\displaystyle(\forall a\in I) \lim_{x\to a}(f(x)g(x))=f(a)g(a)\).
      である。
    2. \(\displaystyle g(a)\neq 0\)ならば、\(\dfrac{f(x)}{g(x)}\)は\(I’=\{x\in\mid g(x)\neq 0\}\)で連続である。すなわち、 $$(\forall a\in I’)\ \lim_{x\to a}\dfrac{f(x)}{g(x)}=\dfrac{f(a)}{g(a)}$$ である。

定理7.の証明は【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その7を御覧ください。

ちなみに、定理7.は1変数に関する主張ですが、多変数でも同じことが成り立ちます。

定理7.から、\(h\)は連続です。
従って、ある\(\varepsilon>0\)が存在して、任意の\(\boldsymbol{y}\in U(\boldsymbol{x}_0;\varepsilon)\cap I\)に対して\(h(\boldsymbol{y})>a\)となります。
そこで、\(I\)に含まれ、かつ\(\boldsymbol{x}_0\)を含むある閉集合\(J\)の任意の要素\(\boldsymbol{z}\)上で\(h(\boldsymbol{z})>a\)です。
また、\(v(J)\)としてよいです。

さて、今、\(I\)の分割\(\Delta\)により得られる小区間\(I_k\)のうち、その1つが\(I_{k_0}=J\)となるものを取ります(つまり、\(I_{k_0}=J\)となるような\(k_0\in K(\Delta)\)を取る、ということです)。
ここで、次の事実と定理5.(積分の単調性)を使います。

定理8.(区間に関する加法性)

\(\Delta\)を\(\mathbb{R}^n\)の有界閉集合\(I\)の任意の分割とし、\(f\)を\(I\)上の有界な関数とする。\(f\)が\(I\)上で可積分ならば、全ての\(k\in K(\Delta)\)に対し、\(f\)は\(I_k\)上で可積分で $$ \int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\sum_{k\in K(\Delta)}\int_{I_k}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\cdots① $$ が成り立つ。逆に、\(f\)が全ての\(I_k\ (k\in K(\Delta))\)上で可積分ならば、\(f\)は\(I\)上で可積分で①が成り立つ。

定理8.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その9を御覧ください。

定理5.定理8.から
\begin{eqnarray}
\int_I\left( f(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{x})\right)\ d\boldsymbol{x}
&=&\sum_{k\in K(\Delta)}\int_{I_k}h(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\\
&\geq&\int_Jh(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\\
&\geq&a\cdot v(J)>0
\end{eqnarray}
が成り立ちます。
すなわち、
\begin{eqnarray}
\int_I\left( f(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{x})\right)\ d\boldsymbol{x}>0
\end{eqnarray}
が成り立ちます。

ここで、積分の線型性を使います。

定理9.(積分の線型性)

\(\mathbb{R}^n\)の有界閉区間\(I\)上で可積分な実数値関数全体の集合\(\mathcal{R}(I)\)は実線型空間であり、\(I\)上の積分は\(\mathcal{R}(I)\)から\(\mathbb{R}\)への線型写像である。すなわち、\(\forall f,g\in\mathcal{R}(I)\)、\(\forall c\in\mathbb{R}\)に対して、\(f+g,\ cf\in\mathcal{R}(I)\)であり、かつ
  1. \(\displaystyle\int_I(f+g)(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=\int_{I}f(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}+\int_{I}g(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\)
  2. \(\displaystyle\int_I\left( cf\right)(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}=c\int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}\)
が成り立つ。

定理9.の証明は【解析学の基礎シリーズ】積分編 その2を御覧ください。

定理9.から
$$
\begin{eqnarray}
\int_I\left( f(\boldsymbol{x})-g(\boldsymbol{x})\right)\ d\boldsymbol{x}=\int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}-\int_Ig(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}
\end{eqnarray}
$$
となるので、
$$
\int_If(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}>\int_Ig(\boldsymbol{x})\ d\boldsymbol{x}
$$
が成り立ちます。

定理6.の証明終わり

積分の強単調性を確かめてみます。

まずは簡単な例から。

例10. \(I=[0,1]\)として、\(f:I\to\mathbb{R}\)を\(f(x)=x^2\)、\(g:I\to\mathbb{R}\)を\(g(x)=x^3\)として定めます。
\(I\)は有界閉集合で、\(f\)も\(g\)も\(I\)で連続なので可積分です(定理1.)。
このとき、任意の\(x\in I\)に対して\(x^2\geq x^3\)ですので、\(f(x)\geq g(x)\)です。
また、\(\displaystyle\frac{1}{2}\)について\(\displaystyle\frac{1}{4}\geq\frac{1}{8}\)ですので、\(\displaystyle x_0=\frac{1}{2}\)とすると\(f(x_0)>g(x_0)\)となります。

従って、定理6.を使うことができる状況です。
\(f\)と\(g\)の\(I\)上での積分を計算してみると、
\begin{eqnarray}
\int_If(x)\ dx&=&\int_Ix^2\ dx=\left[\frac{1}{3}x^3 \right]_0^1=\frac{1}{3}(1-0)=\frac{1}{3}\\
\int_Ig(x)\ dx&=&\int_Ix^3\ dx=\left[\frac{1}{4}x^4 \right]_0^1=\frac{1}{4}(1-0)=\frac{1}{4}\\
\end{eqnarray}
となるので、
$$
\int_If(x)\ dx>\int_Ig(x)\ dx
$$
が確かに成り立っています。

例11. \(I=\left[ 0,\frac{\pi}{2}\right]\)として、\(f:I\to\mathbb{R}\)を\(f(x)=x\)、\(g:I\to\mathbb{R}\)を\(g(x)=\sin x\)として定めます。
\(I\)は有界閉集合で、\(f\)も\(g\)も\(I\)で連続なので可積分です(定理1.)。
このとき、任意の\(x\in I\)に対して\(x\geq \sin x\)ですので、\(f(x)\geq g(x)\)です。
また、\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\)について\(\displaystyle\frac{\pi}{2}\geq1\)ですので、\(\displaystyle x_0=\frac{\pi}{2}\)とすると\(f(x_0)>g(x_0)\)となります。

従って、定理6.を使うことができる状況です。
\(f\)と\(g\)の\(I\)上での積分を計算してみます。
ただし、\(\sin x\)の積分については高校数学の知識として一旦認めます(これについては後の記事で証明します)。
\begin{eqnarray}
\int_If(x)\ dx&=&\int_{\left[ 0,\frac{\pi}{2}\right]}x\ dx=\left[\frac{1}{2}x^2 \right]_0^\frac{\pi}{2}=\frac{1}{2}\left(\frac{\pi^2}{4}-0 \right)=\frac{\pi^2}{8}\\
\int_Ig(x)\ dx&=&\int_{\left[ 0,\frac{\pi}{2}\right]}\sin x\ dx=\left[-\cos x \right]_0^\frac{\pi}{2}=-\left(\cos\frac{\pi}{2} -\cos0 \right)=1\\
\end{eqnarray}
となるので、
$$
\int_If(x)\ dx>\int_Ig(x)\ dx
$$
が確かに成り立っています。

皆様のコメントを下さい!

この記事を書く前日にTwitterで「小中高のときは国語が大の苦手だったけれど、大学で数学を学習してから、数学には国語力が必要だということに気がついた。」という主旨のツイートをしたところ、どうやらご理解を得ることができたようです。

学問を極めようとすると、専門分野だけでなく、視野を広くする必要があるという教訓だと思います。

数学をやることで、別の分野の見方が変わった!という経験がある方はぜひコメントで教えて下さい!

今回は、有界閉集合上の連続関数は、その有界閉集合上で可積分であることと、積分の強単調性について解説しました。

「有界閉集合上の連続関数は、その有界閉集合上で可積分である。」という主張は\(\sin x\)などの単調でないような関数の可積分性を保証してくれる強力な定理です。
また、連続関数だと積分に強単調性(\(=\)を含まない不等式)も成り立ってくれます。

次回は1変数関数の積分に着目して、定積分、不定積分、原始関数について解説します。

乞うご期待!
質問、コメントなどお待ちしております!
どんな些細なことでも構いませんし、「定理〇〇の△△が分からない!」などいただければ全てお答えします!
お問い合わせの内容にもよりますが、ご質問はおおよそ3日以内にお答えします。
もし直ちに回答が欲しければその旨もコメントでお知らせください。直ちに対応いたします。

コメントをする