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「初等関数の微分法①(axn, ax, logaxの微分)」【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その5

微分法

本記事の内容

本記事は初等関数の微分、特に多項式関数、指数関数、対数関数の微分について解説し、証明します。

本記事を読むにあたり、微分係数について知っている必要があるため、その際は以下の記事を参照してください。

この記事の地図

最も基本的な関数の微分として、f(x)=axnの微分が挙げられると思います。
nQの場合は、多少の予備知識が必要ですが、おおよそ基本的な難易度で証明が可能です。
しかし、nRの場合は対数関数の微分の知識が必要になってきます。
従って、f(x)=axnは一筋縄では行きません。

少々カッコよく言えば、f(x)=axnの微分は基本にして応用だ、ということです(あまり意味がある言葉では有りませんのでスルーしてください)。

地図としては

指数関数、対数関数の微分を理解するために必要な予備知識指数関数の微分の証明対数関数の微分の証明f(x)=xn (nR)の微分の証明  

です。
長丁場ですが、頑張っていきましょう!

必要な予備知識

まずは、必要な予備知識を説明します。
その中で最も基本的な概念がネイピア数eです。

ネイピア数

定理1.(ネイピア数の存在) {an}nNan=(1+1n)nで定められる数列とする。 nのとき、anは収束する。

定理1.の証明

数列ですので、示したいことは
(ϵ>0) (NN) s.t. (nN:nN|anA|<ϵ)
ですが、「Aってなんだよ?」という話です。
地道に証明することも、もしかしたらできるのかもしれませんが、Aの正体がわからない以上、あまりいい手法ではなさそうです。

従って、以下の事実を使います。

補題2. 有界な単調列は収束する。

これは既に証明しています。
詳しくは【解析学の基礎シリーズ】実数の連続性編 その9を御覧ください。

さて、つまりは、anが有界かつ単調であることが言えれば良いわけです。
実際、anは単調増加数列です。

補題3. an=(1+1n)nは単調増加数列である。

補題3.の証明

示したいことは、
(1+1n+1)n+1(1+1n)n
です。
相加相乗平均を使えば、なんとも簡単に証明ができます。

相加相乗平均 a1, a2, , anが正数のとき、次が成り立つ。 a1+a2++annna1a2an

相加相乗平均において、a1=a2==an=n+1nan+1=1とします。
すると、
n+1nn+1n+1n+1(n+1n)n
が成り立ちます。
故に、
(1+1n+1)n+1(1+1n)n
です。

補題3.の証明終わり

次に有界性について示します。

補題4. an=(1+1n)nは有界である。

補題4.の証明

二項定理から直ちに分かります。

補題5.(二項定理) (a+b)n=nn=0nCkankbk ただし、 nCr=n!k!(nk)! である。

二項定理により、
an=(1+1n)n=nk=0nCk1nk=nk=01k!1(11n)(12n)(1k1n)nk=01k!1+1+12+122+123+1+1112=3
故に有界です。

補題4.の証明終わり

従って、補題3.および補題4.からanが収束します。

定理1.の証明おわり

さて、(1+1n)nが収束するので、その収束先をeと書いてネイピア数と呼びます。

ネイピア数 {an}nNan=(1+1n)nで定められる数列とする。 nのとき、anは収束し、その極限をeと書く。 すなわち、 e=limn(1+1n)n と書く。 また、logeaeを省略してlogaと書く。

exおよびlogxに関わる極限

次の2つの極限が必要なので、それについて解説します。

補題6. limx0log(1+x)x=1

補題6.の証明(というか計算)

一瞬です。
limx0log(1+x)x=limx01xlog(1+x)=limx0log(1+x)1x=loge=1
ただし、(1+x)1xx>0で連続であるという事実から、limx0log(1+x)1x=logeが成り立ちます。

補題6.の証明(というか計算)終わり

補題7. limx0ex1x=1

補題7.の証明(というか計算)

これも一瞬です。
t=ex1とすると、ex=t+1ですので、x=log(t+1)です。
また、x0のとき、t0です。
故に、
limx0ex1x=limt0tlog(t+1)=limt01log(t+1)1t=1
です。
これも補題6.と同様に(1+x)1xx>0で連続であるという事実から、limx0log(1+x)1x=logeです。

補題7.の証明(というか計算)おわり

さて、いよいよ指数関数の微分について話します。

指数関数の微分

主張を明示してしまいましょう。

定理8.(指数関数の微分法) a>0とする。このとき (ax)=axloga が成り立つ。特にa=e(ネイピア数)ならば、(ex)=exである。

定理8.の証明

真面目に証明してみましょう。
(ax)=limh0ax+haxh=limh0ax(ah1)h=axlimh0ah1h
ここで、ah=elogahです(両辺の対数を取ってみれば簡単に分かります)。
故に、収束する関数の積の極限は極限の積と等しい(【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その3)ので、
axlimh0ah1h=axlimh0(elogah1logahlogahh)=axlimh0elogah1logahlimh0logahh=axlimh0elogah1logahlimh0loga=axlimh0elogah1logahloga
です。
従って、
limh0elogah1logah=1
であれば良いです。
実はこれはほぼ証明が完了しています。
というのも補題7.を証明しているからです。
ここで、t=logahとします。
h0のとき、t0です。
故に、
axlimh0elogah1logahloga=axlimt0et1tloga=axloga
です。

特にa=e(ネイピア数)であれば、loge=1により、(ex)=exです。

定理8.の証明終わり

では、次に対数関数の微分について解説します。

対数関数の微分

主張を明示してしまいましょう。

定理8.(指数関数の微分法) a>0かつa1とする。このとき (logax)=1xloga が成り立つ。特にa=e(ネイピア数)ならば、(logx)=1xである。

定理8.の証明

真数条件からx>0ということに注意します。
※高校数学では真数条件と言っていましたが、一般にlogの定義域が(0,)です。
(logax)=limh0loga(x+h)logaxh=limh01hlogax+hx=limh01hloga(1+hx)=limh0loga(1+hx)1h
ここで、t=hxとすれば、h0t0です。
また、1tx=1hです。

従って、
limh0loga(1+hx)1h=limt0loga(1+t)1tx=1xlimt0loga(1+t)1t=1xlogae=1xlogeloga=1xloga
です。
ここでも、(1+x)1xx>0で連続であるという事実から、limx0log(1+x)1x=logeです。
また、対数関数の底の変換公式(定理)も使っています。

特に、a=eであれば、loga=loge=1ですので、(logx)=1xです。

定理8.の証明終わり

では最後に、f(x)=axnの微分を説明します。

f(x)=axnの微分

本来、最も基本的な関数の微分として、f(x)=axnの微分が挙げられると思います。
しかしながら、実はしっかり考えようとすると、そうも行きません。

nQの場合は、おおよそ基本的な難易度で証明が可能です。
しかし、nRの場合は対数関数の微分の知識が必要になってきます。
従って、f(x)=axnは一筋縄では行きません。
故に、本記事ではf(x)=axnの微分を最後に持ってきました。

結論から先に述べてしまいましょう。

定理9. a, nRとする。このとき、 (axn)=anxn1 が成り立つ。

定理9.の証明

複数の段階に分けて証明します。

0. n=0のとき

n=0ならば、axn=aです。
故に、
limh0aah=0
です。
また、anxn1=a0x0=0ですので、n=0のときは成り立ちます。

nNのとき

この証明の方法はいくつかあります。
特に二項定理を使った証明(よく見る方法)がよく見られると思います。
一方で、積の微分法を用いて数学的帰納法で示す方法もあります。
二項定理を用いた証明はいくらでも見つかるので、今回は後者で示します。

①-1. n=1のとき
xn=xです。
このとき、
limh0x+hxh=limh0x+hxh=limh01=1=x11
により、n=1のときは成り立ちます。

①-2. n=kまで成り立っているとします。
すなわち、(xk)=kxk1が成り立っているとします。
このとき、積の微分法を使います。

積の微分法 (f(x)g(x))=f(x)g(x)+f(x)g(x)

詳しくは【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その2を御覧ください。

により、
(axk+1)=(xkx)=(xk)x+xk1=kxk1x+xk=(k+1)xk=(k+1)xk+11

以上から、nNのときには成り立ちます。

nZ、特にnが負の整数のとき

nZn=0であれば、0.の場合で、n>0であれば、①の場合です。
従って、ここではn<0を満たすnZの場合を考えます。

とはいえ、①の場合に商の微分法を適用させるだけです。
商の微分法は、

商の微分法 g(x)0ならば、 (f(x)g(x))=f(x)g(x)f(x)g(x)(g(x))2

でした。
詳しくは、【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その2を御覧ください。

さて、nは負の整数なので、nmNを用いて、n=mと書けます。
従って、xn=xm=1xmと書けます。
故に、商の微分法を使うことで、
(1xm)=0xmmxm1(xm)2=mxm1x2m=mxm1x2m=mxm12m=mxm1
ここで、n=mでしたので、mxm1=(n)x(n)1=nxn1となり、nZのときも成り立ちます。

nQのとき、特にnが分数のとき

nQpNqZを用いてn=qpと書けます。
まずは、(x1p)について考えます。
これは逆関数の微分を用いて証明できます。

逆関数の微分法 I, JRRの開区間、φ:IJは全単射、φ1:JIφの逆写像(逆関数)とする。このとき、φ, φ1がそれぞれIJで微分可能であれば、次が成り立つ。 (φ1)(y)=(φ(x))1(=1φ(x))(y=φ(x))

詳しくは、【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その4を御覧ください。
y=x1py=xpの逆関数です。
従って、pNですので、y=x1pと書くと、
(x1p)=1pyp1=1pxp1p=1pxp1p=1px1p1
となります。
従って、n=1pであれば、成り立ちます。
では、xqpについて考えます。
これは合成関数の微分法を使うことで証明できます。

合成関数の微分法 I, JRRの開区間、f:IR, g:JRとする。このとき、f(I)Jとする。 faIで微分可能であり、gb=f(a)で微分可能なとき、合成関数gfaで微分可能である。 さらに、 (gf)(a)=g(b)f(a) が成り立つ。

詳しくは【解析学の基礎シリーズ】1変数実数値関数の微分編 その3を御覧ください。

xqpxqx1pの合成関数です。
従って、
(xqp)=((x1p)q)=q(x1p)q11px1p1=qpxq1p+1p1=qpxqp1
ですので、n=qpのときも成り立ちます。

nRのとき、特にnが無理数のとき

最後にnRの場合について考えます。
これは少し特殊な対数微分法という証明方法を使います。
y=xnの両辺に自然対数をとり、それを微分することで証明します。
logy=logxnとして、両辺を微分すると、

(logy)=(logxn)
です。
従って、
yy=nxy=nxy=nxxn=nxn1
です。
従って、nRでも成り立つことが分かりました。

定理9.の証明終わり

※初等関数の微分を考える意味は次回述べます。

今回は、axn, ax, logaxの微分について解説しました。
高校数学で学習しましたが、しっかり証明しようと思うと骨が折れます。
とはいえ、今までと毛色がすこし違って、比較的高校数学の範囲からあまり出ない証明だったかと思います。
とはいえ、形式的には成り立つけど、本気で考えようとするとしっかり大学数学の範囲になっています。

次回は三角関数、逆三角関数の微分法について解説します。

乞うご期待!

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