本記事の内容
本記事は、積分の線型性と積分の単調性について解説する記事です。
本記事を読むにあたり、積分について知っている必要があるため、以下の記事も合わせてご覧ください。
積分の線型性
積分の線型性って?
「線型性?」となるかもしれませんが、内容自体は簡単です。
実は、積分は、Rnの有界閉区間I上で可積分な実数値関数全体の集合R(I)からRへの写像と考えることができます。
積分をこの写像と捉えたときに、この写像が線型写像だ、ということが積分の線型性なのです。
線型写像ということは定義域と終域が線型空間でなければなりません。
このとき、Rは線型空間になっています。
要するに、
というのが積分の線型性です。
主張の明示
今の話をまとめる主張が次です。
定理1.(積分の線型性)
Rnの有界閉区間I上で可積分な実数値関数全体の集合R(I)は実線型空間であり、I上の積分はR(I)からRへの線型写像である。すなわち、∀f,g∈R(I)、∀c∈Rに対して、f+g, cf∈R(I)であり、かつ- ∫I(f+g)(x) dx=∫If(x) dx+∫Ig(x) dx
- ∫I(cf)(x) dx=c∫If(x) dx
定理1.の証明
①R(I)が線型空間であることの証明
まず、線型空間とは何だったか、というと以下でした。
線型空間(ベクトル空間)
集合Vが次の2条件Ⅰ.およびⅡ.を満たすとき、Vを複素線型空間、複素ベクトル空間、C上の線型空間(ベクトル空間)という。- 任意のx,y∈Vに対して、和と呼ばれる第三のVの要素(これをx+y∈Vと書く)が定まり、次の法則が成り立つ。
- (x+y)+z=x+(y+z)(結合則)
- x+y=y+x(交換則)
- 零ベクトルと呼ばれる特別な要素(これを0で表す)がただ1つ存在して、任意のx∈Vに対して0+x=xが成り立つ。
- 任意のx∈Vに対して、x+x′=0となるx′∈Vがただ1つ存在する。これをxの逆ベクトルといい、−xで表す。
- 任意のx∈Vと任意のc∈Cに対して、xのc倍と呼ばれるもう1つのVの要素(これをcx∈Vで表す)が定まり、次の法則が成り立つ、
- 任意のc,d∈Cに対して(c+d)x=cx+dx
- c(x+y)=cx+cy
- 任意のc,d∈Cに対して、(cd)x=c(dx)
- 1x=x
(0.-1.f+g∈R(I)の証明)
f,g∈R(I)なので、任意の分割ΔとIの小区間Ikの代表点ξkを成分とするベクトルξに対して
limd(Δ)→0s(f;Δ;ξ)=J1,limd(Δ)→0s(g;Δ;ξ)=J2,
という実数J1, J2が存在します。
このとき、ある実数J3が存在して
limd(Δ)→0s(f+g;Δ;ξ)=J3
がなりたてばOKです。
limd(Δ)→0s(f+g;Δ;ξ)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)(f+g)(ξk)v(Ik)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ){f(ξk)+g(ξk)}v(Ik)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ){f(ξk)v(Ik)+g(ξk)v(Ik)}=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)f(ξk)v(Ik)+limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)g(ξk)v(Ik)=J1+J2
であるから、J3=J1+J2とすれば、f+gはI上で可積分ですので、f+g∈R(I)です。
(Ⅰ.-1.の証明)
f,g,h∈R(I)に対して、(f+g)+h=f+(g+h)を示せればOKです。
すなわち、任意のx∈Iに対して、
((f+g)+h)(x)=(f+(g+h))(x)
を示せばOKです。
((f+g)+h)(x)=(f+g)(x)+h(x)=f(x)+g(x)+h(x)=f(x)+(g+h)(x)=(f+(g+h))(x)
により、成り立ちます。
(Ⅰ.-2.の証明)
任意のx∈Iに対して、
(f+g)(x)=(g+h)(x)
を示せばOKです。
(f+g)(x)=f(x)+g(x)=g(x)+f(x)=(g+f)(x)
となるので、成り立ちます。
(Ⅰ.-3.の証明)
任意のx∈Iに対して、o(x)=0という関数o:I→Rはo∈R(I)です。
実際、
limd(Δ)→0s(o;Δ;ξ)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)o(ξk)v(Ik)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)0⋅v(Ik)=0
となるので、oはI上で可積分です。
さて、任意のf∈R(I)と任意のx∈Iに対して、
(o+f)(x)=f(x)
であればOKです。
(o+f)(x)=o(x)+f(x)=0+f(x)=f(x)
となって成り立ちます。
(Ⅰ.-4.の証明)
任意のf∈R(I)に対して、˜f(x)=−f(x)という関数˜f:I→Rは˜f∈R(I)です。
実際、
limd(Δ)→0s(˜f;Δ;ξ)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)˜f(ξk)v(Ik)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)(−f(x))⋅v(Ik)=−limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)f(x)⋅v(Ik)=−J1
となるので、˜fはI上で可積分です。
さて、任意のf∈R(I)と任意のx∈Iに対して、
(f+˜f)(x)=o(x)
であればOKです。
(f+˜f)(x)=f(x)+˜f(x)=f(x)−f(x)=0=o(x)
となって成り立ちます。
(0.-2.cf∈R(I)の証明)
任意のc∈Rと任意のf∈R(I)に対して、あるJ4∈Rが存在して
limd(Δ)→0s(cf;Δ;ξ)=J4
であればOKです。
limd(Δ)→0s(cf;Δ;ξ)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)(cf)(ξk)v(Ik)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)cf(ξk)v(Ik)=climd(Δ)→0∑k∈K(Δ)f(ξk)v(Ik)=c⋅J1
となるので、J4=c⋅J1とすることでcfはI上で可積分だから、cf∈R(I)です。
(Ⅱ.-5.の証明)
任意のc,d∈R、任意のf∈R(I)と任意のx∈Iに対して
(c+d)f(x)=cf(x)+df(x)
であればOKです。
しかし、c+dもf(x)も実数ですので、上記の式は成り立ちます。
(Ⅱ.-6.の証明)
任意のc∈R、任意のf,g∈R(I)と任意のx∈Iに対して
c(f+g)(x)=cf(x)+cg(x)
であればOKです。
c(f+g)(x)=c(f(x)+g(x))=cf(x)+cg(x)
により、成り立ちます。
(Ⅱ.-7.の証明)
任意のc,d∈R、任意のf∈R(I)と任意のx∈Iに対して
(cd)f(x)=c(df(x))
であればOKです。
しかし、cdもf(x)も実数ですので、上記の式は成り立ちます。
(Ⅱ.-8.の証明)
1f(x)=f(x)であればよいのですが、1もf(x)も実数なので、成り立ちます。
②積分の線型性の証明
これは既に示したようなもので、(0.-1.f+g∈R(I)の証明)と(0.-2.cf∈R(I)の証明)から直ちに分かります。
J1とJ2の正体は
J1=∫If(x) dx,J2=∫Ig(x) dx
なわけですので、
limd(Δ)→0s(f+g;Δ;ξ)=limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)f(ξk)v(Ik)+limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)g(ξk)v(Ik)=J1+J2=∫If(x) dx+∫Ig(x) dx
です。
さらに、
limd(Δ)→0s(cf;Δ;ξ)=climd(Δ)→0∑k∈K(Δ)f(ξk)v(Ik)=c⋅J1=c∫If(x) dx
となるので、成り立ちます。
定理1.の証明終わり
積分の単調性
積分の単調性って?
“単調性”という言葉は数列でも関数でも「単調増加」やら「単調減少」という形で出現しています。
積分についても同じです。
要するに、
ということです。
主張の明示と証明
定理2.(積分の単調性)
f,gがI上可積分で、 (∀x∈I) f(x)≥g(x) が成り立つならば、 ∫If(x) dx≥∫Ig(x) dx が成り立つ。証明はなんてことありません。
定理2.の証明
Iの任意の分割Δと分割Δにより得られる小区間Ikの代表点ξk∈Ik (k∈K(Δ))に対して、仮定からf(x)≥g(x)だから、
s(f;Δ;ξ)≥s(g;Δ;ξ)
です。
実際、f(x)≥g(x)により
∑k∈K(Δ)f(ξk)v(Ik)≥∑k∈K(Δ)g(ξk)v(Ik)
だからです。
そこで、上記の式の両辺をd(Δ)→0とすると、
limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)f(ξk)v(Ik)≥limd(Δ)→0∑k∈K(Δ)g(ξk)v(Ik)⟺∫If(x) dx≥∫Ig(x) dx
となるからです。
定理2.の証明終わり
本当に成り立つのか計算してみよう!
実は、まだ具体的な関数の積分がどうなるか、ということについては説明していないので、厳密には先取りの話になってしまいます。
しかし、高校数学で学んだ積分については既に知っているとして(後の記事でちゃんと証明します)、ここでは今回証明した定理が本当に成り立つのかを高校数学で出現した関数で確かめてみます。
線型性の確認
例3. I=[1,2]、f(x)=x3、g(x)=3x2について考えます。
愚直に計算してみましょう。
先程も述べましたが、本来はfとgがIで可積分かどうかを議論して、原始関数がどうなるか、ということを議論しなければなりませんが、それは後の記事に回すとします。
今は「高校の時はこう習ったね〜。」と思いながら読んでいただければと思います。
∫If(x) dx=∫21x3 dx=[14x4]21=14(16−1)=154,∫Ig(x) dx=∫213x2 dx=[x3]21=(8−1)=7
です。
従って、
∫If(x) dx+∫Ig(x) dx=154+7=434
です。
一方で、
∫I(f(x)+g(x)) dx=∫21(x3+3x2) dx=[14x4+x3]21=14(16−1)+(8−1)=154+7=434
となって、積分の線型性が成り立ちます。
例4. I=[0,π2]、f(x)=sinx、g(x)=cosxとしたときに積分の線型性を確認してみます。
※三角関数の積分は数Ⅲの範囲ですので、数Ⅲを高校で履修していない方は「ふーん。そーなんだー。」で結構です。後の記事で証明します。
∫If(x) dx=∫π20sinx dx=[−cosx]π20=−(cosπ2−cos0)=0−0=0,∫Ig(x) dx=∫π20cosx dx=[sinx]π20=(sinπ2−sin0)=1−0=1
従って、
∫If(x) dx+∫Ig(x) dx=0+1=1
です。
一方で、
∫I(f(x)+g(x)) dx=∫I(sinx+cosx) dx=[−cosx+sinx]π20=−(cosπ2−cos0+sinπ2−sin0)=0+1=1
となるので、積分の線型性が成り立ちます。
積分の単調性の確認
例5. I=[0,1]、f(x)=x、g(x)=x2について考えます。
Iにおいてはx≥x2です。
∫If(x) dx=∫10x dx=[12x2]01=12(1−0)=12,∫Ig(x) dx=∫10x2 dx=[13x3]01=13(1−0)=13
により、12>13だから、
∫If(x) dx≥∫Ig(x) dx
です。
例6. I=[0,π]、f(x)=x+1、g(x)=sinxについて考えます。
Iにおいてはx+1≥sinxです。
∫If(x) dx=∫π0x+1 dx=[12x2+x]π0=12(π2−0)+(π−0)=12π2+π,∫Ig(x) dx=∫π0sinx dx=[−cosx]0π=−(cosπ−cos0)=−(−1−1)=2
により、12π2+π>2だから、
∫If(x) dx≥∫Ig(x) dx
です。
読者の皆様のコメントを下さい!
今回は数学オリンピックで出題された有名な問題です。
もしかしたら既に解いたことがあるかもしれませんが、解いたことが無い方は是非挑戦して、コメントで解答を教えて下さい!
問題:1枚だけページが破れた本があります。破れていないページ番号を合計すると15000になります。破れたページは何ページ目でしょうか?
是非挑戦してみて下さい!
結
今回は積分の線型性と単調性について解説しました。
積分の線型性は、ある定義域で可積分な関数の集合が線型空間となることに起因している、ということです。
積分の単調整は、積分がリーマン和の極限だから、ということに起因しています。
次回はダルブーの定理について解説します。
乞うご期待!
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