本記事の内容
本記事は三角関数、逆三角関数の連続性と不連続性の証明を与える記事です。
本記事を読むにあたり、関数の連続とはどういうことかを知っている必要があるため、以下の記事を参照してください。
では早速証明に入っていきます。
三角関数
最初に三角関数が出現したのは恐らく数Ⅰの三角比の分野だった記憶があります。
(実際に関数として扱う(グラフを学んだりする)のは数Ⅱだった気がします。)
三角関数は定義域を[0,2π)とすることが多いのですが、本来関数としてはsinxとcosxはR、tanxはR∖{n2π∣n∈Z}(つまりπ2の整数倍以外のところ)を定義域とします。
勿論、[0,2π)を定義域とする場合も普通にあります。
では早速証明に入りましょう。
sinxがRで連続であることの証明
証明
証明したいことは、
(∀A∈R)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I:0<|x−A|<δ⇒|sinx−sinA|<ϵ)
です。(関数が連続である、とはこれが成り立つことでした。【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その5)
つまり、上記を満たすような、δ>0見つけてきてね、ということです。
示したいことを更に噛み砕けば、
0<|x−A|<δ⇒|sinx−sinA|<ϵ
となるようなδ>0を見つけたいということです。
従って、ϵ>0に依存するようなδ>0を見つけてきて、|sinx−sinA|<(何かしらの式)<ϵという形に持っていきたいわけです。
そのために、いったいどのようなモノがδ>0になりえるのかというその候補を探索するために、|sinx−sinA|<ϵから逆算してみます。
早速、|sinx−sinA|<ϵを見てみましょう。
|sinx−sinA|<ϵをどうにかこうにかして変形したいわけです。
変形する際の候補として、
- 加法定理
- 和積の公式(この公式は加法定理から導かれるので、加法定理の範疇かもしれないですね。)
が挙げられると思います。
勿論、他にもsin2x+cos2=1という性質やら倍角の公式やらと様々ありますが、sinx−sinyの形が出現しそうなのは加法定理と積和・和積の公式ですので、まずはこれらについて考えてみます。
①加法定理で変形してみる
加法定理sin(x+y)=sinxcosy+sinycosxを考えてみましょう。
今回の場合に適用させると、
sin(x+A)=sinxcosA+sinAcosx
が使えそうだな、と思えます。
しかしながら、この事実からsinx−sinAを導こうと思うとcosA=1、cosx=−1という条件が必要になりますが、そうするとxとAは特定の値になってしまいます。
従って、加法定理そのもので変形する、という手はあまり良くなさそうです。
②和積の公式で変形してみる。
sinに対する和積の公式は
sinA+sinB=2sinA+B2cosA−B2sinA−sinB=2sinA−B2cosA+B2
でした。
ちなみに、加法定理をうまく足したり引いたりすると積和の公式を導き出すことができます。
さらにその積和の公式の2つの変数を足して2で割った新たな変数と引いて2で割った新たな変数に対して積和の公式を考えると、和積の公式が導けます。
さて、今回はsinに対する和積の公式のうちsinA−sinB=2sinA−B2cosA+B2を使ってみます(|sinx−sinA|を変形したいから)。
すると、
|sinx−sinA|=2|cosx+A2sinx−A2|=2|cosx+A2|⋅|sinx−A2|
が得られます。
これを見ると、sinの変数の中ではありますが、x−Aが出てきました。
しかしながら、x−Aが出てきたのは良いとして、変数にx+Aがある|cosx+A2|が邪魔です。(これもx−Aが変数だったらなんかうまいことできそうだな、と筆者は思えるのですが。)
ここで何を導きたかったのか、ということを思い出すと、|sinx−sinA|<ϵでした。
つまり、|sinx−sinA|を=で変形したいわけではなく|sinx−sinA|より大きい何かを見つけてきて、それよりも更にϵ>0が大きいということを言いたいわけです。
従って、|cosx+A2|を=で変形しなくても良いのです。|cosx+A2|が何か別の実数よりも小さいという、そういう実数があれば、それを見つけてくればよいのです。
もしそういう実数c>0があれば、|cosx+A2|<cを満たすわけですから、
2|cosx+A2|⋅|sinx−A2|<2c|sinx−A2|
となり、邪魔な|cosx+A2|が消え、x−Aだけが変数に残る形になります。
従って、|cosx+A2|<cを満たすc>0はあるのかな?と考えてみるわけです。
実は、高校数学で既に、−1≤cosx≤1、すなわち|cosx|≤1であることを知っています。(グラフを描いてみてもわかります。)
つまり、c=1です。
従って、
|sinx−sinA|<2|sinx−A2|
を得ます。
(「いい感じだな。」と心の中でつぶやく。)
次に考えるのは2|sinx−A2|と|x−A|の関係です。
いきなり過ぎるかもしれませんが、言ってしまえば2|sinx−A2|≤|x−A|が成り立ってくれれば万々歳です。
「一気にゴールまでひとっ飛び!というわけには行かないかもしれないけど、考えてみようかな」というある種成り立ってほしいという期待のもとで考えてみます。
つまり、任意のy∈Rで|siny|≤|y|が成り立ってくれると嬉しいわけです。
cosと同様に、|siny|≤1ですから、|y|≥1のときは|siny|≤|y|が成り立っていることがわかります。
ということは|y|<1のときに|siny|≤|y|が成り立ってくれればいいわけです。
しかし、例えばy=1のときのsinの値sin1がどんな値かは調べればわかりますが、扱いにくいです。
π=3.14159⋯なので、π2=1.52⋯だから、|y|<π2のときを考えれば、|y|<1の場合もカバーしているし、しかも値も考えやすいです。
この発想から|y|<π2のときに|siny|≤|y|が成り立つことが分かれば、任意のy∈Rで|siny|≤|y|が成り立っていることがわかります。
これは図を用いて証明します。

このように、点Aの高さ(ABの長さ)よりも、弧の方が長いです。
ただし、y=0のときのみはsin0=0なので一致します。
従って、
任意の実数yに対して、|siny|≤|y|が成り立ちます。
さて、戻りましょう。
今、任意の実数yに対して、|siny|≤|y|が成り立つことが分かったので、
2|sinx−A2|≤2|x−A|<2⋅|x−A2|=|x−A|
を得ることができます。
つまり、まとめると
|sinx−sinA|≤|x−A|
を得たことになります。
もともとの目標に立ち返ってみると、
0<|x−A|<δ⇒|sinx−sinA|<ϵ
となるようなδ>0を見つけたいということでした。
先程、|sinx−sinA|≤|x−A|が成り立つということは確認しました。
従って、δ=ϵとする、すなわちδとしてϵを採用すれば、目標が達成されたことになります。
これで、δが見つかりました。
証明終わり
cosxがRで連続であることの証明
sinxの場合と殆ど同じなので、sinxのときほどは丁寧に書きませんが、「おや?」と思ったらばsinのときの証明に立ち戻ってみてください。
証明
証明したいことは、
(∀A∈R)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I:0<|x−A|<δ⇒|cosx−cosA|<ϵ)
です。(関数が連続である、とはこれが成り立つことでした。【解析学の基礎シリーズ】関数の極限編 その5)
つまり、上記を満たすような、δ>0見つけてきてね、ということです。
示したいことを更に噛み砕けば、
0<|x−A|<δ⇒|cosx−cosA|<ϵ
となるようなδ>0を見つけたいということです。
sinのときは和積の公式を使うことでうまく行きました。
cosはsinをx軸方向に平行移動しただけなので、今回も和積の公式が有用だろう、という期待のもとで和積の公式を使って|cosx−cosA|を変形してみます。
cosに対する和積の公式は
cosA+cosB=2cosA+B2cosA−B2cosA−cosB=2sinA−B2sinA+B2
でした。
これを用いることで、
|cosx−cosA|=2|sinx+A2sinx−A2|=2|sinx+A2|⋅|sinx−A2|
今回も邪魔な|sinx+A2|が出てきました。
しかし、任意のy∈Rに対して|siny|≤1ですから、|sinx+A2|≤1です。
従って、
2|sinx+A2|⋅|sinx−A2|≤2|sinx−A2|
です。
さらに、任意の実数yに対して、|siny|≤|y|が成り立つので、
2|sinx−A2|≤|x−A|
が成り立ちます。
従って、当初の目標だったδ>0を見つけることはsinと同様にδ=ϵとすることで達成されます。
証明終わり
tanxがR∖{n2π∣n∈Z}で連続であることの証明
この命題3.の証明はsinとcosがRで連続であることと、さらに「連続な関数の商も分母が0でないような定義域で連続である。」という事実からすぐに分かります。
なぜならば、tanx=sinxcosxだからです。
証明
正直に証明するなら、
(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t.((∀x∈R∖{n2π|n∈Z}):0<|x−A|<δ⇒|tanx−tanA|<ϵ)
ですが、sinとcosのときと同じようには行かなそうです。
というのも、sinとcosには和積の公式がありますが、tanにはありません。
その代わり、tanx=sinxcosxという事実があります。
既にsinとcosはRで連続であることが分かっています。
「この事実が使えないかな?」と思うわけです。
そして思い出すのが、これです。
この定理1.において、I=Rで、f:I=R→Rがf(x)=sinxであり、g:I=R→Rがg(x)=cosxです。
では、I′は何でしょうか。
今、g(x)=cosxですから、cosx=0であるようなxをRから取り除いた集合がI′です。
cosx=0であるようなxは既に高校で学んでるとおり、π2の整数倍です。
つまり、この定理1.からf:I=R→Rがf(x)=sinx、g:I=R→Rがg(x)=cosxとしたとき、f(x)g(x)=sinxcosxがR∖{n2π|n∈Z}で連続であることが導けます。
従って、これはそのままtanxがR∖{n2π|n∈Z}連続であるという命題3.を証明したことになります。
ちなみに、tanx=sinxcosxから、tanxはx=n2π(n∈Z)で値が存在しないので連続でない事もわかります。
証明終わり
次に逆三角関数がある定義域で連続であることを証明してみます。
逆三角関数
逆三角関数は高校では出現しません。
大学に入って初めて接する人が多いのではないでしょうか。
若干余談ですが、逆三角関数は
- sin−1xやらarcsinxやらArcsinx、
- cos−1xやらarccosxやらArccosx、
- tan−1xやらarctanxやらArctanx、
やらと書きます。しかし、sin−1x、cos−1x、tan−1x、はsin2x=(sinx)2、cos2x=(cosx)2、tan2x=(tanx)2という記法に近く、sin−1xを、1sinx、cos−1x=を1cosx、tan−1xを1tanxと誤認しそうなのであまり好きではありません(個人の感想)。
少なくとも私が書く記事は一貫して逆三角関数をarcsinx、arccosx、arctanxと書くことにします。
逆三角関数の簡単な復習
逆三角関数は三角関数と比べて注意しなければならないことがありました。
それは定義域と値域がRでない場合がある、つまり全ての実数に対して値が存在するわけではない、ということです。
少々復習しましょう。
- arcsin:[−1,1]→[−π2,π2]、
- arccos:[−1,1]→[0,π]、
- arctan:R→(−π2,π2)
でした。
逆三角関数の連続性を示す方針
逆三角関数が連続な関数であることの証明は今まで通り、
(∀A∈R)(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I:0<|x−A|<δ⇒|f(x)−f(A)|<ϵ)
を正直に証明しても全く問題ないのですが、骨が折れます。
実際、arcsinx、arccosx、arctanxの性質はsinx、cosx、tanxのそれとはほぼ別物だからです。
実は、arcsinx、arccosx、arctanxの連続性を一手に解決してしまう強い定理があります。
それが「連続な関数の逆関数があれば、その逆関数もまた連続である。」という定理です。
定理2.の証明
証明
示したいことは
(∀b∈f(I))(∀ϵ>0)(∃δ>0) s.t. (∀x∈I:0<|x−b|<δ⇒|f−1(x)−f−1(b)|<ϵ)
です。
定理2.の主張を見ると「難しそうだな」と思うかもしれませんが(筆者は最初思いました)、示したいことを明示してみると、結局はシンプルでいつもの連続性の証明です。
(逆関数だろうがなんだろうが、結局連続であることを示したいのでそりゃそうか、と心のなかでつぶやく)
δを見つけるために|f−1(x)−f−1(b)|<ϵを変形してみましょう。
今までは|f−1(x)−f−1(b)|を変形してみました。
それはf−1が具体的な関数だったからです。
しかし、今回のf−1は具体的ではなくIで連続で全単射な関数fの逆関数であれば何でもいいわけですから、これ以上変形するのは難しそうです。
結局はδを見つけるために|x−b|の形にしたいので、今回は|f−1(x)−f−1(b)|<ϵを変形してみます。
|f−1(x)−f−1(b)|<ϵ⇔−ϵ<f−1(x)−f−1(b)<ϵ⇔f−1(b)−ϵ<f−1(x)<f−1(b)+ϵ
もし、仮にfが単調増加関数であれば、
f(f−1(b)−ϵ)<f(f−1(x))<f(f−1(b)+ϵ)
が成り立ちますし、
仮にfが単調減少関数であれば、
f(f−1(b)+ϵ)<f(f−1(x))<f(f−1(b)−ϵ)
が成り立ちます。
fは全単射ですので、f−1も全単射です。
このf−1は単調増加関数かもしくは単調減少関数です。
仮に単調増加関数でも単調減少関数でもなければf−1(s)=f−1(t)となるようなs,t∈f(I)が存在してしまい、全単射であることに反してしまいます。
さて、fが単調増加だった場合は、
f(f−1(b)−ϵ)<f(f−1(x))<f(f−1(b)+ϵ)
が成り立つのでした。
つまり
f(f−1(b)−ϵ)<x<f(f−1(b)+ϵ)
が成り立つということです。
一方でfが単調減少であれば、
f(f−1(b)+ϵ)<x<f(f−1(b)−ϵ)
が成り立ちます。
従って、δ>0の候補として
- f(f−1(b)−ϵ)、
- f(f−1(b)+ϵ)
の2つが挙げられます。
しかしながら、f(f−1(b)−ϵ)もf(f−1(b)+ϵ)も必ず正の値をとるとは限らないので、このままではδにこれらを採用できません。
まずはfが単調増加の場合に絞って考えてみましょう。
fは単調増加関数なのだから、
f(f−1(b)−ϵ)<f(f−1(b))<f(f−1(b)+ϵ)
が成り立ちます。
f−1(b)−ϵ<f−1(b)+ϵであるためです。
ということは、
- f(f−1(b))−f(f−1(b)−ϵ)>0\)
- f(f−1(b)+ϵ)−f(f−1(b))>0
です。
このうち、小さい方を新たにFとしてみましょう。
すると、f(f−1(b)−ϵ)−F<f(f−1(b)−ϵ)ですし、f(f−1(b)+ϵ)<f(f−1(b)+ϵ)+Fです。
従って、
f(f−1(b)−ϵ)−F<x<f(f−1(b)+ϵ)+F
が成り立ってくれます。
以上から、この場合δはmin{f(f−1(b))−f(f−1(b)−ϵ),f(f−1(b)+ϵ)−f(f−1(b))}とすれば解決だとわかります。
同様に、fが単調減少の場合に絞って考えてみましょう。
f(f−1(b)+ϵ)<f(f−1(b))<f(f−1(b)−ϵ)
ということは
- f(f−1(b))−f(f−1(b)+ϵ)>0
- f(f−1(b)−ϵ)−f(f−1(b))>0
です。
先程と同じように考えれば、δはmin{f(f−1(b))−f(f−1(b)+ϵ),f(f−1(b)−ϵ)−f(f−1(b))}とすれば解決だとわかります。
従って、このように\deltaを決めてあげることによって、
(\forall b\in f(I))(\forall \epsilon>0)(\exists \delta>0)\ {\rm s.t.}\ (\forall x\in I:0<|x-b|<\delta\Rightarrow |f^{-1}(x)-f^{-1}(b)|<\epsilon)
が得られます。
証明終わり
逆三角関数の連続性
\arcsin xも\arctan xも\arctan xも定理2.から直ちにわかります。
定理2.を再掲すると、
でした。
- \arcsinについて
f^{-1}=\arcsin:[-1,1]\to\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]はf=\sin:\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]\to[-1,1]の逆関数なので、定理2.においてI=\left[-\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2}\right]です。
また、f(I)=[-1,1]です(全単射だから)。
つまり、定理2.において、f^{-1}はf(I)=[-1,1]で連続です。
すなわち、\arcsinは[-1,1]で連続です。 - \arccosについて
f^{-1}=\arctan:\mathbb{R}\to[0,\pi]はf=\cos:[0,\pi]\to[-1,1]の逆関数なので、定理2.においてI=[0,\pi]です。
また、f(I)=[-1,1]です(全単射だから)。
つまり、定理2.において、f^{-1}はf(I)=[-1,1]で連続です。
すなわち、\arccosは[-1,1] で連続です。 - \arctan:\mathbb{R}\to\left( -\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2} \right)
f^{-1}=\arctan:[-1,1]\to\left( -\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2} \right)はf=\tan:\left( -\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2} \right)\to\mathbb{R}の逆関数なので、定理2.においてI=\left( -\dfrac{\pi}{2},\dfrac{\pi}{2} \right)です。
また、f(I)=\mathbb{R}です(全単射だから)。
つまり、定理2.において、f^{-1}はf(I)=\mathbb{R}で連続です。
すなわち、\arctanは\mathbb{R}で連続です。
結
今回は三角関数と逆三角関数の連続性について説明しました。
今までとは毛色を変えて、どうやって\deltaを見つけるのか、ということに主眼を置きました。
今後、自分で証明できるようになることへの足しになれば嬉しいです。
次回は関数の連続性から得られる有名な定理、中間値の定理のイメージについて解説します。
乞うご期待!質問、コメントなどお待ちしております!
この記事の内容をより詳しく知りたい方は以下のリンクの本を参照してください!
ちなみに「解析概論」は日本の歴史的名著らしいので、辞書的にもぜひ1冊持っておくと良いと思います!
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