本記事の内容
本記事はワイエルシュトラスの上限公理とデデキントの定理が同値であることを示す記事です。
本記事を読むにあたり、ワイエルシュトラスの上限公理とデデキントの定理を知っている必要があるので、以下の記事も合わせてご覧ください。
↓デデキントの定理
↓ワイエルシュトラスの上限公理
ワイエルシュトラスの上限公理とデデキントの定理は同値
前回の記事(【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その5)において、デデキントの定理を仮定することでワイエルシュトラスの上限公理を導きました。
実は、この逆、すなわちワイエルシュトラスの上限公理を仮定するとデデキントの定理が得られます。
デデキントの定理とワイエルシュトラスの上限公理は何だったかというと、以下でした。
- Aには最大値が無く、Bには最小値rがある。
- Aには最大値rがあり、Bには最小値がない。
つまり、何が言いたいかというと、先のワイエルシュトラスの上限公理を仮定するとデデキントの定理を証明することができるということです。
証明
(1)デデキントの定理⇒ワイエルシュトラスの上限公理の証明
【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その5で証明済みです。
(2)ワイエルシュトラスの上限公理⇒デデキントの定理
Rの任意の切断(A,B)に対して、Aは上に有界です。
実際、あるU∈Rが存在して、任意のa∈Aに対して、a≤Uであれば良いわけです。
(A,B)は切断であるので、任意のa∈Aおよび任意のb∈Bに対してa<bであるから、UとしてBの要素を取れば良いです。
また、(A,B)が切断であることからA⊂R、A≠∅です。
従って、ワイエルシュトラスの上限公理からLには上限s=supAが存在します。
さらに、(A,B)が切断であるので、R=A∪BかつA∩B=∅であるから、s∈Aかs∈Bのいずれか一方が成り立ちます。
s∈Aのとき、sはAの最大値です。
実際、sは上限であり、上限は上界であるから、任意のx∈A対して、x≤sが成り立ちます。
仮定からs∈Aであるので、sはAの最大値です。
一方s∈Bであるとき、sはBの最小値です。
このとき、任意のb∈Bに対してs≤bであることを示せば良いわけです。
任意のϵ>0について、s−ϵは、sがAの上限であることから、s−ϵ∈Aです。
ここで、s−ϵはsよりも小さい任意の実数を表すことに注意しましょう。
従って、s−ϵ∈Aは任意のx∈Rに対して、x<sならばx∈Aが成り立つことに他なりません。
この命題の対偶を取れば、「任意のx∈Rに対してx∉Aならばx≥s」です。
R=A∪BかつA∩B=∅であるから、x∉Aはx∈Bと同値です。
従って、任意のx∈Rに対してx∈Bならばx≥sです。
以上により、
- Aには最大値が無く、Bには最小値supAがある。
- Aには最大値supAがあり、Bには最小値がない。
のいずれか一方が成り立つことが示されたので、デデキントの定理が示されました。
証明終わり
結
今回はワイエルシュトラスの上限公理とデデキントの定理が同値であることを証明しました。
これにより、ワイエルシュトラスの上限公理を仮定しようが、デデキントの定理を仮定しようが、どちらを仮定してももう一方が導かれるので実数の連続性が担保されるわけです。
次回は「数列?有界?単調列?」です。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
コメントをする